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英雄は誰がために立つ
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 「――――英霊とは、あの英霊の事でいいのか?」
 「はい、その通りにございます。シャルバ様」

 シャルバと呼ばれた人物は、魔王風のマントを羽織り軽鎧(ライト・アーマー)を身に着けていた。

 「しかし、ならば何故動かぬ?」
 「特殊な術式を掛けているからでございます。そもそもこの狂戦士(バーサーカー)は、使用時まで現状維持しておかなければ身勝手に突っ走りますからね」
 「そうであるのなら重ねて解せぬ。何故その様な扱いにくく、手を焼くような英霊(モノ)を塵芥にも値せぬ鳩や鴉、それに現魔王(偽物)共が開く三竦みの会談(茶番)に投入するのだ?」

 確かにシャルバの言うとおりである。
 真の腕利きの傭兵や殺し屋からすれば、扱いに四苦八苦する核弾頭なんぞよりも、威力こそ低いモノの使い勝手のいいコンバットナイフやスナイパーライフルを迷わず選択する事だろう。

 「それはこの英霊が様々な意味で適正だからでございます。会談の破壊の有無(此度の作戦の成否)に拘わらず、禍の団と伏羲(我々)がいかに本気で強大な力をも所持しているかも彼方にも否でも理解する事に成りましょう。まぁ、有体に申し上げるのであれば、良くも悪くも派手なデモンストレーションと言った処でしょうか」
 「なるほどな。だが、そうであるならばカテレアは如何なる?」
 「レヴィアタン様には申し訳ありませんが、礎になっていただきましょう。そうなれば、シャルバ様率いるこの派閥の中で慎重論を頑なに貫こうとしているクルゼレイ様も躍起になりましょうし、全ては世界の本来のあり方――――シャルバ様が様々な勢力たちをも滅ぼした上で永劫唯一の統制者に成る近道にもなりましょうしね」
 「フフフ、相変わらず腹黒い男よな貴様は」

 レヴェルの言動を非難するも、上機嫌なシャルバ・ベルぜブブ。

 「であれば、後は任す。くれぐれも抜かりなくな。貴様の事だから、それこそあり得ぬであろうが」
 「御意」

 上機嫌にこの部屋から退出するまで、恭しく礼をするレヴェル。

 ッ。

 着信が鳴る前に素早く体勢を戻しつつ通信にでるレヴェル。

 「はい――――はい、そうです。ええ、予定通りシャルバ様方を調子づかせて計画を加速させる次第にございます。――――ハハハハ、あの方々は自身を特別だと思わせて口車に乗せてしまえば、後は簡単ですからね。この英霊召喚も聖遺物さえ用意してしまえば、後は呼び出し放題の技術も確立しましたし、その影響もあって神話・伝説に登場した英雄の魂と遺志を継いだなどと言う英雄の劣化品(まがい物)も上手く発生しました。――――ええ。英雄派共々、我らの思惑通りにさぞ踊ってくれるでしょう」

 一拍置いて、淡々と言葉を吐く。

 「所詮、彼らは前座でしかないのです
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