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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第二話
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「メフィスト、急に呼び出して悪かったな。」
「いや…お前が力を行使して僕を呼び寄せるなんて、滅多にあることじゃないからな。で、どうしたんだい?」
 ここは月明かりに照らされた真夜中の浜辺だ。波間から潮風が吹き、近くの茂みをカサカサと揺らしている。
 その中で、鈴野夜はメフィストに今日あった出来事を話すと、メフィストは眉を顰めて返した。
「恐らく…レラージュが絡んでんだろうな。」
 その名に鈴野夜は顔を顰めて言った。
「レラージュ…確かソロモン七十ニ柱の第十四位だったな。」
「そう。地獄の大侯爵の一柱だ。サルガタナスの支配下にあるが、僕はサルガタナスに貸しがあるからね。ま、取敢えず奴のとこに行ってくるは。」
 メフィストがそう軽く言ったため、鈴野夜は些か驚いて返した。
「おい、大丈夫なのか?」
「平気だ。でも、明日の夜迄は戻れない。それまでに司を確保しとけよ。逃げられたままだと面倒だからな。後…分かってんだよな?」
 メフィストは真っ直ぐに鈴野夜を見て言った。そこにはいつものおちゃらけた彼は無かった。
 それに鈴野夜は、少し寂しそうに目を細めて返した。
「分かってるよ…。」
「それなら良いんだ。いかな僕でも、何でも出来る訳じゃないからね。」
 そう言うや、メフィストは霞みの如く消え去ったのだった。
 鈴野夜はメフィストを見送った後、不意に茂みへと声を掛けた。
「居るんだろ?出てこいよ。」
 そうすると、茂みから一人の男性から姿を見せた。大崎だ。
「雄…気付いてたのか。」
「当たり前だ。メフィストも気付いてた筈だよ。私だったらいざ知らず、君はこんな夜更けに出歩くな。」
「すまん。でも…」
「分かってる。それは私がどうにかするから、君は皆を心配させないように元気付けるんだ。僅かな希望でも、人は強くなれるから。」
「そうだな…。で、司の居場所は掴めそうなのか?」
 大崎がそう問うと、鈴野夜は腕を組んで溜め息を洩らした。
「気配が完全に跡絶えてるんだよ。」
 その答えに、大崎も察しがついた。
 生きている人間なら、悪魔にさえ悟られずに完全に気配を消すなどという芸当は出来ない。それこそ数時間前にあった人物の気配が完全に跡絶えてるということは、その人物に何かあったということなのだ。
「雄が探せないってことは…もう…。」
「その可能性を否定はしない。しかし、単に利用されているだけということも考えられるからね。だから、君はもう戻るんだ。私は数日眠らなくても平気だけど、君は違う。」
「でも…」
「杉ちゃん。言うこときかないとダメだぞ?」
 何か言い掛けた大崎に、鈴野夜は笑ってそう言った。
 大崎はもう自分の手に余ることだと自覚し、鈴野夜に後を託して立ち去ったのだった。
「さて…行くかな。」
 鈴野
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