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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第五十二話 Enigma

 
前書き
シグマを撃破したエックス達だが、世界中が大変なことに 

 
世界各地からイレギュラーハンター本部に寄せられるイレギュラーの発生件数はもはや数え切れぬほどである。

ゼロ「シグナス。各地の状況はどうなっている?」

開口一番に問い掛けるゼロ。
彼の腕は継ぎ足されてはいるが、バスターの変形機構を失っている。

シグナス「知っての通りだ。極めて深刻な状況だな」

そんなゼロとエックスに向かってシグナスが言う。
世界中にシグマウィルスが蔓延しているとの情報は既にゼロ達も耳にしている。

シグナス「シグマの爆発の影響で蔓延したシグマウィルスの影響で多くのレプリロイドがイレギュラー化。社会機関は必然的に麻痺している」

エックス「分かっている。だから今ここで手をこまねいている場合じゃない。1人でも多くの犠牲を減らす為に早く何とかしなければ」

焦燥に駆られるエックス。
しかしそんな彼に溜め息するとシグナスは更に続ける。

シグナス「そうしたいのはやまやまだがな。実はそんな地上の混乱さえ些事と見做さなければならない事態に我々は直面している。ラグランジュポイントに浮かぶスペースコロニー、ユーラシア。それが突如ラグランジュポイントを外れ地上に向かって落下し始めたのだ」

エックス「な…何だって!?ユーラシアが地球に!!?」

エイリア「ユーラシアの内部からも大量のシグマウィルスが感知されている上、この落下自体まるで地上の混乱と呼応するかのようなタイミング。シグマの仕業である事は間違いないわ」

シグナスとエイリアが告げるあまりに絶望的な事態にエックスもゼロもルインも呆然としたままその場に立ち尽くす。

シグナス「シグマウィルスの蔓延で通信機能も麻痺し今は各地の支部とさえ満足に連絡が取れない状態。我々は独自にこの未曾有の危機に対処して行かねばならんが…ウィルスの第一次感染によって既に大多数のハンターを失っている。しかもユーラシアの地上激突までの予測時間は僅かに16時間。人類もレプリロイドも何もかもが消滅する」

エックス「何て事だ…」

ルイン「でも、地上の混乱にはある程度の対策はしているんでしょ?」

アイリス「勿論よ。過去に起きたイレイズ事件…それを応用してイレギュラー化したレプリロイドをシステムダウンさせたわ。被害を最小限に抑えるにはそれしかなかったの…尤も、ハンターベースのリソースも限りがあるから、主要都市のレプリロイドしか…今、エイリアさんがレプリフォースに連絡を入れてもらったんだけど…どこまで期待出来るか…」

ゼロ「充分だアイリス」

主要都市のイレギュラーによる被害はアイリス達によって最小限に抑えられたが、問題はユーラシアだ。
どうにかユーラシアを破壊しなければならないが今や地上には地上から大気圏外の標的を撃ち抜けるだけの出力を持つ兵器は存在しない。
度重なる戦乱の果てにその殆どが大破し使用不能となってしまっているのだ。

ルイン「政府には?」

シグナス「報告済みだ。間も無く全世界に向けて最寄りのシェルターへの退避勧告が発せられるだろう。たった16時間で果たしてどのくらいの人々が避難可能な事か、誰がどう見ても状況は絶望的だ。しかし…我々までが絶望する訳には行かない。そのためにプランを2つばかり思案してみた。ダグラス」

ダグラス「おう」

シグナスに言われて席から立ち上がったのはハンターベースの優秀なメカニックであるダグラスである。

シグナス「まずは大出力兵器による地上からの狙撃。とは言え…皆も知っての通り、ここ最近の一連の争乱によってそれを可能とする兵器の大半は失われてしまっている。しかし…唯一大気圏外の標的を破壊する事が可能であろうと思われる兵器が存在した。それがこの…」

