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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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42 助言~She isn't a person whose love is insane.

 
前書き
遅くなってごめんなさいいいい!!!!リアルが割りと忙しいんです…。

人生初のキャラ絵ですがお詫びの品としてお納めください…。

<i2140|24025>あるぅれ?表示できない。
↑どうやら暁さんでは前書きに挿絵は入らないようです。小説家になろうさんのところでは前書きに入ってました。


あ、胸の膨らみがない。初めてだから許して。
これからもたまに挿絵があると思うけど、全部手描きになります。ペンタブ?高い。色?めんどくさい。
こんなどうしょうもない絵に色を塗りたい!とか、いいや一から書き直してやる!という方がいらしたら是非よろしくお願いいたします。 

 


「……誰なの?出てきなさい」

私は帰ってきて自宅のドアを閉めると、紅魔館の時から時折私を見ていた何者かに向かって言った。
何故だか解らないけどコイツは私を見ていた。始めはフランによるものだと思っていたけど違った。紅魔館を出てから帰宅するまでにも視線を感じた。それも濃い妖力と共に。視線、濃い妖力。どちらも私に向けられたもので、図書室の時には私しか感じていなかったようね。まるで私だけ気付かせるように。

「あら。鋭いのね」

声は私の家の奥(・)からした。私はこの家に一人で住んでいる。今帰ってきたばかりで誰も家の中に入れたりはしていない。それなのに声は奥から聞こえた。どうやって家の中に入ったのかしら。

「何を白々しい。私にわざとらしくしてたじゃない。アンタ何者?どうやって家に入ったのかしら?」
「無論、貴方の後をつけたのよ」
「それはそうだろうけど…」

会話が微妙に噛み合わない。答えてないようで答えになっている。ハッキリしてほしいわ…
まあ、それはいいわ。図書室でも視線を感じたもの。たぶん、コイツは建物の中に誰にも気付かれずに侵入する能力を持っていると思う。

「はぁ。で?貴女の目的は何?」
「私、面白そうな藪はつつかずにはいられないの」
「藪をつつくとどうなるのかしら?」
「面白いものが飛び出るのよ」

聞いたこと無いわね。異国ではつつくと良いものが出るという諺になるぐらいだから縁起のいいものなのかしら?

「で、その異国の妖怪が何の用?私は最近は急が……」
「明希・ヘルフィ・水原。貴方はどう思う?」
「ファッ!?///」

な、な、なんでいきなり明希の名前が出てくるのよ!!それにど、どう思うかなんて!!!

「ふふ、面白いわね。もう一度聞くわ。どう?」
「うぅ…、あ、明希はカッコいいし初めての友達で…最近は特別な人だと…思う…」

思うと言ったあたりは口を窄めながら言って声が小さくなっていた。

不意打ちのように突然明希のことを問われて、頭の中が真っ白になって顔が熱くなる。疑うという心は何処かに吹き飛んで、会話の主導権を相手に握られて、よく考えれば教える義理もないことをしゃべってしまった。

「ふーん?特別ねぇ…それだけ?」

依然、声だけが聞こえる。だけど、この声音からして相手の顔がニヤニヤしているのが目に浮かぶ。

「わ、わからない…」

わからない。そう。わからないの。最近自分がどうしたら良いのかわからない。何もかもが初めて尽くしの他人との関わり合い。今はただ図書室で本を読んでいるだけ。
でもそれって友達とすることかしら?確かに友達だから図書室に入れているけど…。本なら一人でも読むことは出来る。本が持ち出せないから紅魔館で読んでいるだけであって…。
友達って何をすればいいの…?

「それはね?」
「ひぁ!」

『口』だけが突然私の耳元に現れ、囁いた。いきなり耳元で囁かれて、その吐息の熱さやこそばゆさに驚いた。

「ごにょごにょ…」
「……!そっ、そんなの私には///」
「いいから。彼ともっと仲良くなりたいんでしょ?」
「!!」

私は…もっと明希と仲良くなりたい…?

