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雲は遠くて
53章 竜太郎と真央、恋の行方は?
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53章 竜太郎と真央、恋の行方(ゆくえ)は?

 2014年9月6日。午後4時。また夏が(もど)ったような天気で、
日中は30度をこえる暑さであった。

 小川真央と新井竜太郎は、渋谷駅ハチ公口の、忠犬ハチ公の前で
待ち合わせをした。ハチ公像のまわりは、待ち合わせの若い人男女で、
にぎやかである。

 ふたりは、渋谷駅から歩いて5分ほどの、渋谷区文化総合センター、
大和田(おわだ)さくらホールへ、バッハのコンサートを聴きに行くところだ。

 演奏曲目は、『ロ短調ミサ曲』で、オーケストラと混声合唱との、巨大建築を
想わすような構造の、バッハの作品の中でも、崇高な楽曲いわれている。

「すみません!竜さん、お待ちになりましたぁ?」
 
 ハチ公改札を出た真央は、肩にかからない長さのボブの髪を
風にそよがせて、竜太郎に駆け寄る。

 ベージュ・ピンクの、薄手の半そでのジャージ・ワンピースが、女性らしい。
 
「おれも、今来たばかりだよ。ちょっと、この近くで、仕事の用事があってね、
待ち合わせしてるからって言って、抜け出してきちゃったよ。あっははは」

 竜太郎は、頭をちょっとかいて、少年のような瞳でわらった。真央もわらった。

 ネイビーのポロシャツ、ブラックデニムで、とても外食産業最大手の
エタナールの副社長とは思えないファッションだ。

 竜太郎の身長は、178センチ。真央は、160センチ。

「きょうは暑かったですよね」と真央。

「暑かったね。雨降って、寒いくらいだったり、急に暑くなったり。
四季の変化が、こんなにはっきりある国も世界じゃ珍しいんだけど、
最近じゃ、大雨や大雪もあったりで、変化が激しいよね。
これも温暖化の影響らしいけどね。しかし、まあ、
ビジネス的には、こんな変化も、ビジネス・チャンスなのかも知れないなぁ」

「やっぱり、竜さんは、副社長さんらしいわ。変化をビジネスにつなげるんですもん」

「あっはは。頭の中が、仕事のことから離れなくって困るんですよ。
真央ちゃん。あっはは」

「竜さんって、音楽の趣味も、レディ・ガガが大好きだったり、
バッハが好きだったりって、趣味の幅が広くって、尊敬しちゃいます!」

「ガガも、無名のころは苦労しいたしね、バッハも、10歳のころに両親を
失っていて、大学に進学する余裕もなかったんだよね。そんな苦境の中で、
貪欲(どんよく)に自分のやりたい道を歩いたんだよね。大きな仕事をしたしね。
恵まれて育った、お坊ちゃん育ちの、おれとは大違いなんですよ。あっはは。
だから、おれは、つい、尊敬というか、感動してしまうんです。
まあ、ガガやバッハからは、インスピレーションというか、ひらめきのような、
やる気や元
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