ダグラスがコンソールパネルを叩き画面上に巨大な砲台の映像を映し出す。

シグナス「今から約100年前の大戦時に建造されたと言われているギガ粒子砲・“エニグマ”だ」

だがシグナスの説明を聞いても周囲の反応は冷ややかだ。
寧ろ落胆の空気が蔓延していくのが目に見えて分かる。
エニグマは最新式の同型兵器に比べ命中精度やエネルギー効率などで大きく性能が劣るばかりではなく、既に数十年に渡りまともな整備も行われていないため今では正常に作動するかどうかすら危ぶまれているのだ。
そればかりか、場合によっては暴発しユーラシアが落下する前に地上に甚大な被害を及ぼす危惧さえある。
そんな物に縋らざるを得ないのだから、つくづく今世界が直面している事態の絶望さが実感できると言うものだ。

エイリア「そして、エニグマ作戦が失敗した場合のもう1つの作戦がスペースシャトル作戦。出来ればあまり使いたくはないけれど。ハンターベースのシャトルに大量の爆薬を積みそれをユーラシアに激突させる作戦ね。それもシグマウィルスの影響でオートパイロットが機能しないため、誰かが操縦してユーラシアに向かうと言うまさに命懸けの特攻作戦と言う事になるわ」

更に告げられたエイリアの言葉に場の空気が凍りつく。
エニグマ作戦にしろスペースシャトル作戦にしろ共に成功率はあまりに低く、しかも命の危険さえ伴う。
誰もが絶望感に打ちひしがれ、言葉さえ満足に発する事が出来ない。
そんな一同を見回しシグナスが言う。

シグナス「言ったはずだ。我々までが絶望する訳には行かないと。どちらも極めて危険で…しかも成功率に関しては殆ど賭けだ。しかし…それでも可能性はゼロでは無い。無論シャトルは最終手段だ。今は限られた時間の中で出来る限りエニグマを整備し、ユーラシア狙撃の体勢を整えるのだ。で、ダグラス。エニグマの状況は…」

ダグラス「簡単なチェックをしてきたが、ハッキリ言って使い物にならねえな。整備もなしに放置されてた期間を考えれば思ったよりは老朽化してなかった。暴発の心配はねえが、それでも大気圏を貫いてビームを放出出来るまでの出力が発揮出来るかどうかは微妙な所だ」

ダグラスは技術屋だ。
事実は事実として淡々と述べる。

シグナス「そこでまずはエニグマを最低限稼動可能とするため、エックスとゼロ、ルイン。お前達3人で補強の為のパーツを収集してきてもらいたい」

ゼロ「俺達…3人だけか?」

怪訝そうな表情でゼロがシグナスに問い掛ける。

シグナス「ああ、今の状況でシグマウィルスが蔓延している状況で他の者を派遣してもイレギュラーを増やすだけだ。だがお前達はシグマが爆発したその現場に居合わせながら、その影響を全く受けなかった」

エックス「これからもそうだとは限らないんだぞシグナス。シグマウィルスの自己進化次第ではもしかしたら俺達も…」

シグナス「お前達がイレギュラー化してしまうならコロニーの墜落も何も関係ない。お前達がイレギュラー化してしまった時点で世界は終わりだ」

ルイン「確かに…OK。何処に向かえば良いの?」

シグナス「これから述べる4人の人物に協力を求める事になる。」

クレッセント・グリズリー:武器ブローカー。

大量のレアメタルであるオリハルコンを所有している。

タイダル・マッコイーン:海洋博物館館長。

近くの海を占領し、彼の占領する海を利用して、水素を作って核融合を起こす。

ボルト・クラーケン:元イレギュラーハンター。

大容量エネルギーカートリッジを保持している。

シャイニング・ホタルニクス:レーザー工学博士。

最新型のレーザー装置を持っている。

シグナス「この4人がエニグマ補強の鍵を握っている。レアメタル・オリハルコンはエニグマの砲身補強には必要不可欠な素材。それを多く所有しているのがグリズリーなのだ。続いてはマッコイーンの協力を仰いでエニグマの核融合炉の燃料となる必要量の水素を入手してもらいたい。それからエネルギー研究所のクラーケンからは大容量エネルギーカートリッジの提供を求める事にしている。最後にレーザー研究の権威であるホタルニクス博士が発明した最新型のレーザー装置こそがエニグマ作戦の最大の肝だ。僅かなエネルギーでも膨大な破壊力を生むエネルギー加速装置の開発には必要不可欠なものだからな。以上の4人の人物に協力を仰ぎ一刻も早くエニグマの改修を完成させるのだ!!」

