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雲は遠くて
55章 マイ・シンプル・ラバー
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55章 マイ・シンプル・ラバー

 9月21日の日曜日。空はよく晴れていて、気温は24度ほど。

 渋谷のイエスタデイでは、午後1時30分から、水谷友巳(ともみ)たちのドルチェと、
南野美菜がメイン・ヴォーカルのドン・マイのライヴが始まっている。

「みなさま、きょうは、ドルチェとドン・マイの夢のコラボです!
もう、みなさんもご存じのように、ドルチェとドン・マイは、
メジャーデヴューも決まっています。近日中には、アルバム制作に入ります。
まぁ、きょうはその祝賀パーティです。きょう、お集まりのお客さまも、
ドルチェとドン・マイの、ご家族や、親しいお友だちばかりですので、
みなさま、ぜひとも、楽しいひとときをお過ごしください!」

 26歳の店長、水木守(みずきまもる)の挨拶が終わるとを、
会場から大きな拍手が沸いた。水木守は身長177センチ、
肩幅はあったが、ほっそりとしていて、優しい顔立ちと物腰で、
みんなから慕われている。

 ホールのキャパシティは100席あるが、満席であった。

 イエスタデイは、株式会社モリカワが、2012年の9月にオープンした、
ライヴとダイニング(食事)のクラブスタイルの店で、渋谷駅・ハチ公口から、
スクランブル交差点を渡って約3分、タワービルの2階にある。

「しかし、なんというのか、南野美菜ちゃんと、ドン・マイとは、
息もぴったしで、昔からやっているバンドみたいだよね。
おれも、びっくりしてんだよ」

 ドン・マイのリーダーの草口翔に、そう語る、ドン・マイの
元ヴォーカルの水谷友巳である。

「友ちゃん、おれたちも、びっくりなんだよ。美菜ちゃんの歌唱力が
圧倒的なもんだから、彼女につられて、おれたちも実力以上の
プレイができているっていうのが正直のところさ!あっはは」

 草口はわらった。

「翔さん、そんなことないですよ。わたしなんか、まだまだ、
未熟な歌い手ですから。でも、()めていただいて、うれしいです!」

 ステージに近いテーブルに座る、ドン・マイとドルチェのメンバーの中で、
華やいだ姿の南野美菜は、そういった。

 南野美菜は、同じテーブルの、水谷友巳の高校生の彼女、
木村結愛(ゆあい)や、ドルチェのキーボード担当の22歳、
モデルのような美貌の吉行あおいと、音楽やファッションや
スイーツの話とかで、すっかり、仲良くなっている。

「おれも、美菜ちゃんに負けないように、やってゆきますよ。でもよかった、
ドン・マイに、こんなに素晴らしい歌姫が見つかって!
ドン・マイとドルチェ、おたがいに、切磋琢磨してゆきましょう!」

 そういって、水谷友巳は、心の底から、無邪気に歓んだ。

 ステージから、ちょっと離れ
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