暁 〜小説投稿サイト〜
同士との邂逅
二十三 生きろ
[3/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
横島は、ただただ頷くことしか出来なかった。

常に冷静沈着を絶やさず表情に出さないナルトが、横島の承諾にあからさまにほっとしている。そしてぽんっと月代に変化したかと思うと、瞬く間にその場から姿を消した。



気配の余韻すら残さず掻き消えたナルト。
まるで最初から誰もいなかったと錯覚させられ、ぼんやりナルトがいた場所を眺めていた横島は、破璃の鳴き声ではっと我に返る。
そしてハヤテの怪我を治すために、音忍達と戦闘した故に残り少なくなった僅かな霊能力を掻き集めて文珠を生成しようとし始めた。













「う……」
僅かに身動ぎしたハヤテが呻き声を上げる。横島は文珠生成に集中しながら、彼の顔を覗き込んだ。

「ハヤテさん!!しっかりするッス!」
「よ、こしま…くん……お願いが、あるんです…ね…ごほっ」
息も絶え絶えの様子で言葉を紡ぎ始めるハヤテ。耳を澄まして彼の言葉を聞いていた横島は、ハヤテの次の言葉に息を呑んだ。

「ごほごほ…っ、…もう…いい、です…自分の身体のこと、は…自分がよく、知ってるん…ですね…」
「な、なに言ってるんスか!?解毒はもう済んだんスよ!!助かるに決まってるじゃないですか!!」
擦れた声で生きるのを諦めたと言うハヤテに横島は檄を飛ばす。だが、ハヤテは虚ろな瞳で緩く頭を振った。
「自分が…情けないです…あんな不意打ちにやられ、るなんて…忍び失格、です…よこし、まくん…頼みます…ごほ…私を、楽にして…ほしいんですね…」

ハヤテの言葉を聞いた瞬間、文珠生成のために集中していた霊気が拳の中で消散する。
彼の言葉を反芻し、横島は頭に血が上った。



なにを馬鹿なことを言ってるのか。楽になりたいからと言ってそれを俺に頼むのか。
不意打ちにやられたからって、忍び失格だからって、それがなんだ。

自分のほうが情けなかった。馬鹿な事を繰り返して、何度も死にそうな目にあった。
でも楽になりたいと思った事は一度もない。死ぬ事は怖い。死んで楽になるとも思わない。
なによりあの夕陽に誓ったんだ。

誰も信用できない。誰も信頼できない。自分は世界に望まれていない。それでも。
世界を憎む事も他の誰かを恨む事も、楽になろうともしなかった。だって、彼女が救ってくれたから。

彼女が救った世界。彼女が生かしてくれた命。どうして蔑ろに出来ようか。
だからこそ、[人類の裏切り者]とされても神界・魔界から命を狙われても生き続けたのだ。


それ故、楽になりたいと自ら生きるのを諦めるその言葉が横島には癪に触った。ハヤテの一言に沸々と怒りが湧き上がる。
一点の光が見出せればその光にしがみつく。少しでも可能性があれば足掻いて足掻いて最後まで諦めない。



[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