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剣の丘に花は咲く 
第十三章 聖国の世界扉
第一話 差し伸ばされる光
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 ガラガラと、馬車の車輪が石畳の上を転がる音が響く中、トリステイン女王アンリエッタは冷めた目で窓から覗く景色を眺めていた。別に外の景色が殺風景な理由ではない。それどころか、絢爛豪華な様式の寺院が立ち並び、遠目でも分かるほど豪華な装いをした神官たちが笑いながら歩いている姿など、田舎者ではなくとも目を引くものはあちことにあり、飽きさせるような事はない筈であった。しかし、それを見つめるアンリエッタの瞳の中には、氷のような冷たさしか見られない。

「……本当に、何時来てもここは歪ですね」

 窓枠に手を当てながら、ポツリと呟く。
 窓の向こうには、一体どれだけのお金を掛けたのか、緻密な彫刻が彫り込まれた巨大な寺院が立ち並んでおり、その前を談笑しながら派手なお仕着を身に纏った神官が歩き、その後ろを商人だろうか、ゴテゴテとした装飾が付いた服を着たでっぷりと太った男が、ニコニコと笑いながら歩いている。
 アンリエッタは窓枠から顔を離すと、逆側の窓枠へと顔を向けた。
 反対の窓枠の向こう。そこには、何人ものみすぼらしいボロ切れのような服を着た人たちが、スープを配る一団の前に列を成して並んでいる姿があった。彼らはハルケギニア中から集まった信者たちであり。『神のしもべたる民のしもべ』と自らをそう称する教皇聖下が、敬虔なブリミル教徒たちを正しく導く、差別も貧困もない理想郷が、アウソーニャ半島の一角―――つまりロマリアに存在すると、ハルケギニアの各地で神官たちから教え込まれ、それを信じ唯一の希望とハルケギニア中から集まってきた平民たちであった。彼らは全てを捨てやってきては見たものの、その結果は理想と現実の狭間に全てを無くしてしまい、今は着るものや食べるものにも困窮し、一日一日をただ生きていくだけのギリギリの生活を続けていた。
 ただ味が付いた水のようなスープを奪い合う平民の横を通り過ぎ、イオニア会のものであろう石柱を何本も使った豪華な寺院の門の向こうへと消えていく神官の身に付けた、金で出来た装飾が、太陽の光りをギラリと鈍く反射する。

「“光溢れた土地”―――ロマリア……確かに、目に痛いほどですわね」

 目に刺さる残光に目を細めたアンリエッタが、口の端を歪め―――皮肉気に笑った。



 ここはロマリア連合皇国―――その首都である宗教都市ロマリア。
 ガリア王国真南のアウソーニャ半島に位置する都市国家連合体―――“皇国”と呼ばれるその国こそ、ハルケギニアに現存する国の中でも最古参の一つであるロマリア連合皇国であった。
 この“皇国”。他の国にはない特徴があった。例えば、かつてはガリアの半分を占領したこともある強大な国であったが、その長い歴史の中、多くの小国を併呑、独立を繰り返した結果、ロマリアを頂点とした連合制となったこともそうである。ハルケギ
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