言われてみればそうかもしれない。自分ではわからない内に明希と仲良くなることを望んでいる。
他人に言われて気付くなんて…。

「でも…。それで本当に明希と仲良くなれるの?」
「少なくとも貴方のことを確実に意識させることが出来るわね」
「…わかったわやってみる」
「そ。それじゃあ、頑張ってね~」

言うだけ言って『口』はおろか、濃い妖力が何事もなかったかのように消えた。

でも、私の胸にはそんな疑問より明希のことで一杯だった。














「お邪魔するわ」
「あ、アリスいらっしゃい」

翌日、私は助言?を実行するために紅魔館にやってきた。
門番の中国人が私のことを覚えててくれて、顔パスで紅魔館に入れるのはちょっとvip気分。外の大きな門から図書室までの道のりは二度目にして完璧に覚えている。今回も前回同様、アポなしできたけど明希は快く迎えてくれた。

明希は読みかけの本に栞を挟み、椅子からたって出迎えてくれた。

「どう?人形調子は。本は参考になるかな?」

い、言えない…。明希のことが気になってそれどころじゃないなんて…。

「え、ええ。とっても参考になるわ」

気が引けるけど、まずは助言の布石を…。

「昨日はあまり眠れなかったわ」
「そっか、あんまり夜更かしするなよ」

そう言って明希は椅子の場所に戻り、再び本を読み始めた。

私は本を選びに一度、本棚に一人で向かった。
大量の本棚は死角を生み出し、同じ空間にいながら大きな音を立てなければ誰にも気付かれることがない。

「ふぅ…。落ち着くのよ私」

一度落ち着いて作戦を思い出しましょう。
今回の目標は助言?に従い明希に自然に密着すること。これで仲良くなれるのかは些か不明瞭だけれども、意識させることが出来るとアイツは言ってた。自分が近寄るよりも近寄らせた方が簡単に仲良くなるとか。

まず、自然に明希に密着する布石として自分が寝不足だと言っておく。言った手前、緊張していたら駄目ね。眠そうな雰囲気をしていないと。
次に明希の隣に座って本を読む。現在はその本を取る段階だ。明希の隣に座った時にまた本を逆さにして読まないように気を付けないと。
最後に、うとうとするふりをして寝たフリで明希の肩に頭を乗せる。アイツいわく完璧らしい。

早まる鼓動を抑えつつ、何冊かの本を手に取りさりげなく明希の隣に座る。チラッと明希の方を盗み見るが、明希は本に集中している。
今すぐ寝たフリをすれば流石に怪しい。そうね…せめてこの本が読み終わるか半分まで読み進めるぐらいに時間がたてば調度いいかしら。

―ペラ

うぅ、読もうとしても全然書いてあることが頭に入ってこないわ…

―ペラ

こうなったら読むフリをしましょう。早くページを捲っても、逆に遅く捲っても変だ。

―ペラ、ペラ

あ、今明希とページを捲る音が重なった。…そうだわ。明希のペースに合わせればいいのよ。

―ペラ、ペラ

明希って読むスピードが速いわね。

―ペラ、ペラ

あんまり同じペースで捲る音が重なると段々不気味になってくるからずらしも入れましょう。

―ペラ

まだまだ一冊を読み終わるには程遠いわ…。まちきれない。やっぱり半分までにしましょう。

―ペラ。ペラ。ペラ。ペラ。ペラ…

もうそろそろ半分になるわね。ここで眠そうな顔をして…

―ペラ

い、いいよね。

―ペラ

もうなるようになってしまいなさい!

私はコテ、と頭を明希の肩に乗せて寝たフリをした。

(あ!しまっ…!)

しかし、頭を乗せるときの勢いが強かったのか、乗せる場所が安定してなかったのか私の頭は明希の肩から滑り落ちた。
私は寝たフリをしたまま重力に従い椅子から落下する――

「おっと」

かと身構えていたら、明希が支えてくれてそのまま明希の膝の上に…って!ええ!?

「お飲み物を…って明希様。いいんですか?」
「いいよ。アリスには借りと言うかそんなのがあるから。それに起こしたら悪いし。それに…」
「そうですよね。それぐらいのサービスは最後にいいかも知れませんね」
「アリスは客じゃないよ。いや、客だけどさ」
「そう言う意味じゃないんですけど…。まあ、ここに置いておきますね」

むう。まだ友達だからという理由じゃないのは残念だけど…。それに司書のいってた最後って一体…。
まあ、考えても仕方ないわ。肩に寄りかかることは出来なかったけど、これはこれでいいわよね…寧ろこっちの方がいいかも。
トクントクンと私の心臓が心地よく鳴る。明希の足は筋肉で少し硬いけど悪くはない。今はこの心地を楽しんでいたい…

………………………………………
……………………………………
…………………………………

「ふあぁぁ…」
「あ、起きた?」
「へ?あ!わ、私…」

寝たフリをするつもりが本当に寝てしまったらしい。ガバっと明希の膝の上から飛び起きた。

「随分気持ちよく寝てたね」
「えっと…今は何時?」

明希は銀色の懐中時計をポケットから取りだし時間を見た。

「えっと…18時」
「え!もうそんな時間!?」

あわわ…!結構長い時間寝てしまったわ!

