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マフラー
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                 マフラー  
 秋穂は学校の帰り道の小路を歩いていた。春の小春日和には桜が咲き誇る小路である。今は花は咲いておらず冬の冷たい空気の中葉の無い木々が寒そうに立ち並んでいる。まだ二時にもなっていないのに風は冷たい。
 風が吹く。小路の側にある公園から運ばれて来た木枯らしが足下で舞い飛ぶ。関東よりましとはいえ関西の冬も寒い。
 秋穂はこの小路が好きだった。大学に入学して以来この路を歩いて学校へ行き来している。
 長野秋穂は大学に入ってまだ一年も経っていない。この間同窓会に出たばかりである。会に出た時中学で同じクラスだった男の子に大人びたと言われた。
 実際に見て秋穂は大人びているわけではない。小柄である。背は150かろうじてあるといった程である。顔立ちも幼い。小柄なせいか中学生に間違えられた事もある。整ってはいるが綺麗というよりは可愛らしいといった感じである。髪は今時の女の子にしては珍しく黒のストレートである。ソバージュは嫌いではないがかける勇気は無い。
 体型も背や顔に合わせたのか胸にもウエストにも自信は無い。お尻も小さいと友人によく言われる。服装もそれに合わせてかロングスカートばかり穿いている。今日も白のブラウスにダークブルーのブレザーと丈の長いコート、赤のロングスカートといった出で立ちである。ソックスは白、靴もブラウンといたって地味である。よく色気が無いと言われる。だから成人式での言葉が不思議でならない。自分の何処が大人びているのだろう。不思議であった。
 寒い日であった。小路を歩く人は秋穂の他にはいない。友達は皆車か電車、若しくは自転車で帰っている。
 秋穂の家は学校から歩いていける距離にあった。家といっても居候である。姉夫婦の家に居候をして通っているのだ。
 秋保の姉である春美は秋穂とはかなり歳が離れている。三十四歳である。秋穂が物心ついた時には春美は既に結婚し妊娠していた。既に中学生の息子がいる。夫は真面目な会社員でソフト会社に勤めている。安定した幸福な家庭を持ち親の自慢の娘であった。老け込まない美人で背も高くプロポーションもいい。秋穂にとっては姉であると同時に夢のような存在であった。姉でありながら何処か他人めいたところがあった。
 実際秋穂は高校を卒業するまで姉の存在を間近に感じたことは無かった。姉は早くに独立し秋穂は両親に育てられた。姉夫婦の家は実家から電車ですぐの距離にあり姉は実家によく遊びに来ていた。だが秋穂はこの美しい女が自分の姉だとはなかなか信じられなかった。姉の方も自分の息子と歳が近いせいか妹といっても実感がわかなかった。親戚の子といった印象を拭えなかった。姉の子とはよく遊んだが小学校の4年位になるとクラスの女の子達と遊ぶ時間が多くなった。次第に甥との関係は遊ぶ間柄
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