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横浜事変-the mixing black&white-
社長「これからの横浜は安泰だ。良かったな、何でも屋」
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返ると、案の定そこには先ほどの少女がいた。すぐ後ろには大男もいる。宇春は今度こそ溜息を吐き、嫌そうに呟いた。

 「私、これからデリヘルの仕事があるんだけどぉ」

 「そんなもの、相手が飢えてるだけなんだから気にするな。何でも屋の仕事というのは、広げた風呂敷を片付けるまでのことを言うのだろう?」

 「そうなのよねぇ……。出しっぱなしのままだと、信頼が減っちゃうのよ」

 がっくりと肩を落とした宇春は、ここでデリヘルの断りを入れる事にした。元々彼らに絡まなければ良かった話だし、責任は自分自身にある。何でも屋を営み始めて初の断りを入れるのがこんな状況だなんて、と彼女は表面には出さず笑った。

 「なあ、お前は南門の由来を知ってるか?」

 デリヘルを依頼してきた知り合いに連絡を入れた直後、少女はポツリと呟いた。それが自分に向けて放たれたものだと気付いた宇春は、少し考えて答えを出した。

 「分からないわ。横浜に来てからけっこう経つけど、そういうのは気にしないし」

 「南門……別名『朱雀門』。厄災を祓い、大いなる福を招くとされるという意味から名付けられたのだそうだ」

 「厄災、福……ああ、言いたいことが分かったわぁ」

 合点がいったとばかりに納得の表情を浮かべると、彼女は身体を少女の方に向け、腰に手を当てたポーズを取った。ニヤニヤしながら呆れた調子で言葉を吐き出す。

 「朱雀さんに代わって、ヘヴンヴォイスが横浜の厄を祓って福をもたらしてくれているのねぇ。中国文化の舞台なのに、ロシアの人に救われるっていうのもおかしな話だわ」

 「偶然の産物だがな。私もさっきまで気付けなかった」

 「偶然なんかじゃ、街を楽しませることはできないわよぉ?」

 「そうかな。現に街という箱の中で生活する彼らは、こんな時間にも関わらず活気に溢れているぞ。まあ、全部お前がやってくれたわけだが」

 「ふうん……」

 宇春は口を歓心に歪めながら、それでいて糸のように目を細めた。そして青い制服の少女に対し、個人的に最も重要な点を問う。

 「で、横浜の『厄』っていうのは殺し屋かしら?それとも街に潜む全ての悪?」

 「両方だよ。この国は便利であるが故に危険すぎる。デジタル社会は、時に人が人を食らう強大な兵器になり得る。この街の場合、その筆頭が殺し屋統括情報局なのだよ。きっと『頭』もそれに気付いて、自身が作り上げた組織を解体しようと考えたのかもしれない。とはいえ、今この瞬間を動き続ける奴の本当の目的が何なのかは私にも分からないが」

 「……」

 「まだ分かっていない様子だな。後々(のちのち)知れば良いさ」

 そこで一度言葉を区切り、少女は再び(せわ)しく口を動かし始めた。

 「今回
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