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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章 群像のフーガ  2022/11
5話 鼠の戦い
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とするならば《セティスの祠》に関する情報を持っていること自体矛盾しているのである。
 もしキバオウがそれを知ってる立場――――つまりベータテスターであったとするなら、他のテスターに新規プレイヤーの持つ敵愾心(ヘイト)を擦り付けて自分だけが安全圏に潜り込もうとする、掛け値無しの卑怯者だ。仮にそうだとするならば、恐らく俺同伴という条件も、情報さえ得られればダンジョン内でモンスターのヘイトを押し付けて圧殺するなんてこともされかねないと勘繰ってしまう。最悪、アルゴやヒヨリにも何が起こるか分かったものじゃない。


「………隠しクエ、ひとつだけ無料で教えてやるから、その話から足洗えよな?」
「お言葉に甘えたかったけど、これで口説けなかったらこの話は白紙にするってのが先方の方針だからナ。もうちょっと早く言ってくれればオネーサン嬉しかったのにナー」
「切り出すタイミングが悪かったな」
「次からは気を付けるヨ。それと、コレはヒヨリちゃんに渡してあげテ。もう店頭では配り出したけど、こっちは特別に直筆サイン付きだからナ」


 どうやらアルゴの深入りも杞憂で済んだらしい。ひとまずキバオウの件を頭から切り離して、差し出された書物型のアイテムに視線を向ける。
 表紙には【アルゴの攻略本・第一層ボス編】と銘打たれ、裏表紙には【情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている場合があります】との赤い注意書きが記されていた。このシリーズは今までも本人から五百コルで購入してヒヨリ共々活用していたが、今回のそれは少々毛色が違っていた。


「………ちょっと、これはいくらなんでもマズいんじゃないか?」


 真っ先に思ったことは、危惧だった。

 今朝、気まぐれに街に出てみたが、キバオウのヘイトスピーチのおかげでベータテスターへの憎悪は強くなっているのが見て取れた。それこそ、新規プレイヤーの前でβテスターであることを明かせば、圏外に踏み出た際にはモンスターとの戦闘以外に、プレイヤーからの粛清さえも気を付けなければならないくらいに事態は緊張している。当然、アルゴが擁する架空の情報提供者も、情報の公開には自粛するのが一般的な対応と思われる。俺も《コート・オブ・アヴェンジャー》の情報を公開しないでいるのは、現状での悪目立ちを避けるためだ。そこを押しての情報公開である。こうなっては、出版を行っているアルゴ自身がベータテスターなのではないかという疑いを掛けられるだろう。当然、吊し上げや圏外での粛清のリスクは高まったはずだ。これから行われるであろう偵察戦の手間を省いたとはいえ、到底報われるとは思えない。


「ちょっと頑張りすぎたかナ?」


 だが、鼠は動じる素振りもなくおどけてみせる。
 これがどういった結末を齎すのか、その最悪のシ
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