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魔王の友を持つ魔王
§60 巨神、大地に立つ
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だけで潜り抜けるの無理じゃないかな……」

 疲労を滲ませながら、恵那が苦言を呈する。意識を失った魚人達は、数分で意識を取り戻すという、恐るべき回復力を見せていた。神獣に匹敵する強さでこれは勘弁願いたい。先程出来た魚塊ももぞもぞと動いている。ワイヤーを引き千切られるのも時間の問題だろう。

「数が少なけりゃまだ楽なんだけどな」

 数が多いが故に、迦具土で"分断"出来ない。分断しても他にかまけている内にに怪物化してしまいイタチごっこになりそうだ。ワイヤーで拘束しようにも、拘束しきれない。多分長さがこの倍あっても足りないだろう。活性化した植物で絡めとろうにも、奴等の敏捷性が予想より高い上、上手く植物が従わない。どうやらあの水神も同種の権能をもつらしい。互いに干渉しあって、僅かに競り負けている。流石に本場の神には敵わない、か。

「いやまて。植物に干渉? じゃあ水の神では、無い? 農耕神とかそっち系?」

「余所見をする余裕は無いぞ?」

 余裕そうな声と共に、水が飛来する。叩き斬ろうと剣を振り上げぶつければ――――剣が砕けた。魔術的な加護がかかっているはずの剣が。ただの水ごときで砕けることなど予想外だった黎斗は一瞬硬直しかけるも、

「なっ!!?」

 慌てて後退し態勢を整える。放たれる水流はそのままアスファルトを貫通し、大地を深く抉り取った。その光景は、テレビや雑誌で見た物に類似していたことで、聊か知識不足の気のある黎斗にも能力の類推を可能とした。

「あぁ……ウォーターカッター的なカンジなのね。妙にハイカラな技使いやがってからに」

 勢いよく放たれた水がここまでとは。複数放たれる水鉄砲に、黎斗は近づくことが叶わない。何せ敵の攻撃は黎斗以外に当たれば致命傷だ。そしてこの神はおそらく、魚人達に攻撃を当てても別に気にすることは無いだろう。だから、黎斗は魚人に攻撃がいかないように気を配りながら、魚人の意識を奪わなければならないのだ。魚人に当たりそうな水流から魚人を守る為に、魚人を蹴り飛ばしたり魔術で水を相殺したり。なんで敵を守っているんだろう、なんて冗談をかます余裕も正直、あんまり無い。

「不味いか……?」

 ジリ貧。明確に浮かぶのはその言葉だ。黎斗はともかく、恵那は限界がもうすぐ訪れるだろう。神懸りの反動がいつ来てもおかしくない。そうまってしまえば終わりだ。いかに黎斗が卓越した武を持っていても、隻眼でかつ恵那を守りながらは厳しい。更に敵を守りながら不殺を徹底しての連戦、という条件が加われば無謀が過ぎる。

「様子見と行こうか」

 呟く海神。遥か頭上に巨大な水の塊が浮かぶ。これが落ちたら、不味い。この大きさの水なんて凶器でしかない。

「やりたくないけど短期決戦、か」

 覚悟を、決める。呪力
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