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山を越えて
6部分:第六章

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第六章

 そのまま進んでいく。しかしだった。
 まだ谷は続いていた。その極端な狭い峡谷がだ。
 その中をまさに紙一重で進んでいく。速い筈なのに時間の流れは長く感じた。これは三人に共通することだった。
「まだか?」
「もう少しだ」
 ガンナーに答えるマックローンだった。
「もう少しだからな」
「そうか、じゃあもう少し頑張ってくれよ」
「わかっている」
 こうしてそのまま通っていく。そしてやっとであった。
 まず機首が出た。続いて主翼がだ。谷を出たのである。
 それでまずはほっと胸を撫で下ろす三人だった。しかしである。
 突如尾翼が落ちた。それで肝を冷やした。
「!?」
「どうした!?」
「気流だ」
 こう答えるマックローンだった。
「今のは本当に驚いた」
「あ、ああ」
「かなりな」
 ここでまた冷や汗を流す二人だった。マックローンもだ。
「危ないところだったな」
「本当にな」
「死ぬところだった」
 こう言い合うのだった。しかしその尾翼も出たのだった。
 こうして虎口は脱した。それでようやく安堵の息を漏らした。
「助かったな」
「ああ・・・・・・」
「生き残った・・・・・・」
 まだ操縦はしているがほう、と言葉を出したのである。
「もうこんな思いはな」
「沢山だよな」
「同感だよ」
「全く」
 最後の言葉は三人同時に出したものだった。
「誰があれだけ搭載したんだよ」
「ただでさえアルプスは越えるのが難しいってのにな」
「それでも。助かったな」
 こうそれぞれ話し合うのだった。アルプスを越えたそこでだ。
「さて、それじゃあな」
「ドイツだな」
「とりあえずはな」
「おい、オーウェル」
 マックローンはここでオーウェルに問うた。
「御前の基地は何処なんだ?」
「何処だって?」
「ああ、何処なんだ?」
 それを彼に問うたのである。今更ではあるがだ。
「ドイツの何処なんだ?ベルリンか?」
「ベルリンは赤軍が占領してるさ」
 ソ連軍がである。ベルリンは彼等が陥落させたのである。
「だからそこじゃない」
「じゃあ何処だ?」
「ミュンヘンだ」
 そこだというのだ。
「ミュンヘンの基地に配属になった」
「そうか」
「ああ、そうだ」
 また話すオーウェルだった。
「そこなんだよ」
「そうか。じゃあすぐだな」
 マックローンはその顔が次第に元に戻ってきていた。その今にも死にそうな蒼白な顔からだ。次第に元に戻ってきているのであった。
 そうしてだ。その顔でだ。彼は言うのだった。
「ミュンヘンのビールとソーセージ頼むぜ」
「わかってるさ」
 ガンナーが笑顔で彼に応える。

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