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Element Magic Trinity
神と罪
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―――――クソったれが。

声には出さず、心の中で吐き捨てるように呟く。
不機嫌そうな表情の彼に気づいたのか、周りの侍女達がヒソヒソとした声で会話を続ける。

――――知ってる?クロノヴァイス様って、愛人の子なんですって。
――――え、そうなんですか?
――――何でも、アスール様がどこの馬の骨かも解らない女と交際していたらしくて。
――――そうそう、それで生まれたのがクロノヴァイス様。
――――まさか正妻であるセリア様との子が生まれる前に愛人との子が生まれるなんてね。
――――複製能力(コピー)を持っているからシャロン様はカトレーンだと認めているけど、本当は顔も見たくないんじゃないかしら。

聞こえてる、と言ってやりたかった。
どんなに小声で話しているつもりでもハッキリと聞こえている、と。
けれど、彼は何も言わない。
今もガキな自分がもっとガキだった頃はよく反論したが、それで何かが変わる訳ではなかったからだ。

「兄さん!」

ドロドロとした、怒りと憎しみに近い感情が全身を駆け巡る。全身を染め上げ、怒りから無意識に拳を握りしめる。
それを掻き消すように、彼を解き放つように、まだ幼い声がクロノを呼んだ。
声の主が誰かに気づいたのか、侍女達の声がピタリと止む。
くるりと振り返れば、自分より4つ年下の、確かこの間4歳になったばかりの弟がいた。

「クロス、どうした?」

渦巻いていた感情がふわりと消えるのを感じながら、クロノは口元に笑みを湛える。
4歳にしては子供じみた所がないクロスはニコッと笑う。

「“あの件”だけど、お祖母様がやっと認めてくれたんだ!兄さんも一緒でいいって!」
「マジで!?やったなクロス!」

一気に突き上げてきた歓喜が、クロノの中に僅かに残っていた怒りや憎しみを全て洗い流す。
ぐっとガッツポーズをしたと同時に、ふとクロノは思い出した。

「そういやクロス」
「ん?どうした兄さん」
「アイツはどうすんのかな。ほら、オレの妹でお前の双子の姉ってヤツ」
「あ……」

彼等は彼女を知らなかった。
出来損ないの姉、あるいは妹がいる―――――としか知らされていない。
クロノは生まれてすぐの妹は知っているが、それから先を知らない。
気づいたらいなかった、という感じだ。

「会いに行ってみるか。確かあの小屋に住んでるって話だ」
「うん…お祖母様の許可はいらないかな?」
「言ったら行くなって言われるだけだろうよ、行こうぜ」
「それもそうだな」

クロノの言葉にクロスは苦笑すると、窓の外から見える小屋を眺めた。










(今じゃオレ達の中心のアイツを知らなかったなんて、今考えると変な話だ)

そう思い、クロノは苦笑する。
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