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山を越えて
7部分:第七章
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第七章

「それじゃあな、好きなだけ食えよ」
「ああ、飲むのと食うのには自信があるんだ」
 こうも話すのだった。
「それじゃあな」
「さて、ミュンヘンに着いたらだ」
 ここでオーウェルの顔が険しくなった。
「文句の十や二十も言わないとな」
「ああ、全くだ」
「本当にな」
 二人も厳しい顔で言葉を返した。
「四トンも積みやがってな」
「これだけ積みやがって」
「何考えてるんだ」
「基地に帰っても文句を言ってやる」
 マックローンとガンナーも口々に言う。
「こうなったらな」
「言わないでおれるかよ」
「こんなことは守らないといけないんだよ」
 オーウェルも二人に続いた。
「安全の為にもな」
「ああ、ミュンヘンに着いたらだ」
「大暴れしてやろうぜ」
「話はこれからだ」
 こんな話をしながら春のドイツに向かうのだった。戦いが終わった春のドイツにだ。そうしてミュンヘンに着くとであった。三人は憮然とした顔で木のテーブルに着いていた。場所はミュンヘンの空港の酒場である。そこでビールにソーセージを好きなだけ飲み頬張っている。しかしであった。
 三人共憮然とした顔になっている。そのうえで言うのである。
「なあ」
「ああ」
「何だ?」
 ガンナーとオーウェルがマックローンの言葉に応えた。
「これが俺達の積んできたやつだよな」
「ああ、そうだ」
「それがな」
 このビールとソーセージがだというのである。
「それがなんだよ」
「実はな」
「ドイツのはねえのかよ」
 マックローンは飲み慣れ食べ慣れたそのビールとソーセージを口の中に入れながらまた二人に問うた。あまり面白くはなさそうな顔である。
「本場のドイツのはよ」
「戦争に負けて食うどころじゃないらしい」
「もうどうやって生きるかって問題らしいぞ」
「ビールやソーセージどころじゃないってか」
 それを聞いてあらためて頷いた彼だった。
「そういうことなんだな」
「ああ、つまりそういうことさ」
「だからこうしてわざわざ運んできたってわけだ」
「何なんだよ、そりゃ」
 マックローンは二人の話をここまで聞いたうえでうんざりしたような顔で述べた。
「全然面白くも何ともねえじゃねえかよ、俺はドイツのを楽しみでここに来たんだぜ」
「まあ気持ちはわかるがな」
「そう言うな」
 不平不満だらけの彼をガンナーとオーウェルが宥める。
「俺達の奢りだからな」
「何ならいつものスパムでいいか?」
「いや、それはいい」
 スパムはアメリカ軍の代名詞の一つともなっていた。とにかくやたら出て来るのである。それで皆いい加減食べ飽きていたのである。
「まあいいか。たらゆく飲めて食えるんだからな」
「ああ。じゃあ俺達はイタリアに戻って」
「俺はここに残
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