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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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ゼロ魔編
  034 クスリ、ダメ。ゼッタイ


SIDE 平賀 才人

とある日の夜。特徴的な髪型──ツインテールなドリルテールで、頬にはそばかすを拵えた少女──モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシが俺の部屋を訪ねて来た。……何故かロープでグルグル巻きにされたギーシュ──らしき物体を空中に〝牽き〟連れながら。ギーシュが宙に浮いているのは“レビテーション”の魔法をモンモランシーが掛けたからか。

「モンモランシーか、一体こんな時間にどうしたんだ? まさか逆夜這い──いや、ギーシュ──らしき物体を連れている以上、その可能性は無いか。……いや、ちょっと待てよ? まさか、モンモランシーにそんな趣味が──」

「誰がアンタに夜這いなんかするかーーっ! それに2人を相手になんか出来るかっ!! それに、私にそんな趣味は無いわよっ!」

――スパァァァァァァァァアアンッ!!

訪ねて来たモンモランシーに対して冗談を言った。俺の頭を鋭い痛みを襲う。……因みに、モンモランシーの近所迷惑になるであろう騒音は、既に冗談を言う前の“サイレント”の魔法で対処済みである。

「……モンモランシーにそんな趣味が有るとは思わなかった。……でも、俺にはルイズやユーノが──それに、もう1人の愛すべき女性が居るんだ。そこら辺はどうなん──」

――スパァァァァァァァァアアンッ!!

「しつこいわっ!!」

本日二度目の鋭い痛みが小気味良い音と共に俺の頭を襲う。因みにさっきからモンモランシーが持っているのはハリセンである。……どこでハリセンの事を識ったのかは知らないが、恐らくギャグ補正かユーノの入れ知恵だろうと当たりを付けておく。……公算としては前者の可能性の方が高いとも当たりを付けておく。

「まぁ、取り敢えずは入ると良い」

「判ったわ。お邪魔するわね」

冗談はそこまでにしておいて、話を進める為にもモンモランシーを部屋に引き入れる。モンモランシーはギーシュを俺の部屋へと〝牽き〟入れる。……男子生徒を引き摺りながら違う男子生徒の部屋に入っていく女子生徒…それを客観的に見たら凄くシュールな光景に思えた。

今更ながらモンモランシーの事を呼び捨てにしている理由は本人の希望である。決して〝モンモン〟なんて呼んでない。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……それで? ギーシュを助けて欲しい──と?」

「……そうよ」

モンモランシーの話を纏めると以下の事が判った。

・ギーシュが某かの薬を盛られたのか、おかしくなった。

・ギーシュの症状は惚れ薬のそれに近いらしく、今は薬で眠らせてあるとの事で、このまま放って置いても直ぐに治まる公算は低い。

・解除薬を作るのはモンモランシーでも出来るが、モンモランシーの見立てでは、その解除薬を作るには最高峰の薬の触媒である“精霊の涙”が必要。

・“精霊の涙”は非常に高価だし、市場に回っている数量は少ない。故に“精霊の涙”を手に入れるにはラグドリアン湖に居る水の精霊に会うのが一番の近道。

「……大体こんな感じか?」

「大体合ってるわ」

(うーん、ラグドリアン湖の水の精霊ね。……あ、そういえば“アンドバリの指輪”を返す必要があったな)

俺が淹れたピーチティーを〝この紅茶、不思議な味わいだけど美味しいわね〟と暢気に宣っているモンモランシーを尻目に、俺もラグドリアン湖の水の精霊に用が有ったのを思い出した。

水の精霊に、オリヴァー・クロムウェルによって盗まれた“アンドバリの指輪”を返却する必要があるのだ。“私のかわりはいくらでも(マイオルタナティヴ)”…バックアップをとるスキルで〝バックアップ〟も取った事だし、オリジナルには大した必要性は感じない。

……バックアップをとった理由何となく役に立ちそうと云った理由で、他意は〝あんまり〟ない。……“アンドバリの指輪”…俺が使う日が来ない事を切に願うばかりである。

閑話休題。

「ギーシュが今朝の朝練に来なかった理由察した。……でだ、モンモランシーは一体俺に何を頼みたいんだ?」

そもそも、いつまで経っても来ないギーシュに違和感を持っていた。……普通なら、〝特訓〟なんて苦行からからは逃げたくなるだろうが、ギーシュは〝ほぼ〟──休日や体調不良を除いた日は毎日特訓に参加していた。……ギーシュの惨状を見て、ギーシュが今朝来れなかった理由は納得した。

「サイトにはラグドリアン湖までのボディーガードとギーシュの監視を任せたいの」

「……それだったら、ギーシュを学院に置いてけば良くないか?」

モンモランシーは俺の提案に首を横に振る。

「……そうしたいの山々なんだけど、それはそうもいかないのよ。今のギーシュは私が居ないと発狂するようだし。……はぁ、ままならないものね、色々と」

(……ん?)

