暁 〜小説投稿サイト〜
運命の向こう側
プロローグ1
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、頭を抱えながら凛は言った。
 戦術第二科。それが士郎が教師を務める学科である。であれば当然一科もあるのだが、これらの分け方は――身も蓋も無い言い方をすれば、実力だ。一流、一流半の戦闘魔術師は一科に集められ、そこからあぶれた者が二科に。もう少し言い方を変えれば、単独で吸血鬼やそれに類する化け物と戦えるか否か。ようは、二科の教授は閑職も閑職なのだ。士郎が教授になれた理由の一つでもある。
 一科の生徒らが二科の生徒をことさら見下している、という事はないのだが。しかし、魔術師とは実力主義かつ成果主義なのだ。能力の足りない二科を無価値だと思うのは、もどかしく思ってもどうにも出来ない。
 ちなみに、二科の生徒の多くは、戦闘的な魔術を研究してきた家系ではない。資金難で稼ぐ当てもない者達が、苦肉の策で所属する。これも、一科に相手にされない理由の一つだ。

「いや、けど先生は引き受けてくれたぞ」
「そりゃ士郎が言えばね。なんてったってあんたは、その名を轟かせる不死者殺し。それともミスターパーフェクトって言った方がいい?」
「それやめてくれよ……。全く慣れないんだ」
「でしょうね。そう認識されるよう意図した私が言うのも難だけど、ぜんっぜん似合ってないもの」

 肩を落とす士郎に、しかし彼女は悪戯っぽく答えた。美人でありながらそういう仕草は似合うのは、何というか、得だと思える。
 魔術師の集団という、ある種異常なコミュニティ――その中に入った程度で、士郎の度が過ぎた収まることは、当然無かった。誰にも綻びを見せない善人すぎる仮面。固有結界という異能を隠すための、魔術の秘密主義。それらは――少なくとも魔術師達にとっては――理想的な魔術師像に映った。後は、凛の指示でぼろさえ出さなければ、誰からも尊敬され、一目置かれる教授のできあがりだ。
 変人の集団に別種の変人が混ざって、妙な化学反応が起きた結果とも言える。
 それで実態が割れなかったのは、実力だけは本物だったからであろう。異例の速度で不死者を、それも毎回ほぼ単独で撃破した戦歴に嘘は無いのだ。

「まあいいわ。何かあったら私が見ておくわよ。士郎程じゃなくても、それなりに戦えるしね」
「すまん、助かる」
「そうなる前に、主席の彼がどうにかすると思うけど」
「ヴィクトールか……よくやってくれてるよ。俺から学ぶ事なんてとっくにないだろうに。あいつにだけは頭が上がらない」

 三流魔術師が八割をしめる二科の中で、唯一の一流魔術師。純粋な魔術の腕であれば、士郎では逆立ちしても勝てない天才だ。その彼はなぜか士郎に傾倒してるのだが、その理由を知らない。

「余計な話をしたわね。本題に戻るけど、なんで……」
「シロウ、あちらは終わりました。おや、リン、来ていたのですか」
「ああ、セイバー悪いな。お疲れ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