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ゾンビの世界は意外に余裕だった
18話、丘陵の手前で(後編)
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ほどのグループを代表する西川さんです」

 高橋さんにあっさりと勘が外れたことを知らされた。

「斉藤さんですね。はじめまして、西川と申します」
「はじめまして」

 渋い声で挨拶した西川さんは五十歳で歯科医とのこと。痩せ顔で髪の毛の七割が白髪だ。

「それで高橋さん。首尾はどうなりましたか」

「概ね成功です。県営保養所グループと各小グループは食糧提供と聞いてすぐに同意してくれました。ただ県営保養所の方はいつでも良いので斉藤さんと情報交換をしたいそうです」

「構いませんよ」

「それからこちらの西川さんのグループも条件付きで同意してくれています。ただ、医薬品の提供について斉藤さんと直接交渉したいと仰るので同行して貰いました」

「医療品ですか?」

「糖尿病の薬があれば分けて頂きたいのです。重度の患者が三名いますのでどうかお願いします」

 西川さんの醸し出す雰囲気は山田所長と似ている。人を動かすながうまい人なのだろう。

「糖尿病ですか。少しお待ちを」

 俺は別荘組から一旦離れてキャリーに在庫を確認した。結論を言えば有り余っている。

「境界を結ぶ協定に同意していただけるなら、三人に一ヶ月分づつ提供しましょう。それ以上必要でこちらに在庫がある場合は別の対価でお譲りします」

「助かります。もちろん、境界については異存ありません」

「高橋さん。西川さんも納得してくれたようですし、正式な境界を決めましょう」

「分かりました」


 俺達は車のヘッドライトの当たる場所に地図を広げ、別荘地との境界を確認していく。大体は試案通りになった。まず南北に縦断する三つの丘陵の真ん中を利用することで合意する。

 真ん中の丘陵の頂上を別荘地の物とする一方、境界をその西斜面と平地の境に設けた。

  真ん中の丘陵はここから若干南東に向かうが、そのまま境界にすることでも合意した。 また別荘地が利用出来ない南部の林道は、要求通り研究所側で占有できるようになった。

 南部の林道は真ん中の丘陵の手前で県道に接続するので、分かりやすい境界と言えるだろう。

「少しよろしいですか?」

 黙って佇んでいた西川さんが何かを思い出したように口を挟んだ。交渉妥結間近で流石に安心した様子になっていた高市さんがかなり嫌そうな顔になる。俺も面倒事じゃないかと警戒気味に「どうぞ」と告げる。

「南側の林道は県道側の入り口近くの牧場主が封鎖していますので利用できませんよ」

「牧場主ですか?」

「ええ。私は一度あそこに食糧を物色しに行ったのですが、銃で武装した牧場一家に二度と近づかないよう誓わされました。まあ、食糧自体はまだ余っているから持っていけと言ってくれたので、悪い人間ではないようですが気を付けて下さい」

「ご忠告ありがとうございます。貴
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