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ソードアート・オンライン リング・オブ・ハート
24:変わらない関係
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してそれが引き金になったかのように、次々と言葉が飛び出す。

「――この世界でたった一つ、ボクが信じられる大切なものを守るため!! その為だったらっ、ボクは……! ボク、は……ッ」

 だがその言葉はすぐに、やがて鎮火するように勢いを失い、震える肩と腕も力なく垂れさせてユミルは(うつむ)いた。

「……ユミル。その唯一信じられるっていう、大切なものってなんなのか、聞いてもいいか……?」

 俯き、前髪で顔を隠したまま、首が左右に振られる。

「……そうか。なぁユミル――」

「――昨夜の事はっ………………感謝、してる……」

 俺が再び彼に訊きたかった事を、彼に先読みされた。それでも顔は上げないが、後半の小さい声もハッキリと聞き取れた。

「……NPCじゃない他人の作った料理なんて、この世界で、初めて食べた……。目が覚めたら、マーブルの膝の上で寝てて……見上げてみたら、マーブルは眠りながら、幸せそうな寝顔で、ボクの髪、ずっとずっと撫でてくれてた……」

「……………」

 途切れ途切れに、やや掠れた声で言う。
 ……俺は、今のユミルの表情が見て取れないのがもどかしかった。

「アスナの言ったとおり、少しだけキミ達に心を開いてみたら――……あんな温かな気持ち、ボク、もうずっとずっと長い間、忘れてた……」

 ユミルは胸に手を当てて、ぎゅっと握り締める。

「ユミル……」

 それを見た俺は居ても立ってもいられなくなり、彼に手を伸ばそうとした。

「だけどっ!」

 ユミルは俺の手に素早く反応して顔を上げた。先程までの激しい憎悪とはまた別の……俺を拒否し、何かを訴えるような表情が俺の目を射抜く。それに俺は伸ばしかけた手を力なく降ろした。

「……だけど、もうあんなことはしないで。もしまたされたら……ボクはきっと後悔する。いずれ必ず、ボクはキミ達を憎むことになる」

「なぜ、そんなことが言い切れるんだ……自分の、その気持ちが分かってて、なんでそんな――」


「――ボクがキミ達を信用しきれないからっ!! キミ達がボクを裏切らないって保証がどこにも無いからに決まってるだろっ!!」


「…………!」

 ユミルは吠えた。
 その声が林の中を木霊し、驚いた数匹の鳥が空へと飛び立っていった。

「……『裏切らない』って……ユミル、お前……」

「あっ……」

 それを聞いて呆然とする俺を、ユミルはしまったとばかりに目を逸らし、横髪で自分の顔を隠した。

「お前……もしかして、過去に誰かに…………裏切られたのか?」

「ッ……!」

 垂れた横髪から覗く、喉頭隆起が見当たらない滑らかな喉がこくりと動く。

「そう、思うなら……勝手にそう思うがいいさ」
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