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乱世の確率事象改変
道化師が笑う終端
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純粋な重たい攻撃に、瞬間の判断で切っ先をそっと寝かせて彼女の武器を受け流し続ける。
 馬上での一騎打ちは俺にとって不利。もともとが馬の扱いも苦手な為に、月光が動きやすいように合わせてくれるからこそ戦える。
 ただの兵を蹂躙するのとは全く違う戦い。目の前の少女の笑みが獰猛さに染まって行く。

「黒麒麟ってのはこんなもんか? 全力で来いよ。あたいはいつだって全力全開だぜ?」

 言いつつ振られる大剣での横なぎを屈んで避けて、長剣での切り上げを行うも身体を少し逸らしただけで避けられる。
 刃を重ねれば弾かれて隙が出来、月光を動かして避けても追いの二の太刀が迅速に向かい来る。

――馬上での対武将用の個人鍛錬もしとけばよかったな……。

 例えば霞や元譲と。長く戦に身を置いて来た彼女達と少しでも鍛錬しておけば違った部分もあったのではないだろうか。
 今言っても遅い。もう既に戦っている時分に考えても無駄なだけだ。割りきり、攻撃をいなし続けてどうにかこうにか戦って行くしかない。
 隙が出来るのを待つか、はたまた自分から崩しに行くか……頭だけがやけに静かに回っていた。
 そんな中で、自分の乗っている黒馬が徐々に荒い動きに変わって行く。
 月光の憤りが伝わってくるようだ。きっと黒麒麟なら、もう少しまともに戦えたのだろう。不甲斐無いとでも言うように鼻を一つ鳴らされる。

――せっかくお前に手伝って貰ってるのに……ごめんな。

 そう考えた途端に、俺の意思に反して月光が勝手に動き出した。

「うおっ」
「うぇ!?」

 次の一撃が来るか否かという途中の不可測は、文醜も予想の範囲外であったのか素っ頓狂な声を上げた。
 肉薄した俺と文醜。そして……月光が相手の馬に思いっ切り激突した。身体の大きさから、質量の差で不利な敵の馬は頭に突撃を受けてよろめく。
 次いで、自分の気分を表すように月光は俺を振り落しつつ脚を振り上げ……一寸戸惑った文醜に向けて蹄を振り下ろした。

「なんだぁ!?」

 敵の馬はふらふらと脚元が覚束ずに動けない。咄嗟の判断からなのか文醜は馬から飛び降り距離を取った。易々と踏み砕かれる敵馬の頭蓋から血と脳漿が飛び出し、嘶きさえ上げる間も無く死に絶えた。
 俺も受け身をとって倒れる事は無かった。二丈程の距離が出来、俺と文醜は互いに地に脚を付ける事となった。
 月光を見ると……苛立ちを含んだ鼻息を鳴らしてそっぽを向き、悠々と明と楽進の方へと向かっていく。

――ああそうかい。徐晃隊もいないし、文醜に手間取ってるようじゃ背中に乗せてやらないってか。

 苦笑が漏れる。
 俺を戦いやすくする為にしてくれた行動だったならツンデレなんだが、素で俺に対して怒っているらしい。
 まあいい。これで俺が本調子で戦
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