暁 〜小説投稿サイト〜
雲は遠くて
3章 家族
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いテーブルがあって、
白い皿やビールやジュースのグラスが準備されていた。

庭の軒下(のきした)の半日陰で育てている、料理の風味付けにも使える、
セリ科のチャービル(別名セルフィーユ)や、ブルーのサルビアが、
小さなガラスの花瓶(かびん)(はい)って、テーブルを(かざ)っている。

テーブルのすぐ横の、南側(みなみがわ)には、ソファが()いてある。
庭を(なが)めたり、テレビを見たりする、くつろぎの場所だった。

ソファには、祖母(そぼ )の清原美佐子(みさこ)がいた。

昨夜のロンドン・オリンピックの男子サッカー、3対0で勝った試合、
準々決勝、日本対エジプトの、録画を、テレビで見ていた。

美佐(みさ)さん、こんにちは。お元気ですか」

森川誠はそういって、美佐子の(となり)にすわった。

「はい、おかげさまで、からだの調子もいいですよ。
きょうは、ゆっくりと、過ごしていってくださいね」と、
美佐子は笑顔で、ていねいに頭を下げて挨拶(あいさつ)をした。

テーブルには、美樹のこしらえたゆで卵の入ったグリーン・サラダや
枝まめ、姉の美咲がつくった(つめ)たくしたパスタの、
トマトとチーズのカッペリーニ、母親の美穂子がつくった酢豚(すぶた)
叔母(おば)のつくったナスやキュウリやキャベツの漬物(つけもの)とか、
料理も出そろった。

みんなは椅子(いす)にすわって、にこやかに、「かんぱぁーい(乾杯)」と、
みんなはそれぞれのビールやジュースのグラスを触れ合わせた。

「おれの大好きな酢豚(すぶた)ですね、美咲ちゃん、ありがとう」と、森川誠は、
左隣(ひだりとなり)の美咲に目を細める。

「酢豚つくったのはママよ。わたしはパスタつくりました」と美咲は、
わざと(ほほ)をふくらませて、(おこ)った顔をした。

「わっはっは。美咲ちゃん、ごめん。おじさんは、もう()ってるね。
おれも、(かず)ちゃんも、すぐ酔っちゃうんだから。ね、和ちゃん、パパ」

森川は、右隣の清原和幸の肩を、軽く手でゆらした。

「しかし、おれたちは、いつまでも、酒は強いよね。酔っても、
乱れないし、つぶれない」と和幸はわらった。

「そうだよな。でも、知らないうちに、つぶれていたりしてなぁ。
人生は、いつでも、うっかりできないもので」
と森川も、声を出してわらった。

「そうそう、パパなんか、外で飲んで帰ってくると、
つぶれっぱなしなんだから。ねえ、ママ」といって、
森川誠の向かい側にすわる美樹は、
おおげさな(こま)った顔をして、
右隣の美穂子に話をする。

「森川さんもパパも、酔っぱらうと子どもみたいになるけれど、
仕事しているときは、誰にも負
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