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乱世の確率事象改変
絆固めて想いを胸に
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 バカ笑い。抱腹絶倒。紫髪の美女の様子を見ればそんな言葉が頭に浮かぶ。
 身体をくの次に曲げ、腹を抑え、片膝に手を打ちつける霞は、椅子から落ちてしまうのではないかと心配になるほど。
 対して、屈辱からか顔を真っ赤に茹で上げて、プルプルと震える少女が、一人。
 帽子から覗く深緑の髪は手入れが為されているからか艶やか、知性の証である眼鏡は掛けていない。ただ衣服だけは、本来ならば智者の証明と言ってよいモノであった。
 詠が居た。この戦場に、袁家との重要な戦にわざわざ出てきていた。
 ヒィヒィと霞が苦しげに声を上げる様を、苦々しげに睨みつける彼女は、普段なら跳ねるように食って掛かるのだがそれをしない。
 “この服”を着ている時だけは、それをしてはならない。

「くく……っ! あ、あかんて……そんなん、は、反則やん? ひ、雛里の服着て……華琳の喋り方……くっ……あははははっ!」

 漸く落ち着くかと思えば、また盛大に笑い出した。
 詠はギリと歯を噛みしめて耐えるだけ。似合ってないと素直に言えばいいのに……心の内で毒づきながら。
 彼女が着ている服は、嘗て徐州で孫権軍を追い返した時に着ていた雛里の衣服。胸については前のような即席では無く、詠の大きさに合わせて繕われており、何処からどう見ても水鏡塾の学生にしか見えない。
 帽子と腰のリボンも変えていた。三角帽子の代わりに小さめの文官帽子、リボンは……月が『可愛いからこの色にしよう』と言った為に侍女服のモノを脱色した薄ピンク。
 今回は雛里の代わりでは無く、新規に登用された軍師に見せかける算段であった。
 いつのなら霞も此処まで笑ったりしないのだが、今回は詠の後ろで佇む一人の男の思いつきによって、抑え切れなかった。

「そんな笑わなくてもいいじゃないか。なぁ、えーりん?」
「……“あなたのせいではないかしら?”」

 尋ねれば、キッと後ろを振り向いて睨まれる。殺気をふんだんに込められた視線、後で覚えてなさいよこのバカと言わんばかりの。
 秋斗はブルリと震えて一歩退いた。
 くだらない思いつきである。普段から眼鏡を掛けているから外して服装を変えれば誰か分からないのではないか、それならいっそ口調も変えてみよう……などと彼が言い出したのが原因であった。
 彼の隣では、真っ黒の衣服でフードも被って正体を隠す月がグッと拳を握って、

――“彼女”の真似してる詠ちゃん可愛い。

 何処かズレた思考で、詠に優しげな眼差しを送っていた。
 駐屯地の天幕の中、ひとしきり笑った霞が、目尻に涙を浮かべながら口を開く。

「はー……よう笑ろた。秋斗、あんたぁ中々やりよるな。ってか詠、ウチの隊の細作は劉表の謁見終わってから殺しきったし、普通に喋ってもええねんで? 天幕の外にも人居らんっぽいし
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