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ネギまとガンツと俺

作者:をもち
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プロローグ



 そっと微笑みをかみ殺していた。

 馬鹿な約束をしてしまった。

 自分でもそう思うが、それでも笑いは止まらない。

 嬉しさを顔に出さないように必死に無表情を装い、案内された車へと乗り込む。男が車を運転席に移動し、女が恐らく監視役として隣に座る。

 ――オコジョになった後に星人が出ても生を諦めてはいけない……か。

 明らかに無謀。

 だが、それでも生きる目的が出来たこと以上に嬉しいことはない。

 ――もしも、生き延びれたら。

 それを考えてしまうのだ。

 今の自分なら例え100点の星人だろうが、生身で倒せる気がする……なんて、大口を叩くことだって可能だ。

 もちろん、口だけだが。

 だが、今までとは別の覚悟を既に腹の中に抱いている。

 ――絶対に生きてやる。

 それは確かに、新たな目標だった。

 これから俺が生き延びる確立はそれこそ天文学的数字に近いのかもしれない。だが、それでも最後の最後まで絶対に諦めないことだけは確かだ。

 ゆっくりと動き出した車に、視線は自然と窓の外へと向かう。

「……キミは変わったね」

 不意に男に声をかけられた。

「そうで……――ん?」

 聞き覚えのある声に、知り合いだったろうかと運転手の顔をじっと見つめるがやはり見覚えは無い。

 ――気のせいか?

 首を傾げつつも「はぁ」と適当に相槌をうって流す。すると、運転手が再び口を開いた。

「うん、やっぱり少し変わった」
「?」

 ――なんだ?

「僕だよ、タケル」

 運転手の体が軽く光り、そして次の瞬間には見覚えのある顔が、確かにそこにあった。

「……フェイト?」

 タケルの声が、驚きにかすれて漏れた。

 ――ちょっと、待て。

 色々と突っ込みを入れたくなるが、それはさておく。

 ――運転手がフェイトだったということは……隣の女性も?

「うん、そういうところはさすがだ」

 見事に無感動な表情でフェイトが女性に視線を送り、その女性も軽い発光と同時にその姿を変えた。

 現れたのはとがった耳とウェーブがかったショートヘアーが特徴的な美少女。

「頼むよ、栞」
「はい、あの楓とかいう人に申し訳ないですがフェイト様の頼みとあれば」

 呆然とするタケルをヨソに栞がその唇をタケルの唇に――

「――ってなんでやねん!?」

 グッと突き放すタケル。頭を軽くはたくのも忘れない。

 さすがに好きな人とのキスの直後だけあってガードは固い。「あれ、キミ誰?」といいたくなるほどのタケルのナイスな突っ込みだった。

「……さすがにさっきの直後じゃ無理か」
「仕方ありませんわね」

 ため息を吐く二人に、タケルは「とりあえず説明をしてくれ」と疲れたように呟くのだった。




 俺が数ヶ月以上もオコジョになることの危険性―つまりは、俺が星人に狙われているという事実―を、既にフェイトも把握していた。

 まぁ、確かにどの星人も俺の周辺でしか発生していないことは明白で、しかもその動きは大抵、俺に向かっていたのだから、気づく人間ならば自然と気付くだろう。

 だから、フェイトは迎えに来たらしい。

 示された選択は2つ。

 このまま、フェイトの仲間になるか、ならないか。

 仲間にならないなら、特に何もない。このまま解放されてオコジョ化決定だ。つまり、ほぼ確実に死ぬ。絶対に生きるという目標を掲げた以上、簡単に死ぬつもりは無いが、やはり何の力もないオコジョになって星人に狙われたなら生き延びられるとは考えにくい。

 そして、仲間になるなら。

 いくつかの策を容易してあるらしく、このまま自分が仲間になってもネギに迷惑がかかることは無いらしい。

 何よりも、生き残れる可能性がグンと高くなることが最大の利点。

 それと、もう一つ。

 驚くべきことにフェイトは俺が星人に狙われる事実だけでなく、その原因までをも既に把握しているらしい。「僕に任せれば多分、襲われる心配もなくなるけど?」

 とまで言われた。その表情からも嘘ではないと思う。

 まぁ、相変わらずの無表情ではあったが。

「なぁ、フェイト?」
「……決めたかい?」

 相変わらず車を運転しているフェイトとミラー越しに目がかちあった。

「俺は、お前の仲間になる」
「そうだろうね」

 ――キミならそういうと思っていた。

 そう言うフェイトに、俺は言葉を続ける。

「一つだけ、頼みがある」
「……頼み?」
「ああ」

 俺はあえて言葉を小さく絞り、隣の栞という少女に聞こえないようにフェイトの耳に呟いた。

「――――でいいか?」
「……」
「虫がいいとは思うが……頼む」

 頭を下げる俺に、フェイトは笑う。

「面白い、それでこそ僕が興味をもったキミだ」
「!! ……じゃあ?」

 俺の問いに、フェイトは頷き、やはり微笑んだままハンドルを急激に切った。当然のように車が向きを変えて壁に向かって一直線に突き進んでいく。

「……オイオイ」

 ――死ぬ気か?

 こちらを見守るように立つ6人の少女とフェイトの側を通り過ぎ、車は突き進む。

「……ん?」

 ――さっきフェイトが外に?

 見間違いか? と思って車内を見渡せばフェイトと栞と呼ばれた少女は既に車の中から消えていた。

「……」

 考えること1秒。

「……入団試験みたいなものか?」

 まるで慌てず、そのままシートに座ったままタケルは座席に深く腰掛ける。軽く調べたがシートベルトは外れそうに無い。

 おそらく、そういう試験。

 これで無事ならば合格。死亡するならむしろいらない。

 ――さて、どうするか?

 と、考えるまでもないことだ。

 今の俺はスーツを着込んでいる。このまま車の爆発に巻き込まれてもいい。シートベルトを強引に引きちぎっても構わない。

 どちらでも構わないが、どうやら時間切れ。

 そのまま壁に激突した。

 瞬間――爆発。

「これは助かりませんね」

 呟く少女の声が耳に、なぜか鮮明に届いた。

「これでいいのか?」

 炎の中、まるで無傷に現れた俺の姿に「うそ」と呟く少女達の反応が、笑みを誘う。

「ああ……コズモエテレンケイアにようこそ」

 驚きもせずに淡々としているフェイトの姿がまた印象的でもあった。

「……」

 なんとなしに空を見上げた。

 いくつも浮かんでいたはずの雲が、いつの間にかその姿を消し、恥ずかしがり屋な夜の空を全てさらけ出していた。

 輝く月がいつになく風流に微笑んでいる。

 煌く星がかつてなく元気に光っている。

 流れる風がどこからともなく木々の匂いを運んでいる。

 まだ見ぬ景色が、ここにはあった。

「これから宜しく、タケル」
「宜しく、フェイト」

 あくまでも無表情なフェイトはつい笑ってしまう。



 
 俺の明日も




 まだ




 終わらない。



                END

 
 

 
後書き
お疲れ様でした!
『ネギまとガンツと俺』
これにて完結です。

おきにいり登録してくださった方、感想を下さった方、評価を下さった方、もちろん気まぐれにでもこの作品を読んでくださった方、誠にありがとうございました。

私の作品がまた皆様の目に触れられることを願って、このあたりで。
本当にご拝読ありがとうございました。
またどこかで!!

 
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