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Fate/magic girl−錬鉄の弓兵と魔法少女−
無印編
幕間その一 士郎のアルバイト   ★
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 歩きながら周囲に視線を奔らせる。

 その光景は経験がないわけじゃない。

 だがあまり得意とはいえない世界。

 光り輝くシャンデリアがあり、ドレスを纏った女性が、タキシードを着こなした男性が思いのまま時を過ごす。

 もっともその浮かべた笑顔が上辺だけではない者がどれだけいるのか。
 そんな関係ない事を考える自分に僅かに苦笑しながら、自分とパートナーの分の飲み物を持ち、自然と傍に立つ。
 苦笑したままではまた何か言われそうなので苦笑をやめ、右手に持つ飲み物を差し出す。

「ありがと」

 それを慣れた動きで受け取る少女。
 だがその表情と動きはいつもより若干硬い。

「どうかしたか? 少し表情が硬いが」

 彼女にとっては慣れるほどではないかもしれないが何度か経験があるはずだ。
 まあ、この年で完全にこの雰囲気に馴染んでいたらそれもどうかと思うが。

「仕方ないでしょ。
 パートナーを連れては慣れてないっていうか初めてなんだから」

 少し表情を赤らめながら小声でつぶやく少女。
 なるほど、言われてみれば確かにそうだな。
 この年齢ではパートナーを連れて来る経験はほとんどないだろう。
 それに彼女の事を見る視線は多い。
 だがこれは

「主催者の娘なのだから注目は浴びるのは諦めろとしかいえないな」

 このパーティの主催者の娘なのだがら仕方がない。

「確かに娘というのはあるかもしれないけど……それ以上にその娘がパートナーを連れている事の方が注目浴びてる原因だと思うんだけど」

 よく聞き取れなかったが、どこか不満そうなつぶやきが彼女の口から洩れた。
 彼女の立ち振舞いに問題はない。
 どちらかというと

「なにも気にする事はない。そのドレスもよく似合っている。
 君はいつも通りでいればそれで十分だ。
 もっとも私の方が役者不足かもしれないが」

 赤のパーティドレスはこの年の少女では派手過ぎるとか、大人びすぎているといわれるのだろうが、彼女にはよく似合っている。
 問題があるとすれば彼女よりも私の方だろう。
 得体の知れない人物が主催者の娘のパートナーとして横に立っているのだ。
 そう考えると彼女が注目を浴びている原因の一端に私の存在があるのかもしれない。
 しかし彼女は

「ふん、似合ってるのは当然よ。
 あと私がパートナーにしてもいいって思ったんだから役者不足なんて言わない。
 ほら、ちゃんとエスコートしてよ」

 顔を少し赤くする少女。
 そんな彼女に

「ああ、任せてくれ。アリサ」

 一歩より添い腕を差し出す。

「そうそう、それでいいのよ」

 その腕に満足そうに頷いて、腕を絡めてくるアリサ。

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