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竜のもうひとつの瞳
第二話
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十郎が可愛くって可愛くって。弟ってのは可愛いもんだよね。
いや、生まれ変わる前にも妹はいたんだけど生意気で可愛くなくってさ、あんまり関係良くなかったのよね。
そのせいなのか小十郎を妙に甘やかしてしまうわけなのよ。懐いてくれて可愛いからさぁ。
まぁ、どんなに私が甘やかしても父親が違う姉の喜多が鬼のように厳しいから、
私が甘やかすことでプラマイゼロになってるような気はするから釣り合いは取れてるのかもしれないけどね。

 ちなみに武士になるって言ってるのも姉の刷り込みであるところが大きい。
小十郎は頭も良くて飲み込みが良いから武士になれると踏んだのか、
毎日毎日六歳の子供にするもんじゃねぇだろうと思うくらい厳しく躾けて学問やら剣術を叩き込んでいる。
流石に小さい子供に姉のスパルタ教育に耐えられなくて、姉のいないところで泣いているのは知っていた。
せめて私の前くらいは我慢しないで良いようにと、子供らしくあれるようにと、
本当に悪いことをした時以外は褒めたり甘やかしてあげる方に力を入れたもんだ。
だって、そうでもさせなきゃ歪んじゃうよ。変な方向に。
ただでさえ、三つの時に両親が相次いで死んでるってのにさ、
ろくに愛された事もないからって、結婚して家庭内暴力やら虐待に走っちゃったら洒落になんないし。

 「小十郎は、あねうえをまもれるくらいにりっぱな武士になります!」

 「ぬおぉおおお!! 可愛いぞ、こん畜生!!!」

 しっかりと抱きしめてくしゃくしゃと頭を撫でてやると、小十郎はきゃっきゃとはしゃいで喜んでいる。
ああもう可愛いなぁなんて思いながらどっぷり甘やかしたのが、今思えばいけなかったのかもしれません。

 「小十郎は、あねうえみたいな人になりたいです」

 そう、そんなことを常々言われていたのだけれども、これをもっと吟味して考えるべきだった。



 ……それから更に十数年後。



 「おめぇら! ナマやってんじゃねぇぞ!!」

 戦場を駆け回る弟は、ヤクザそのものになっておりました。
いや、確かに伊達に仕官も叶って竜の右目なんて呼ばれるほどに立派に成長しましたよ。
成長したけども。

 「私の可愛い小十郎は、何処行ったぁああぁぁああぁぁあぁああああ!!!!!!!」

 小十郎以上にデカイ声で叫んだ私を敵味方関係なく一斉に見る。
見られたっていい、「あねうえー」なんて言ってひよこみたいに駆け寄ってきた可愛い弟が、
こんなむさくるしい強面のヤクザになるだなんて知ってたら、もうちょっと真面目に軌道修正かけてたよ。
いや、この際強面なのはいいよ。
人の容姿はとやかく言わない主義だけど、せめて堅気の商売にくらいはついてもらいたいと思うじゃないのよ。

 「Ha! 俺の小十
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