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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十九話 運の悪い男
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れない」
「最初から全軍で来られていたら確実に負けていた。本隊の戦力にキルヒアイス、ルッツ、ワーレン、あの三人が加わったら悪夢だよ。だがローエングラム侯が戦力を分散してくれたおかげで勝つ事が出来た。勝った戦いは不意を突いたか多数を以って小数を撃ったかだ。キフォイザー星域の会戦は典型的な各個撃破だね」

「提督の見積もりでは二パーセントですからな、勝てる可能性は。油断もするでしょう」
チラッとヴァレンシュタインが俺を見た。
「確かに圧倒的にこちらが不利ですがだからと言って油断して良いという事にはならないと思いますよ」
「……」

「シミュレーションと実戦は違うんです、シミュレーションは何度でも対戦出来ます、やり直しが出来ますが実戦は一度しか機会は有りません。やり直しは出来ない。例え二パーセントの可能性でも先に勝ち札を引き寄せれば勝つ、油断は許されないんです。戦場では運の良さが大事と言われる事が有りますが根拠のない事じゃない。運の良い指揮官というのはそういう勝ち札を引き寄せる何かを持っているのでしょう」

“なるほどな”とオフレッサーが太い声で頷いた。確かに運の良い指揮官というのは居る。俺の目の前の男がそうだ。絶対負けると思ったこの内乱でも互角以上に戦っている。
「提督がそうですな」
「私? 私は違うな、運は良くない。性格は良いんだけど」

しれっとした口調にもう少しでコーヒーを吹き出しそうになった。多分冗談だろう。オフレッサー、口を拭え、髭がコーヒーで濡れているぞ。最近この男と良く話をするのだが食事をすると髭に料理の臭いが付くらしい。この間は魚料理だったが食後に髭を良く拭わなかったせいで魚の臭いがすると頻りに言っていた。

「ナイトハルトがオーディンに向かったらしい」
「有り難い話だ、彼と戦わずに済む。貴族達も一々相手を確認する必要が無くなってホッとしただろう。もっともこの時期にオーディンに行くのは運が良いとは言えないな」
また皆が笑い出した。フェルナー少将が“あいつ、運が悪いよな”というとヴァレンシュタインが“昔からね”と付け加えた。また笑った。

午後の一時、ヴァレンシュタインの部屋で過ごすのどかなお茶の時間を破ったのはクレメンツ提督だった。部屋に入ってくると“大変だ”と言った。表情が硬い。
「ローエングラム侯が前線に出ている。たちまち二個艦隊を撃破した。カルナップ男爵とヘルダー子爵の艦隊だがカルナップ男爵は戦死した」

シンとした。皆が顔を見合わせている。いくら貴族連合とはいえ僅かな期間で二個艦隊を撃破とは……。
「復讐の始まりか、やれやれだ。あれを斃さなければいけないのかと思うとウンザリするな……」
ヴァレンシュタインが溜息を吐いた。

「如何する、出撃するのか?」
オフレッサーの問い掛けにヴァレ
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