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或る短かな後日談
終わった世界で
三 楔
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る人たちだったみたい」

 小さな声。震える声。そのまま、掠れて、消えそうなほどに。弱々しい声で、彼女は言って。
 謝罪の理由は。なんとなく、察し。きっと、私と同じように彼女も、胸の中の泥棘を。隣を歩む私に。全て、吐き出したかったのだろう、と。

 吐き出してしまえなかったのは。一人、言葉も無く。沈みきっていた。私の所為だということもまた。

「頭が痛むの。胸も。忘れてたことを思い出すと。あのアンデッド達の素材になったのは、私と一緒に戦っていた人たちだった。一人一人、個人までは思い出せないけれど……もしかしたら、いや、そんなことはきっと無い、無い、と、思うのだけれど。もしかしたらまだ、私たちみたいに、自我が――」
「そんなこと無い。あなたの知ってる人の姿をしていても、あれは」
「そう。分かってる。分かってるの。でも、でも、あの人達は、確かに、確かに――」

 昔の私の。名前を呼んだの、と。

「私の名前を。確かに、私の名前だった。ネクロマンサーに付けられた名前じゃない。私の名前、私ですら忘れていた、名前を……」

 語気は、徐々に荒く。息もまた。必要なんて無い筈なのに。荒く、荒く。私の手を握るその力も、また。強く。

「私のことを知っていた。私も忘れてるだけで、きっと、一人一人、あの人たちのことを知っているのよ。もしかしたら、あの人たちに敵意なんて無くて、只、助けを求めてただけかもしれないのに、私は、私は――」
「落ち着いて。そんなこと無い、大丈夫だから」
「でも。あの人たちはずっと、私の名前を呟きながら……手を伸ばして、私に縋りついてきて」

 溢れ出した言葉は止まらず。語気は強く、自分を。彼女自身を責めるように。彼女は私と視線を交し。しかし、きっと。その、視線の先に居るのは。
 私の瞳に映った彼女。彼女、自身で。

「確かに引き裂かれた、怪我だってした、けれど、あれも、本当はきっと悪意なんて。助けを求、求められていただけで……こんな体になってしまって加減が出来なかっただけかもしれない。私はあの人たちを一方的に――」
「リティ」

 思わず。彼女の、名前を呼ぶ。うろたえるように。自身を見失うように。言葉を紡ぎ続けた彼女は、私の呼び掛けに。呼んだ、名前に。口を、閉じて。
 それは。名前を呼んだ。呼んでしまった、私も、また。

「……ごめん、名前……」
 
 それは。造物主によって付けられた名前を元とした。思い出の有る名前、大切な名前とは言えそれは。ドールとしての名前。彼女が取り戻した、本当の名前ではなくて。

「……いい。こっちこそ、ごめん。ちょっと、どうかしてたみたい」

 引き攣った笑み。触れただけでも、崩れ、泣き出しそうな……明らかに無理をした。強張ったままの手と、取り繕うためだけ
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