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魔法薬を好きなように

作者:黒昼白夜
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第5話 サイトの実力拝見してみましょうか

アルヴィーズの食堂の上の階の大ホール。そこで、モンモランシーの少し後方で影のように俺は立っている。『フリッグの舞踏会』といって、この時おどったカップルは結ばれるとかいうことだが、迷信だろうな。
モンモランシーのまわりではいつもの女子生徒たちがいるけど、彼氏がいないのかよ。誰もおどっていないぞ。俺は俺で、踊りたいと思うような相手もいないし、そもそも、魔法衛士隊隊員を目指していたから、護衛の仕方はなれているが、踊りの方は基本しか知らねぇから、こういう舞踏会では、ここの1年生の中間ぐらいとおなじくらいにしか踊れそうにないなぁ。それでも、男爵家のパーティ程度なら問題ないんだけど。

フーケに宝物庫を破られた直後ゆえに心配はいらないだろうが、モンモランシーの警護をしながら、ふと、この前家に帰ったときのことを思い出した。



実験室には8機の吸煙清浄装置がおいてあって、それが部屋の中の臭いを清浄化してくれている。他にも魔法装置は何種類かはあったが、事前に説明してあったからか、そちらには興味をもたずに、俺が持っている薬草の方に興味をもったようだった。

魔法装置の実物を見れば、興味をもつかなと思ったのだが、モンモランシーはそういうタイプではなかったようだ。

多少実験室を見学していったあとは、あきたようなので、メイドをよんで玄関まで送らせた。俺の方は、ここの片づけと、魔法学院へ発送する準備があるからな。途中までつくっていた中でつかえないものとかの処分って、もったいねぇ。魔法装置は全部おいていくから、ガラス製のビン類とか、薬草などをかためておいて、それをあとで、メイドに送ってもらうだけだ。

帰りは、父にあって帰ることにしたが

「よう、親父。なんか特にかわったことは無いかい?」

「ああ、お前が、使い魔なんて珍しいものになったこと以外は無いな」

「なりたくてなったわけじゃないよぉ」

「わかっておる。運命のいたずらかもな。まぁ、モンモランシ家は水の名門だから、何かお前なら得るものはあるだろう。収入だけは心配する必要はあるかもしれないがな」

「収入って、やっぱり、封建貴族だけど、貧乏ってやつ?」

「そうじゃな。まあ、当面の小遣いは今まで通りとしておいてやる」

「あいよ」

うー、モンモランシ家って、やっぱり貧乏系封建貴族だったのね。

「それから、魔法学院だが、部屋は学生寮になるそうだ。よかったな」

「そうだね」

俺としては、魔法薬の実験のことを考えると、雨風がしのげられれば、なんとでもなるとは思っていたが、環境はマシな方がいい。

「そういえば、兄貴は?」

「ヨハンか。あいつは、女のところにでも行っているのだろう」

「例の金髪の彼女?」

「いや、今度は髪の毛が紫色の女性のようだ」

「兄貴もなかなかおちつかないねぇ」

「お前こそ、相手の旦那に感づかれるなよ」

「あら、知っていたの?」

「わしは、これでもお前らの父親だぞ。お前らの素行ぐらい把握できとる」

って、一番タチが悪いのは、父であるからな。まあ、細かいところはつっこまないでおこう。

「とりあえず、気がむいたら、連絡はするから」

「あてにせず待っておるぞ」

そうして、家の方はひと段落ついたので、使い魔のカワウソであるエヴァと一緒に魔法学院にもどってきた。

それから平日は、朝食から夕食までをモンモランシーのそばにいて、夕食後は自由にすごしていたので、軍杖をつかった訓練と、自室での魔法薬の実験とをおこなっている。俺の精神力の関係もあるので、2週間のサイクルで、モンモランシーの実験の手伝いではトライアングルスペルに相当する魔法を使うのは4回、俺自身用にその期間中2回のペースということで、話はついた。実際はもう2回ぐらいなら余裕はあるのだが、魔法学院外へでた時に、護衛としての余力をきちんと残しておくためっということである。

虚無の曜日は、魔法学院から近くにある薬草をとりにいっていた。使わないのもあるが薬草の種類が多いのは、魔法学院が昔、ここらに薬草を植えたらしい。今では、授業で使う薬草なら、ここですべてまかなえるようだ。
そういう意味では一般的なものばかりで特殊なのはみかけないなぁ。

使い魔のエヴァは、普段は寝るときだけ、部屋にもどってきて、食事は適当に自分でとっているようだ。ついでに川とか、湖沼にある薬草もとってきてくれているが、いまのところ、使い道をどうしようかと迷っていて、乾燥させているところだ。

そして、今日からは、使い魔として一緒に教室に入らなくてもよいのだが、暇つぶしに授業をきいていた。
教育係をつとめているメイドのエヴァも教えていてくれたが、ここの魔法学院ほどではないからな。再学習にはもってこいだろう。

それで、今朝は、魔法学院の宝物庫が襲われた。しかもフーケにとの噂が流れていたが、フーケなら、もう逃げ去ったあとだろうと思い、現場を見にもいかなかった。魔法衛士隊の騎士見習いの時はフーケを捕まえるのに借り出されたから、そのあたりはなんとなくわかっていたつもりだった。今日の『フリッグの舞踏会』の挨拶で、オールド・オスマンが

「フーケを捕まえた。そして今夜の主役はフーケを捕まえたミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、ミス・ヴァリエールにミスタ・サイトじゃぞ」

