暁 〜小説投稿サイト〜
イリス 〜罪火に朽ちる花と虹〜
Interview1 End meets Start T
「母さんだったんだ」
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ――その時、彼には何もできなかった。

 自分にひたすら哀しげに笑いかけ、自分を強く抱き締めた母。
 銀の長い髪をふり乱して××××に襲いかかった母。
 ××××の必死の抵抗によって致命傷を負った母。
 呆然とする××××に覆い被さるように、血を胸から噴き上げて倒れた母。

 ――彼には何もできなかった。

 だからこそ彼は強くなりたいと強く望んだ。

 どんな形であれ、二度と目の前で「家族」が血を流すことがないように。
 二度と自分のせいで「家族」が傷つけ合うことがないように。

 …

 ……

 …………

 ルドガーは鈍痛と共に目を覚ました。

「う、ん…」
「気がついて?」

 声のほうを見やる。たったさっき庇ったあの女が、心配そうにルドガーを見下ろしている。

「ぁ……ぅわああ!?」

 意識が明瞭になるや、ルドガーは飛び起きて後ずさった。イリスはきょと、と首を傾げた。

「あ、あん、あんた…っ」
「イリスよ」
「い、イリス……じゃなくて、そのカッコ! 服っ!」

 イリスは一糸まとわぬ姿だった。産まれたままの姿だった。どう言い繕っても、ハダカ、だ。

「ああ、これ。イリスが着るとどんな布も腐り落ちてしまうから、服を着られなくて。だから髪を伸ばして隠しているのだけど、これでも駄目かしら」
「だ、ダメに決まってんだろ!!」
「こんなおぞましい皮膚に欲情する殿方なんていないでしょうに……しょうのない子」

 高い音が鳴り渡り、紫の光が炸裂した。ルドガーはとっさに目を庇う。

「これでいいかしら」

 声に反射で腕を外してイリスをまた見て、また別の意味で度肝を抜かれた。

 イリスはどこから出したのか、近未来SFでバトルヒロインが着るようなアーマードボディスーツを纏っていた。素地は紫紺で、所々にあじさい色の蛍光ラインが入っている。同じパーツで出来たヘッドギアの留め具が頬をも覆う。腿や腰や肩には、昆虫の翅にも似たパーツが乱立している。両手両足は獣の四肢を模したそれに変化していた。

「あ、ああ。いいんじゃない、か?」

 ボディラインを強調するラバースーツのほうが裸より問題大ありだとしても、ルドガーの中では丸裸の異性を連れ歩くよりずっと常識的である。

「じゃあ問題がなくなった所で街へ下りましょう。中はさっきの地割れで崩れていたから」
「あ。そういえば、どこだ? ココ」
「さっきまでいた空洞を抜けた先()()()()()()()()()()()()わ。尤もこの場所で忠犬よろしく待てというわけにもいかないから、せめて人のいる場所に行ったほうがいいんじゃなくて?」

 銀糸
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