「ご、ごめんなさい!」
「いいよ。アリスがグッスリ寝られたから」
「わ、私!夕食の支度もしなきゃいけないしこれ以上ここにいるのは迷惑だから今日は帰るわ!」

恥ずかしさと気まずさを紛らわすようにあわてて自分の私物(と言っても筆記具だけどけど)を片付けてた。

「あ、アリス!急いで帰るなら今日はいいけど、明日用事がなかったら絶対来て。言いたいことがあるから!」

それだけ聞いて私は挨拶もそこそこに逃げるように帰っていった。

………………………………………
……………………………………
…………………………………

―ぺタン

「はぁ、はぁ、はぁ…」

紅魔館から逃げるようにして出ていった私はずっと家まで恥ずかしさを振り切るように走った。
家の中に入って糸が切れたようにズルズルとドアを背に崩れ落ちて座った。

「随分と大胆なことをしたわね」

クスクスと笑い声が聞こえた。相変わらず姿は見えず声だけが聞こえる。

「あれは事故だったのよ…って言うか当たり前のように見てたのね…」

図書室では視線を感じなかったけども…。明希とパチュリーを欺けるぐらいだから私程度に覚られるわけがないか。

「先に言っておくけど、私は善意でやっているのよ」
「怪しいわね。一から十まで善意ってことじゃないんでしょ?」
「そして助言をしておくわ。後悔しない選択をしなさい」

また話が噛み合わない…。本当にコイツは何なの?妖力を感じるから妖怪なのは間違いないだろうけど…。

「選択って何のことよ」

問いかけるが答えは返ってこない。いつの間にかいなくなっていた。
はぁ、と溜め息をついて夕食の支度を始めた。















翌日。私は四度紅魔館に訪れていた。明希に会うためもそうだけど、今日は明希から大事な話があるらしい。話が無くとも私は図書室に訪れていたのだけど。
話ってなにかしら…?全く想像がつかないわ。お陰で昨日はドキドキしてあんまり眠れなかったわ。明希の膝の上で寝ていたせいでもあるけど。

そんなことを思いながら図書室の扉を開けた。

「はぁむ、ちゅぷ…じゅる…」
「ふぁあ!」

「…あ」

そこでは明希がパチュリーの首筋に噛みついて血を吸っていた。

「ゴク…ゴク…ぷぅ…」
「はぁあぁ…んっ」

私は見惚れていた。吸血鬼が、明希が血を吸うところを。


いいなぁと思った。ズルいと思った。


ただ、じっと見詰めて、自然と明希に噛まれた首筋を手で抑えていた。

「あ…タイミング悪かったなぁ…」

明希が私に気付き声を掛けて、私は首筋から手を離した。

「なんかごめんね?喉の渇きはどうしょうもないからさ」
「え?…あ!ええ。吸血鬼だものね」

惚けていた私はあわてて返事をした。

「まあ…その、座って?」

私は言われるまま椅子に座った。明希は正面に座り、パチュリーも今日は珍しく賢者の石の研究を止めて明希の隣に座った。

「えっと、今日アリスを呼んだのは大事な話があるんだ」

明希のその言葉で私は完全に現実に戻った気がした。雰囲気が何だか重い。少し不安になった。

「実は…俺達、明日には引っ越す事になったんだ」
「…………。え?」

一瞬、明希が何を言っているのかわからなかった。

「正確には紅魔館ごと引っ越すことになったんだ」
「え?え?引っ越す?何処に?」


「妖怪の最後の楽園。幻想郷だよ」 
 

 
後書き
随分と間が空いてしまいましたが、キャラ投票は未だに募集中です。是非、清き三票をよろしくお願いします。 
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