暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview10 イリス――共食いの名
「どうか、お気をつけて」
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……新米に初っ端からリスキーな仕事回してくれるじゃないか」
『ルドガー様は分史対策エージェントの中で唯一100%骸殻をお持ちです。ルドガー様が進入されるのが一番リスクが低いと、分史対策室は判断しました。送信した座標は不安定ですので、どこに出るかは分かりません。――どうか、お気をつけて』
「ありがとう。辛いこと言わせて悪かった」
『これが仕事ですので。失礼します』

 通話が終わる。ルドガーはそのままGHSの画面を操作し、送信された座標を表示した。

(深度212。ノーマルエージェントが請け負う分史の深度は100前後だっけ。この分史は、本当ならユリウスとかリドウとかのトップエージェントが行くべきなんだろうな。フル骸殻じゃなきゃ俺には回されなかったかもしれない。ほんっと、新人に対しても容赦ねーな、クランスピア)

「それじゃあ行くぞ。みんな、準備はいいか?」

 誰も否は唱えない――かと思いきや。

「あ、待って」

 レイアがストップをかけた。

「イリス。いる?」

 レイアが見上げた中空に、紫紺の立体球形陣が結ばれた。中に顕現するのは当然、レイアと直接契約したイリスだ。イリスは銀髪を揺らめかせて着地した。

「いてよ。分史世界へ入るのね。ルドガー、誘導は必要?」
「自分でやるよ。このくらいは一人でできるようになりたい」
「そう。えらい子ね」

 エルがよく「コドモ扱いしないで」と言う気持ちが痛いほど分かったルドガーだった。

 GHSのディスプレイに映る「YES/NO」の内、「YES」にボタンを合わせて打った。
 とたん、蟻地獄に吸い込まれていくように、周囲の景色が歪み、一点に集約して、ブラックアウトした。






 視界が晴れて立っていた場所は、ルドガーからすればおとぎ話の中にいるかのような光景だった。
 連なって螺旋を描きながら上へ向かう無数の岩。上下四方の暗闇に煌く星々。

「ここって……世精ノ途(ウルスカーラ)?」
「うるすかーらって?」

 事情を知らないエルは無邪気に尋ねる。

「人間界、ていうか、リーゼ・マクシアと精霊界を繋ぐ道のこと。断界殻(シェル)の解放で消滅したはずなんだけど」
「これがあるってことは、断界殻は健在ってことでしょうか?」
「やっぱりこのまま進むとマクスウェルのじーさんに会っちまうのかね」

 ざわり。横にいたイリスから殺気が立ち昇った。

「マクスウェル――」
「イリス?」
「この先にあの老人がいるのね。――いけないわね。気が昂ぶってしまう」

 爪が食い込むのではないかと心配になるほど、イリスは強く拳を握っている。
 ルドガーはとっさに、イリスの拳に手を添えた。

「ルドガー?」
「あんま気負うなよ
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