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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『欠陥電気』
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に感じた潮の香りに、頚を傾げながら。
 大通りに出ようとした、その瞬間────飾利の携帯が鳴り響いた。


「はい、もしもし……」


 飾利がそれに出たのを確認しながら、意識を他に向ける。人の通話を盗み聞きするような趣味などないのだから。
 だから、黒子の方を向いて。その栗毛色の髪を二房に分ける、布を見詰めて。


「あ、またそのリボンしてくれてるんだ」
「っ────な、なんですの、突然!」


 少し前にプレゼントした、その赤いリボン。それをまたしてくれているのを見て、嬉しくなった。


(いや)、愛用してくれてるなら嬉しいなぁ、と。プレゼントした甲斐あったよ」
「別に気に入ってなんておりませんの! ただ、他に無かっただけですのよ!」
「分かってる分かってる、偶然偶然」
「っ……この男は〜〜!」


 茶化す嚆矢に対して黒子は、失敗したと言わんばかりに頬を真っ赤に染めながら腕を組み、三十センチを越える身長差の関係で上目遣いに睨み付けてくる。
 澄まし顔を取り繕おうと必死らしく。怖さなど全く無く、ただ可愛らしいだけだが。


 最近は、こうして良く反応を返してくれる。『幻想御手(レベルアッパー)事件』での“ティンダロスの猟犬(ハウンド・オブ=ティンダロス)”を相手にして以来、少しは尊敬されているのか。彼女は、顔を背けたままで。


「ところで……この前の『友達の件』は解決しましたの?」
「……ああ。やりたいようにやって、上手くいったよ。黒子ちゃんのお陰さ」


 問い掛けられたのは、七月末の一件で彼女に溢した愚痴の事。そう、インデックスの件。七月三十日、ステイルと火織は英国に、当麻とインデックスは学生寮に帰った。魔術師達は真偽を確かめるために、学生と図書館は日常に戻るために。それぞれの道を歩みだしたのだ。
 ある意味では、彼女の助言のお陰だろう。恥ずかしい話、あの言葉がなければ……逃げていた可能性も有り得る。


「別に……貴方の()()()が選択した事ですの。わたくしには関係ありませんわ」
「それでも、さ。やっぱりこう言うと()()から」


 一切、こちらを向かない彼女に向けて。その真正面に歩き出て、真っ直ぐに。鮮やかな亜麻色の髪、風に靡かせて。深い蜂蜜色の瞳、揺らがずに。


「……ありがとう」
「〜〜〜〜!」


 一言、単純にも短絡にも程がある台詞を口にして。耳まで赤く染めた彼女は、


「わ────わたくし、急用を思い出しましたのでお先に失礼いたしますの!」
「あ、黒子ちゃ…………行っちまった」


 ヒュン、と風斬音を残して。止める間もなく、彼方に空間移動(テレポート)して消えていく。

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