異なる物語との休日〜クロスクエスト〜
休日のC
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「うわぁぁぁっ!」
「すっごぉぉぉい!」
「広〜い!」
「きれー!」
「うっひゃあ! すっごいねぇぇ!」
上から順に、リナ、ヒメカ、サナ、オウカ、シーナ。
真っ白い湯気が立ち上る露天風呂を見て、裸体にタオルを巻いただけのあられもない格好になった少女たちは歓声を上げる。
雪が所々に積もって、日光を浴びて宝石の如く煌めいている中を、きゃいきゃいとはしゃぎながら彼女たちが歩いて行くのを見て、コハクの頬は自然と緩んだ。それに気が付いてから、やけに年寄臭い思考をしてしまったことに気付き、頭を抱えたくなってしまう。
はしゃぎ回る少女たちとは対照的に、クールに、あるいは優美に歩いていく少女たちもいる。
「素晴らしい眺めですね」
「本当、よくこんなの作る気になったわね、って感じよね」
「わざわざ人の手で作業させてるっていうのが……」
「何を考えてるのやら余計に分かりにくくしてるわね」
「……」
「あの壁の向こうにリュウが……ああ、どうしてこう無慈悲に男女の湯を分ける壁とは存在するのかなぁ……」
そんな彼女たちですら、感嘆を漏らさずにはいられないらしい。それほどまでに、《白亜宮》の存在が用意したこの露天風呂は精巧に作られていたのだ。グリーヴィネスシャドウの言葉が正しいのであれば、これを整備したのは彼女の弟……グリーヴィネスダークという名の青年だ。人間ではないため、疲労の規格が異なっているのかもしれないが、それでも凄まじい労力を要する作業であったであろうことは想像に難くない。
だから誰もが、この光景に驚嘆の反応を返したのだ。若干一名変なのがいる気がするが。
「こら、マリーちゃん、壁の方にちょっとずつ進路変更するのやめなさい」
ミザールがその若干一名のイレギュラー……マリーを引き留める。最初に会った時は毒舌の光る過激な少女なのかと思っていたが、話していくうちにだんだん小動物のような本性を見せていき、今ではなんとなくツンデレさんなんだろうな、という推測がコハクの中で成り立っている。恋人だという、リュウという少年を散々気にかけ、今も壁に張り付いてなんと登ろうとまでしているではないか。
「だって……だってリュウが……壁の向こうにリュウがぁぁ……!」
謎の悲壮感を漂わせながら引きずられていくマリーに、どこか自分と似たものを感じて、コハクは苦笑した。
――――本当にリュウさんの事が大好きなんだなぁ。
――――私も、セモンのこと大好きだけど。
「コハクさん! 背中の洗いっこしましょう!」
しみじみと感じていたコハクに向かって、既に洗い場に到達したオウカが声を上げる。
「構わないわ」
断る理由は特にないので、甘んじて受け入れること
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