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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
12話 鬼の目にも涙
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FJ計画という曲がりなりにも大役を既に受けた身ではその末端すら担えない。


「では、千堂専務との会談はその中身だった――という事ですか。」
「然り。」

「では―――何故私をあの場に伴わせたのですか?」
「……己の個人的情緒、つまりは気まぐれだな。」

 中庭の砂利を踏みしめながら青を纏う青年が振り返った。
 そして唯依(じぶん)の前にへと歩み寄る―――

「何れ、君は君の父の、そしてこの俺の後を継ぎ次世代を担うだろう―――その時のためだ。俺の人生はそう長い物ではないだろうからな。」
「そんな!」

「俺が青を纏っているのは、摂家の武と信を示し兵を率いる為だ。そう易々と使い捨てられる気は毛頭ないが、英雄譚が生まれる土壌――つまりは絶望的な戦場にこそ今の俺の存在意義はある。」

 自らの役目を理解している彼は粛々と告げる。絶望的な戦場にて摂家の者が命を兵と共に懸けて戦っている――そういう美談づくりに己が使われると、故にその一生は闘争であり、闘争の中で倒れるは自明の理。

 その一生はかなりの高確率で老いが始まるよりも尚早くに末期を迎えるだろう。

「大尉はそれで良いのですか……!?」
「構わん、戦える戦場と納得できる理由があれば其れでいい―――好きなことを遣り通して果てる人生だ。例えの野に朽ちる定めだろうと、それはそれで幸福なものだろうよ。」

 ―――寂しい生き方だ。まるで花火のように直往邁進し、弾けて消える生き方。
 まるで『生き方だけに執着して、生そのものには執着がない』ようだ。

 しかし―――ならば何故、彼は戻ってきた。
 あの時、初めて出逢った時、彼の命の炎は消えようとしていた……なのに何故、生そのものに執着が無いのに戻ってこれたのだ?

 唯依(じぶん)は、その疑念を問う事が出来なかった。その時だった――――




「ま、だけど長生きはしてみる物だな―――おかげできれいな物を見れた。」

 残った左手を唯依へと伸ばし、そしてその頬を撫でた。
 自分の今の格好を思い出したのか頬が熱くなる唯依、だがその恥ずかしがる様子はいじらしく穏やかな感慨が胸裏にあふれる。

 ああ、篁唯依という女は、儚く弱い。
 自らにない強さを求めては、断崖に向かって全速力で疾走している。そんな危うさを感じる―――放ってはおけない。

 教えてやりたい、彼女は彼女のままで良いのだと。


「きょ、恐縮です―――それでこちらの着物は一体…?」
「それは母がどうしてもとね、あの人は娘も欲しかったと常々口にしていてね、実際は男三人という始末だが。
 そして、それなられば俺たちの嫁に自分の物を受け取って欲しいとな……君が着ている着物やら装飾品は母が持っていたものさ。」
「御生母様が…
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