暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview10 イリス――共食いの名
「そんなにも我らが憎かったか」
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から触手を発射していた。

 レイアたちが慄いて身を引いている。しくじった。ルドガー以外はイリスの精霊態を見るのが初めてなのだ。
 クルスニクのルドガーはともかく、一般人の感性でアレを気持ち悪いと思わない人間はいない。

『その姿……まさか巷に言う「精霊殺し」とはそなたのことか』
「そうよ。コレがイリスが理想とする『精霊』の姿。素晴らしく醜いでしょう?」

 ペルソナの顔に笑みが刻まれた。

 ルドガーは1年前を思い出す。あの精霊軍団はどれもが整った容姿をしていた。イリスはあえてその逆の姿を選んだのかと、今さらながらに納得した。

『それほどの力、いかにして得た』
「お前が尊師に渡した元素水晶を覚えていて? この世のありとあらゆる元素と、命一つ分なら造り出せるほどの莫大なマナを込めた、水晶の卵。尊師はお使いならなかった。だからイリスが使ったわ。結果はこの体。お前ならイリスが『何』かは分かるでしょう?」
『あれを……まさかそなたが孵すとは。しかも新しい精霊を造り出すとは……そんなにも我らが憎かったか、イリス』
「憎まれてないと思ってたのなら、相当おめでたい頭ね」
『……ミラが知ればさぞ悲しもう。我が子同然に可愛がっていたそなたが、精霊とトモグイしたなど』
「気安くミラさまの名を呼ぶな! 裏切ったのはお前でしょう! 捨てたのはお前でしょう! ミラさまがどんな想いで死の床に就いていたか分かるか!?」
「ミラ!?」『さま!?』

 エリーゼとティポが驚きの声を上げる間にも、イリスとマクスウェルの舌戦はヒートアップする。

『儂はあの娘を方舟に連れて来ようとした。儂の手を払ったのは他ならぬミラ自身だ!』
「ミラさまがお前の選民思想を許すわけないでしょう! 恋人のくせにミラさまの気質も分からなかったの? 賢者が聞いて呆れるわ!」
『黙れ!! 強欲な徒花よ。お前も覚えているはずだ。儂とミラを襲った者どもを。彼奴らの欲望にぎらついた(まなこ)を! 利己の刃と銃弾を! ミラはあのような者どもの手を取ったのだ!』

 また思い出すのは、ヴェリウスとシャドウに見せられた、あの少女の夢。


 ――始祖ミラとマクスウェルを狙って現れた一派を、アイリスの子は一人圧倒的な強さでもって全員を殺した。全身に血しぶきを浴びながら。
 ――始祖はそれらを見てなお、マクスウェルの誘いを断り、エレンピオスに残ると宣言した。血しぶきに塗れた養い子を抱き寄せ、手を伸ばすマクスウェルにただ首を寂しげに振って。


「だからあんたは尊師が自分を裏切ったと思ったんだな」
『そうだ。私は悟ったのだ。人は自らの益を前に、己を保つことなどできぬと――』
「あんたはどうだったんだ?」

 ルドガーの問いかけに、マクスウェルは眉をひそめる。
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