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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第四話 想い、轟々と(前)
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よりだ。

「オッサン、オッサン。いいのかよ。アレ。エリーゼにやっちまって」

 その呼び方はやめろ。否が応にも年齢を意識して空しくなる。
 それに、抗議するほどエリーゼに似合わないとは思わない。あの簪は――

「フェイにやるつもりで買ってたんじゃなかったのか?」
「なぜフェイリオに?」
「や、何で、って」

 たまたま目について、気まぐれで買ったモノだ。どの人間に贈ろうが私の自由だ。

 君影草の簪。君影草はスズランの別名。花言葉は「幸福が帰る」。
 親の死、人身売買、人体実験、村八分。数多去った君の幸福が、少しでも早く帰って来るように。――ふむ。気まぐれのつもりだったが、エリーゼに似合うと思って手に取ったのかもしれないな。

「ダンナはフェイリオの髪結ったことないってこと?」
「ない」

 特に手を入れてもいなかったから、小さい頃は伸び放題のボサボサだったな。エルは身繕いにアレコレ手を加えたが、フェイリオは完全に放置していた。

「じゃーさ。せっかくだからここで初イメチェンさせてみちゃえば? エリーゼみたいにさ。絶対化けるぞ、あの素材は」

 ふと思いつく。私が覚えている幼いフェイリオの容姿はエルと酷似していた。なら。

「フェイリオ、来なさい」







 /Fay

 パパに声をかけられて、とてとてと、何も考えずにパパの前に立った。

「座りなさい。こちらに背を向けて」

 ? パパ、何がしたいんだろ。とりあえず言われた通りの体勢で座ってみた。
 そしたら、パパの手がフェイの白い髪を多めに掬った。
 ふ、ふわわ、なに!?

「フェ〜イ。よかったなあ。パパがエリーゼにしたみたいにヘアメイクしてくれるってさ」
「え!?」

 思わずパパをふり仰いだ。

「前を向いていろ」
「は、はいっ」

 パパが? え、パパだよ? お姉ちゃんならともかく、フェイには絶対こんなことしなかったパパが? フェイの髪いじってくれてる?

 どうしよう。ドキドキしすぎて心臓ぱーんってしちゃいそうだよぉ。


「できたぞ」

 ……よ、よかった。心臓、無事だ。

 水面をのぞきこむ。どんなのにしてくれたのかな。どきどき。
 水鏡に映ってたのは、――わたしだけど、わたしじゃなかった。

 水の向こうにいたのは、わたしと同じ歳になったエルお姉ちゃん。

 分け目も結い方もお姉ちゃんと同じ。わたしがお姉ちゃんの髪型を真似たんじゃなくて、お姉ちゃんが私と同じ髪と目の色になっちゃったみたい。

 ふり返る。パパの、「わたし」を素通りする、いとしげなまなざし。
 お姉ちゃん。あなたはずっとこのまなざしをヒトリジメしてたのね。

「ん? フェイ、どこ行
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