暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Bittersweet Day
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マズかったんじゃいやしかし彼女はさっき美味しいと言ってたようないやひょっとしたら惜しいと聞き間違えたのかも、と顔面の色をころころ変えるアスナに介さず、紅の巫女はゆっくりと伏せ気味にしていた頭を上げた。

「……アスナ」

「は、はい」

「バレンタインとは、己の大切な者にチョコレートを渡す日ですよね?」

「は、はい」

正しくは、それは製菓会社の陰謀でホントのところは別にチョコ限定の話じゃないよ、と言おうとしたのだが、今のカグラにはどことなくそんなツッコミを跳ね返してきそうな迫力があった。それも力いっぱい。

ならば、と。

カグラはアスナの手からケーキナイフを取り、自分でふんわり生地に入刀する。

静謐な間隙の後、取り出されたピースは小皿に収まり、そして――――

アスナに差し出された。

「ぇ……?」

「私にとって大切な者は、レンだけではありません。マイも、キリトも、ユイも、そして……アスナ。あなたもそのうちの一人です」

凛とした表情でこちらに一片を差し出す巫女の表情は真剣そのものだ。

だから言えない。突っ込めない。

バレンタインっつーのは女から男なのが通例なんだよ、ということを。

言えない。

とりあえずどこから突っ込んだものだろう、とアスナが頭を悩ませていると、事態はさらに悪い方向へ転がっている。

ばったん

「ただいま、アスナ。そこでレンとマイに会ってさ、寄ってくっつって聞かなかったんだ」

「パパ、いつもレンさんの家にママと行っている身としてその発言は適切じゃないと思うのですが」

「そーそー、たまにはこっちから行ってもバチは当たらないでしょーが」

「何でもいいからおなか空いたんだよーアスナ〜。なんか欲しいかもってんん?チョコの匂いがする!このまろやかでそこはかとないほろ苦さはガトーショコラだガトーショコラ!ガトーショコラ食〜べ〜た〜い〜ッ!!」

「お、ホントだ。ケーキ作ってたのか、俺も一つ食べ…た……い…………な」

扉からわいわい入ってきた集団のうちの一人、恋人である影妖精(スプリガン)の剣士キリトの言葉尻がフェードアウトしていった理由を、アスナは如実に感じ取っていた。

今現在の状況を整理してみよう。

まず日付だ。

2月14日。イグシティでもそこかしこからチョコレート色が漏れ出し、それに沿ったイベントも結構確認されている。入ってきた全員が、いやALOにいるプレイヤー全員が今日がバレンタインデーということは知っていると思う。

では次に本題。

状況である。

大窓から余計に入ってくる陽射しのせいで何となく明かりは灯していない。キッチンだけは別だが、それでも全体的には薄暗いに分類されるだろう。

そんな
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