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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
10話 出立の兆し
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「へー、道理で音信不通だったわけダ」
「まさか十日で攻略するとは思わなかったからな」


 朝もまだ早い午前七時、納得したように掌をポンと打つアルゴと、菓子をつまむヒヨリに茶を差し出しながら、溜息混じりに相槌を打ってソファに腰を下ろす。

 第三層主街区《ズムフト》に構える拠点にアルゴが訪れたのは、ほんの数分前。ひいては、俺達が拠点にするべく物件――――ベッドルーム二部屋・風呂付き・ショップ近辺・低階層(ヒヨリが泣くので重要)――――を借りた直後である。まるで見計らったかのような登場ではあったが、第一層以来の顔合わせにヒヨリが喜び、そのまま招待した次第である。当初はヒヨリと歓談に花を咲かせていたが、やがて俺に話を振るようになってきた。
 おそらくは隠しダンジョンに興味を持っているのだろうが、こればかりは気軽に教えられない。隠しダンジョンは一見すると金になりそうな情報ではあるが、しかし、大抵は有用なアイテムは粗方回収してしまうし、最奥のネームドモンスターだって仕留めてしまう。その事後談で得られる情報などたかが知れているだろう。情報としての価値は既に無くなってしまっているわけだ。それでも自発的に教えてしまえば、それだけで隠しダンジョンの情報を少なからず保有していることが知られてしまうか、あるいはそういった疑惑を抱かれてしまうだろう。《セティスの祠》はどうしようもなかったとして、これ以上の情報流出は避けたいところである。むしろ、《セティスの祠》以外に情報を持っていないと思われるくらいが好ましい。故にヒヨリにも秘匿するように言い聞かせ、ダンジョンの情報は漏らさないように努めているのである。アルゴにはレベリングとだけ伝え、幾つかの隠しクエストをスケープゴートに追及を躱すという常套手段で事なきを得る。

 ……だが、話すまいと意識したために、むしろ記憶が想起されてしまうのはやむを得ないことであろう。
 単刀直入に言えば、第二層の隠しダンジョン《果海の離宮(オーケアノース)》はイレギュラーが目立った。その原因となったのは、最奥に待ち構えるネームドモンスター【Io The Princess Taurus (イオ・ザ・プリンセストーラス)】だ。まずあれは色々な意味で凄いインパクトだった。何しろ布だけを纏った女性――――外見年齢はかなり俺達に近いように思えた――――という、ある意味で潔い出で立ちである。牛のものと思しき耳や尻尾が生えていたり、身の丈以上の巨大な戦鎚を装備している点を除けばプレイヤーと大差ないのである。
 それに実はベータ時代には最奥の扉が開かずに終わってしまったが、今回はどういうわけだかヒヨリがあっさりと扉を開けてしまうというミラクルを起こし、俺すらも初めて()(まみ)えた相手であった。
 さらに特筆すべきは、イオ姫は
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