それを聞いた時に奇妙な違和感を覚えた。なぜなら、だいたいは、最後に呼ばれるのが主役の中でも本命のはずなのに、最後がサイトだと?
ルイズが本命で、その使い魔であるからその順番だったのかもしれないが、その二人がどちらにしても中心人物になりえるのか?
ここのところで、少しずつ教室の中でも話せる相手が増えてきて、各人の特徴なんかもつかんできているが、トライアングルからスクウェアの土メイジといわれていたフーケに対抗するには、キュルケとタバサが火や風のトライアングルだといっても、再生力がすぐれている土ゴーレムが相手では難しいだろう。ルイズの爆発する得体の知れない魔法も、土ゴーレムが相手では破壊力はすくないと思われる。ましてやサイトはドットであるギーシュにようやく勝てる程度の力量だ。
どうやって、つかまえたのか聞くのは、キュルケあたりに聞きにいくとしゃべってくれそうだが、モンモランシーがきらっているからな。
タバサは無口だし、ルイズと近づくのも、あまりモンモランシーが好まないみたいだから、夕食後の自由に動いている間でサイトとあった時にでも聞いてみるのが一番か。疑問は記憶の箱の中に閉じ込めて、モンモランシーの警護をおこなっていた。



モンモランシーに言いよって来ていたのは一人いた。パーティ用の服装もハデな、ギーシュだ。まあ、あっさりと、モンモランシーは断って、ギーシュもそれでまとわりつかなかったから、俺が特に手をだすこともなかったがな。



『フリッグの舞踏会』から数日たって、サイトと夕食後に会うことができた。俺は軽い調子で声をかけてみた。

「やぁ、たしかルイズの使い魔のサイトだったよね」

「えーと、同じ教室でみかけたことはあるんだけど、すまないけど、名前を知らない」

「そういえば、自己紹介はしていなかったね。ジャック・ド・アミアンだ。モンモランシーの使い魔として召喚されたのだけど、覚えてくれていなかったのかな」

「いやぁ、髪とかに特徴のある人は覚えやすいんだけど、そうでなかったら人の顔を覚えれなくて……それに、ルイズからはあまり自分から貴族に話しかけるなって言われていたから」

「そうか。確かにそうだな。それは、こちらからのあいさつが遅れてすまなかった。普通は平民の場合、ミスタ・アミアンとか言ってくることが多いのだけど、同じ使い魔になった境遇の身だ。ジャックとよんでくれ」

「えぇ、そうなんだ。ジャックか。よろしく」

「こちらこそな。それで声をかけたのは、どうやって、ギーシュを倒したり、フーケをつかまえたのか詳しく聞きたいんだ」

「教室で流れていた噂話のまんまなんだけど」

「えっ? 教室で流れている噂だと、『青銅』のギーシュの時は剣をつかんだあとに一瞬で7体のワルキューレを倒して、ギーシュの目の前に剣を突き立てて負けをみとめさせたっていうのと、『土くれ』のフーケの土ゴーレムでは魔法学院の杖を使って、一瞬で土ゴーレムを破壊したあとに、魔法学院の杖をもったフーケをそのまんま捕まえたって話が、本当だって?」

「うん。その通りかな。フーケの方は魔法学院の杖っていうけれど、1回しか使えない武器だったんだけどね」

1回しか使えない武器って、東方は進んでいるという噂も流れているが、エルフを打ち破る能力がない以上、杖サイズでフーケクラスが作った土ゴーレムを1回で破壊できる武器をつくれるとは思えないし、東方から流れてくるというが、どうも俺の前世から流れついたんじゃないかと思われる本とかと同じか。だとしても武器を扱えるって……こいつ、そういう訓練つんでいるのか。手ごわいかもな。

「そうか。フーケの件はわかったけれど、ギーシュの件はちょっと信じがたいんだ。なのでサイトの剣の腕をみせてくれないかな?」

「どうやって?」

「演武って知らないかい?」

「聞いたことはあるけれど、見たことは無いかなぁ」

「……だとすると、手合せすることになるかな」

「手合せって?」

俺は腰に下げた軍杖を持って構えに入りつつ、

「つまり俺の軍杖と、サイトの剣で決闘もどきをするんだよ」

「けど、俺は不器用だから手加減できませんよ?」

「うん? ギーシュの時は目の前に剣を突き立てたのでは?」

「たまたまですよ」

俺は教室の授業でギーシュのワルキューレの動作をみていたので、自分ならワルキューレ7体を最速で切って、ギーシュの目の前に水系統の魔法でつくった水の鞭であるウォーター・ウィップなら、ほぼ同等のことができるだろうと思うので、魔法の詠唱で、最初に何合か、サイトの剣を受けないといけないと考えると、この瞬間が勝負だろうなと思いつつ、サイトにだした言葉は、

「今日は暗いから、そちらから、俺の軍杖は、見づらいだろう。月明かりでもみえる今度の虚無の曜日の翌日のこの時間帯でどうかな?」

「えっと、昼間とかではいけないのかい?」

「誰かに見られると、決着をつけなければ、ならなくなるからさ」

「どうして?」

「貴族としてのプライドだな。俺がサイトに勝てなければ、メイジである俺の負けとみられる。そうすると、メイジの実力をみるには使い魔を見よ、という言葉があって、俺の主人になるモンモランシーが『ゼロ』とよばれているルイズよりも力が劣っているとみなされる。それでモンモランシーのプライドが傷つくからさ」

「貴族のプライドってわからないけれど、理由はあるんだね」

「ああ。それでやる気はどうだい?」

「まあ、暇だからいいかな」

「それでは、今度の虚無の曜日の翌日のこの時間帯に『ヴィストリの広場』で」



そして、約束当日の時間に『ヴィストリの広場』へサイトが来た。

「じゃあ、始めるとして俺の二つ名は『流水』だ。他に何かきいておきたいことはあるかな?」

「そうねぇ。なんでこんなところに、二人がいるのか聞きたいわね!」

声の聞こえてきた方を見るとルイズがいた。
あっ、あれ?
 
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