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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
12話 鬼の目にも涙
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れはわかっているな。」
「はい。」

 その為に電磁投射砲を初めとした革新的兵器の実用化に苦心しているのだから、と言わんばかりに唯依が頷いた。



「だが、日本に残された猶予は然程に多くはない。長らく続く戦火により徐々に衰えていく国力、BETAとの消耗戦により失われていく人材。
 大を活かすために小を切り捨て続け、その結果切り捨てた小が積み重なり大となってしまう――このままでは戦況を好転させる余力すら消え失せる……目先の痛みを恐れ膿を放置した結果全てが壊死するのと同じ末路を辿るだろうよ。」

 大陸の絶望的な戦況を見てきたゆえか、撤退すら出来ない四国戦線を生き抜いてきた故か。
 無難な選択肢を取り続けるその結果を彼は知っている。
 何処かで反抗に打って出る必要がある、

 それは理解している―――だが、負けを重ねれば重ねるほど未来は遠のく。
 抗う意思が、反抗の意思がすり減ってしまう。
 どうせ勝てないのだと諦め、ただただその日その日を生き延びる為だけに戦うようになってしまう。
 そうだ、人材・資源・国力そのすべてに加え“人の意思”そのものが摩耗してしまうのだ。


「だからこその一大反抗のための決戦兵器開発と、既存兵器種の一斉強化計画のための基幹技術開発計画―――それが薄明計画だ。」
「薄明計画……!?」

「表向きはXFJ計画に於いて停滞するであろう次世代戦術機開発計画の一環である、ATD-X計画とF-4J改瑞鶴の後継機種開発の統合措置だ。
 日本の残存企業・研究機関の総力を集結させた一大プロジェクトだ。規模だけで云うなら余力のあった不知火の開発計画よりも規模は上だ。」

「それほどの……一体どうやって!?」
「さてな、細かい手続きは真壁や藤原女史がやったから詳しくはわからん。生憎と俺はインテリじゃない、(まつりごと)は苦手なのさ。」


 肩を竦める蒼き軍装に身を包んだ青年、だが彼の言葉はどちらかというと単に好まず興味がないと言っているように感じられた。
 そして同時に、正しく国の存亡を左右するその計画に携われない。それは辛苦の出来事であった。

「大方BETAの脅威を目前にして経営連中の尻に火が付いた処に付け込んだ、そんなところだろうよ―――間を置けば奴らの心に慢心と怠惰、楽観主義が生まれその機会も失われるからな。」

 現場から遠ざかれば楽観主義が蔓延する―――そんな言葉をどこかで聞いたことがある。
 つまりは、戦術機開発を行う各企業の経営陣に財務官僚共の慢心が打ち砕かれた今を置いて反抗のための手段を取れる時期が無いのだ。

 上の危機感が薄れない内に止められない規模で計画を強引にでも始めてしまうより他に手段が無い。
 それを行うには唯依(じぶん)は若すぎて、尚且つX
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