暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
語り部と火竜と紅蓮
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るよ。でもオイラじゃどうにも出来ないし、どうすれば……)

どうにかしたい、とは思う。
でも、戦闘系の魔法を持っている訳でもなければ戦う為の体術を身につけている訳でもないハッピーが参戦したところで足手まといになってしまうだけだ。
それを解っているから、ハッピーはただナツの勝利を信じている。

「くっそー……相手が炎なら喰えるってのに」

吐き捨てるようにナツが呟く。
相手は熱エネルギー。ナツが食べるのは炎である為、食べる事が出来ないのだ。熱い物を食べると体力や魔力が回復する、だったら話は別なのだが。
悔しそうにナツが呟いている時、ハッピーの中では何かが引っ掛かっていた。

(あれ…?何か前にもこんな事なかったっけ?)










「出せー!ここから出せー!」

ぎゃあぎゃあと喚くルーを呆れたように見つめたルーシィは、その腕をぐいっと引っ張った。わっ、と驚いたような声を上げポカンとルーシィを見るルーに、溜息を付きつつ言う。

「あのね…出せって言って出してくれる訳ないでしょうが」
「人間気紛れだからね!きっと出してくれるよ!」
「その自信は一体どこから……突然大声出すから、パラゴーネが怯えちゃってるじゃない」
「え?あ、ゴメンねパラゴーネ」
「……寧静だ。憂愁するな」
「大丈夫だ。心配するな、だと」

ぐっと親指を立てるルーに呆れつつ、ルーシィは術式を見上げる。
扉に張り付くように現れた術式のルールは、“塔の中の十二宮が全員倒れるまで、この扉を開く事を禁ずる”。
このルールがまだ適用されているという事は、塔の中に十二宮の誰かが残っているという事になる。
リーダーであるエストは含まれていないようだから、あと1人か2人くらいかな、とルーシィは勝手に予想した。

「し…師匠」
「どうした?パラゴーネ」
「師匠って呼ぶなって言う割に素直に返事するんだね、グレイ」
「うっせえ」

くいくい、とコートを引っ張られ振り返ると、俯くパラゴーネがいた。ただでさえ彼女はグレイの肘辺りまでの背しかないのに、俯かれてしまえば頭しか見えない。声が僅かに震えている気がしたが、表情が見えないのでは何とも言えない。
からかうようなルーの言葉に軽く返すと、グレイは目線をパラゴーネに戻す。

「何かあったのか?」
「……いや、何でもない」
「?ならいいけどよ」

グレイの問いに首を横に振るパラゴーネ。今まで用がないのに呼んで来た事は無かったから妙な違和感を覚えつつ、グレイは扉を睨むように見つめる。

「……」

その後ろ姿を見つめ、パラゴーネは目線を落とす。
ぎゅっと唇を噛みしめ拳を握りしめると、彼女は力なく微笑んだ。










無数の蠅の悪魔。
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