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マフラー
マフラー
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[9] 最初
そう呼んでいた。これは健児の気遣いでもあった。
 「いいのよ。これから、ね」
 「うん」
 健児は頷いた。秋穂はそれを見て微笑んだ。
 「じゃあね」
 「うん、あき・・・いや叔母さん」
 「うん。ふふっ」
 秋穂は悪戯っぽく笑って部屋を後にした。
 「これでいいのよね、これで」
 秋穂の初めての恋は終わった。その幕を自分で降ろした秋穂は部屋に戻った。
 冬は過ぎた。春になった。ある小春日和の休日だった。健児は部活、理は休日出勤で家にいるのは秋穂と晴美だけだった。
 「お姉ちゃん、ちょっといい?」
 秋穂が台所に入って来た。
 「何かしら」
 秋穂のはにかんだ笑いに晴美は少し首をかしげた。
 「お姉ちゃんに会って欲しい人がいるんだ」
 「?誰?」
 増々話がわからなくなった。自分に会って欲しい人とは。
 「その人・・・何処にいるの?」
 「それは・・・ちょっと来て」
 秋穂が案内したのは家の玄関だった。
 「・・・どうも」
 そこには一人の青年がいた。黒い髪に長身である。黒ジャケットに青ジーンズを着た結構格好良い青年である。
 「秋穂、この人は・・・?」
 「ボーイフレンドの原田君。大学の同級生なの」
 「はい・・・」
 やけにかしこまっている。それを見て晴美は妙に可笑しかった。そういえば理も自分の両親に初めて会った時はこんな感じだった。
 (良かった、健児の事はもう完全に吹っ切れたのね)
 晴美は秋穂を見て微笑んだ。だが秋穂はそれに気付いていない。
 (本当に子供なんだから)
 原田に向き直った。
 「原田君ね。秋穂の彼氏か」
 そう言って晴美は意地悪そうに笑った。
 「ちょ、ちょっとお姉ちゃん、そんなんじゃあ・・・・・・・・・」
 秋穂は顔を真っ赤にした。
 「いいのよ、隠さなくても。秋穂にもやっといい人が見つかったんだし」
 「だからそんなんじゃ・・・・・・」
 「言い繕っても駄目、私はあんたのお姉さんなのよ、何でもお見通しなんだから」
 「え、ええっ!?」
 秋穂は更に顔を赤らめた。
 「さあ上がって。丁度お昼が出来たのよ」
 「は、はい」
 秋穂とその彼氏原田を誘った。三人は玄関を上がりリビングへと歩いて行った。リビングに置いてある花の優しい香りが漂ってくる。
 
 マフラー   完

               2003・10・24
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