暁 〜小説投稿サイト〜
バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
序曲〜overture〜
〜プロローグ〜
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窓の外は暗く、今にも雨が降り出しそうな雲行きだった。
暗い部屋の中を灯しているのは目の前にある机の電灯ただ一つ。

「千早様……」
「ごめん、史。すこし席を外しておいてくれない。」
「……承知しました。」
扉が閉まる音を最後に、また部屋の中から全ての音が掻き消えた。
僕は不登校を続けていた。きっかけは些細な事だったのだと思う。
僕の何かが彼らの憤りに触れてしまったのだろう。
実際の社会なら、そんな奴は気にもかけなければいいだけの話。
そりが合わない奴とは逢いさえしなければどうってことは無い。
でも、閉鎖された「学校」という空間は違う。
嫌な奴だって毎日顔を合わさなければならないし、何よりも周囲にいる全員は、「教師」や「成績」といったでたらめな「定規」が生み出す「比較」の被害者だろう。

共通の話題を持たない、言葉が見下しているように聞こえる、容姿が女みたいになよなよしている。
そんな風に疎外される要素を何個も持つ人間であり、さらにはそもそも友達づきあいの良い方ではなく、周囲の人間に対して一歩引いて身構えているような態度。
そのためだろう、級友との関係の「転落」はあっと言う間だった。
クラスメイトとの不和は無視に変わり、そしてそれが嫌がらせへと発展するのには、さして時間はかからなかった。
僕はますます学校で孤立し、その無言の苦痛が何ヶ月も続いた挙げ句にとうとう学校に行かなくなってしまっていた。

コンコン
「……千早ちゃん、入りますよ。」
「母さん。」
「千早ちゃん、あなたはいつまでそうしているのですか?」
「……」
明確な答えなど持っていない。
答えられる訳がない、そもそも家にいつまでも引きこもっていること自体、ただ苦しみから逃げているだけ、なのだから。
そんな自分に腹が立つ。
「千早ちゃん……」
「このままでは、あなたは前に進むことも出来ないのよ?」
「……」
「決めました。あなたは文月学園に編入し、そこを立派に卒業するのです。もしそれさえ出来ないのであれば……」
「……ならば?」
「あなたを勘当します。いいですね。絶対に通い抜くのですよ。」
こうして、二年から僕は文月学園に転入することが決まった。
この時、僕はまだ事態を甘く見ていたのかもしれない。
「っ……、分かりました。」
間違いに気づいたのは文月学園の近くのマンションへの引っ越しが終わり、母さんが様子を見に来たときのこと。

「これが千早ちゃんの制服よ、サイズが合っているか袖を通して見てもらえないかしら。」
そういって渡された包みをもって奥の部屋で着替えるために引き返すまではよかった。

「母さん、どうしてこれを?」
「やっぱり千早ちゃんは女の子の服を着ているほうがかわいいわよ。」
渡されたのは文月学園の女子用制
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