ふと感じる違和感。〝普段〟のモンモランシーなら口調はともかくとして、ギーシュの事を〝心配〟するはず。……だから、この〝後悔〟に似た感情はおかしいはず。

(もしかして──)

……自分だけで考えていても仕方がないので、そこで俺は、1つモンモランシーにカマを掛ける事にした。……まぁ、一口に〝カマを掛ける〟とは云っても至極簡単な──それこそ児戯レベルでしかないのだが。

「時にモンモランシーよ、俺の記憶が正しければ精神や心に著しい影響を及ぼすタイプの薬や魔法は法によって固く禁じられたよな?」

「っ!? ……そうヨ? それがどうかしたのかしラ?」

モンモランシーが一瞬だけ顔を強張らせたのを見逃さなかった。……無論、語尾が裏返っていて、判りやすい程に動揺している事も気が付いている。

「さて、モンモランシー? 俺もちょうどラグドリアン湖に用が有ったからラグドリアン湖に行っても構わない。……でも、それはギーシュがどうして〝こう〟なったかを〝全部〟教えて貰ってからでも遅くは無い」

「う゛っ! …判ったわよぉ……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラグドリアン湖が在るド・モンモランシに向かう馬車の中。その馬車の中には俺、モンモランシー、薬によって眠っている──眠らされているギーシュが居る。

(いやはや、やはりと云うべきか……)

モンモランシーから聞いた話を自分なりに纏めてみると、非の割合は50対50でどっこいどっこいだった。……否、ご禁制の薬を使っている以上、60対40でモンモランシーに非が有った。……いくらギーシュが浮気性だとは云え──いくら彼女だとは云え、ギーシュの心を弄くって良い理由にはなり得ない。……尤も、彼女──モンモランシーが居るのにも拘わらず、他の女の子に鼻を伸ばすギーシュもギーシュだが。

モンモランシーはギーシュに惚れ薬を飲ませる事に成功した。……薬が〝効きすぎた〟事に目を瞑ればだが。……どうしていいか判らなくなってしまったモンモランシーは、俺がトリスタニアに在る薬屋に居た事を思い出して俺を頼って来たらしい。

「っと、着いたか?」

「ええ着いたわ。ここラグドリアン湖よ」

「……おお、綺麗だ。流石はハルケギニア1の名勝と言われるだけはあるな」

馬車から出たら、直ぐそこにラグドリアン湖が見えた。琵琶湖程の大きさの湖は正に〝圧巻〟の一言で、かの名俳・松尾 芭蕉が松島の句を詠んだ時の気持ちが何となく判った気がした。

「おかしい。こんなに水嵩は無かったはず──ま、良いわ。行くわよ、サイト」

「……? はいよ」

モンモランシーは訝し気な顔をしながら俺を急かし、ギーシュを“レビテーション”で浮かして牽引する。道中、ずっとモンモランシーの膝枕だったので、ギーシュは心無しか嬉しそうな笑みを浮かべている。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

時は移ろって夜。双月から降り注ぐ光がラグドリアン湖の湖面で乱反射し、それはそれは幻想的な雰囲気を醸し出している。

「食わないの?」

「食べるわよ。……にしても、こんな食料を一体全体どこから出したのよ」

無論、〝倉庫〟である。

「ごめんなさい。……私がギーシュに惚れ薬なんか盛らなければ、こんな事には……」

「……構わないよ。ギーシュは一応だが、友人だからな。キッチリ報酬も貰うし」

「判ってるわよ……」

結果から云うと、水の精霊から“精霊の涙”は貰えなかった。……が、俺達の──荒事らしい上にギーシュは動けないので、俺の働き次第では分けてくれるらしい。……依頼は賊退治。

現在は夜に来るらしい賊を待ち伏せしている。

「……それにしても、湖底にいる精霊を攻撃するなんて…相当な使い手よ」

「言えてるな、それは。少なくともドットやラインのメイジじゃない事は確かかもな」

下手すれば、スクエアの可能性も視野に入れて、〝外套〟を纏う事も考えておく。

「……で、そんなメイジに勝てるの?」

「……やり方はいくつかある──む、来たようだ」

(……どうやらダブルブッキングしてしまったようだ)

モンモランシーが心配する様な声音で訊いてくる。俺はすげなくモンモランシーの質問をかわそうすると、探知範囲内に2つの〝識っている〟気配が入ってくるのを感じた。

SIDE END
 
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