ルイン「でも、仮にパーツが揃ったとしてもコロニー衝突までに間に合うの?」

ゼロ「下手したら、間に合わずコロニー衝突なんてオチになりそうだな」

ダグラス「何とか間に合わせてみせるさ」

エックス「メカニックすら足りないからな…残っているハンターをエニグマの整備に回してもどれだけ役に立つか……」

メカニックすら不足している現在。
例えパーツが間に合ったとしてもエニグマの補強が間に合わなければ…。

ゼロ「待て…メカニック………優秀な技術者なら知っているが…」

全員の視線がゼロに向く。

ゼロ「お前達も知っているはずだ。いつもハンターベースに武器やジャンクパーツを売りに来るあのジャンク屋を…」

エックス「彼女か?しかし、彼女はイレギュラーハンターじゃないんだぞ…?」

ゼロ「そんなもの…世界滅亡に比べれば安い物だろう。」

シグナス「そうだな。今は一刻を争う。優秀な人材は1人でも欲しいくらいだ」

エイリア「だけどこの状況よ?もしかしたらそのジャンク屋の方もイレギュラー化しているかも……。」

ゼロ「その時は処分するしかないだろうな…」

彼女がイレギュラー化していないことを願って、彼女に通信を入れた。
しばらくするとモニターに営業スマイルを浮かべた彼女の姿が。

ルナ『はいはい!!武器とパーツを求めるとあらば、誰であろうと、どこにでも!!ジャンク屋兼武器屋のルナ・アームズでございます!!…って、何だハンターさん達かよ』

ゼロ「何だとはご挨拶だな。」

イレギュラー化していないことに安堵しながら言うゼロに対して、ルナは頭を掻きながら口を開いた。

ルナ『まあ、それは置いといて…一体何があったんだよ?いきなり世界中がウィルスまみれじゃねえかよ』

ゼロ「シグマの仕業だ。奴は俺達にわざと負けて世界中にウィルスをばらまいた」

ルナ『へえ…まだ生きてたのか、あのハゲ。懲りねえ奴だな…』

ウンザリしたように言うルナに全く同感だと頷くゼロ。
エイリアはゼロ達が噂する程のジャンク屋がこのような少女だとは思わなかったのか、目を見開いていた。
しかしエックスはウィルスまみれの現状に何の変化もないルナを不思議に思ったために尋ねる。

エックス「君はウィルスを受けても大丈夫なのか?」

ルナ『ん?ああ、俺か?俺には自分のDNAデータを書き換える能力があって完全な対ウィルス性能を持ってるからシグマウィルス程度のウィルスでイレギュラー化はしないよ』

エイリア「DNAデータを書き換えるですって…!!?」

DNAデータを書き換えることでウィルスを無効果出来る能力など聞いたことがない。

ルナ『それより何の用だよ?トリプルロッドか?今から向かおうとしてんだけど…』

ゼロ「それもあるが、今地球に向けてスペースコロニー・ユーラシアが落ちようとしている」

ルナ『へえ~、そりゃ大変だなっ…て、はああああ!!?』

予想外の事態にルナが目を見開いた。

ゼロ「今、それを回避するために、100年前に建造されたギガ粒子砲・エニグマの補強をするんだが、人手が足りないんでな。メカニックとして来てくれないか?」

ルナ『おいおい、俺はハンターじゃないんだぜ?いいのかよ?』

シグナス「構わんよ。ハンターであろうとなかろうと今は優秀な人材が必要だからな。」

ルナ『…分かったよ。地球の未来が掛かってることだしな。ただし報酬は…』

シグナス「報酬はそちらの言い値で払おう」

ルナ『違う。力を貸す代わりに必ず作戦を成功させろってことさ!!』

シグナス「…分かった」

ルナ『じゃあ、今からそっちに向かう。俺のハーネットカスタムを全力で飛ばしてハンターベース着くのには少なくとも10分だな』

シグナス「分かった。今から10分後に、彼女を迎え入れる準備を」

全員【了解】

こうして世界の命運をかけた作戦が始まる。 
 

 
後書き
エニグマ作戦始動。 
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