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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
  第31話 修行メニュー




「さて、これより各自の修行メニューについて説明します」

「ちょっと待ちなさい」

 全員がリビングに揃い、各自の修行することについて説明しようとしたら部長が待ったをかけた。

「なんですか部長?」

「なぜあなたが仕切っているのよ。その役は部長でありあなた達の主である私の役目でしょう」

「……では部長、部長はどのような修行方法を考えていたんですか?」

「今回は主である私と悪魔の先輩である朱乃と祐斗を教師役としてあなた達新人を鍛えるつもりだったわ。具体的には私があなた達の基礎トレーニングを、朱乃には魔力の運用法を、祐斗には実践訓練を受け持たせるつもりよ」

 この言葉を聞いて私は少々呆れた。多分黒姉たちも同様だと思う。今回一番訓練しなければならないのは私達ではないというのに……

「あの、それだと部長たちはいつ修行するんですか?」

「私達の分は後回しよ。まずはあなた達をライザーたちと戦えるまでにしないと。あなた達姉妹はある程度戦えるでしょうけどイッセーたちは鍛えないと無理よ」

 まあ確かにそれは一理あるわね。横を見ればイッセーも頷きづつやる気を見せてるわ。……でも部長の案には致命的な欠点があるわね。

「イッセーたちを鍛える点においては私も賛成です。ですがそれと同様に部長に朱乃さん、祐斗も鍛えないとダメですよ? 私達姉妹より優先的にです」

 それを聞いた3人は……少し不機嫌そうにしてるわね。

「……それはどういう意味かしら?」

「言葉のままの意味です。はっきり言います。3人は現状私達よりはるかに弱いです。それでもライザーの眷属を相手にするには十分な実力はあるでしょう。でも今のままではライザーには歯がたちませんよ? 部長も分かってるんでしょう?」

 それを聞いた部長は……悔しそうに顔を歪めた。

「否定はしないわ。確かに不死の属性を持つライザーには今の私達では絶望的。でも、だからこそあなた達に危険がないようにしっかり鍛えないと……」

 う~ん、プライドもあるのかな? なかなか私の案を認めてくれないわね。今更私たちは短期で集中的に修行したってたいして変わらないんだけどな。なにせこの数年、毎晩龍巳と実戦形式の組手をしてるんだし。どうやって説得しよう?

「火織お姉ちゃん」

「ん? 何、龍巳?」

「我に任せる」

「?」

「今のみんなの力の強さ、我が説明する」

 そう言うと龍巳はリビングの隅に置きっぱなしになっていた、私達よりもはるかに大きいリュックの中から……超特大ホワイトボードを引っ張りだしてきた。っていうかそんな物持ってきてたの!? 皆もポカンとしてるじゃない! 黒姉も笑ってないで何とか言ってよ! あまりにも荷物が大きいとは思ってたけど……一体あの中他には何が入ってるんだろう?

 そして龍巳はそのホワイトボードを私達の所まで持ってきて、()ではなく()方向に立てると上から何やら数字と名称を書き始めた。……ってこれってまさか?

「ん、書くこと多い。白音、手伝って」

「はい、……でも書くのはいいですけど一体何を書いて…………あ、そういうことですか、分かりました。私は下から書いていきますね。一番下の基準はアーシア先輩ですか?」
「ん、そう。その下の半分のとこに猫」

「分かりました」 


 そう言って白音もホワイトボードに書き始めた。そして書き上がってるのを見てると……私の想像通りのものが出来つつあるわね。それを見て黒姉はまた笑いをこらえてるし元ネタが分かるイッセーは私同様頭を抱えてるわね。他の元ネタが分からない皆は引き続きポカンとした表情で……ってなぜかレイナーレまで頭抱えてる? え、もしかしてこれがなんだか分かるの!? ……そういえば龍巳と白音の熱心な布教でレイナーレとアーシアもその道に引きずり込まれつつあるってイッセーが言ってたっけ。じゃあアーシアも……ってこっちは分かってなさそうね。レイナーレのほうが染まっちゃってるのかしら?

 そして数分後、龍巳と白音は時々相談しつつホワイトボードにそれを書き上げた。そこには私の想像した通りのものが少し形を変えて存在していた。

「ん、完成。これが皆の強さ」

 そこにはこんなふうに書かれていた。

―――――――――――――――――――――――――――
8000 グレイフィア・ルキフグス












1500 イージス艦





800 下位龍種(フレイムドラゴンなど)
650 リアス・グレモリー
500 平均的上級悪魔
450 姫島朱乃

350 木場祐斗
300 平均的中級悪魔
200 戦車
100 上位の下級悪魔

80 レイナーレ
50 平均的下級悪魔
10 兵藤一誠

2 平均的人間
1 アーシア・アルジェント
0.5 ネコ
―――――――――――――――――――――――――――

 予想通り、某筋肉達磨の頭の悪そうな強さ早見表だったわね。まあ皆の強さは大体合ってるからいいかな?

「龍巳ちゃん、これが私達の今の強さなのですか?」

「そう、これはただ単純に戦闘能力のみを数値化したもの。だから相性によってはひっくり返る。でもだいたいこんなもの」

「……まあ私の見る限り妥当だと思うわ。でも間に変なものが混ざってないかしら」

「ん、これは形式美というもの」

 そう言った龍巳の隣でも白音がうんうんと頷いてるわね。

「っていうか俺は部長たちが戦車より圧倒的に強いって点に驚きなんだが。それに比べて俺は……分かっちゃいたけど本当に人間に毛が生えた程度だな」

 あ、イッセーが落ち込みだした。

「イッセーさんはまだいいじゃないですか。私なんて悪魔なのに人間さんより弱いです……」

 その隣ではアーシアまで落ち込み出しちゃったわね。一応フォローしておきましょうか

「アーシアは落ち込む必要ないわよ。あなたの持つ聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は戦闘力を補って余るほどなんだから。無理に戦闘力を伸ばす必要はないわ。それにイッセー、あなたのこの数値もそこまで気にする必要はないわよ。これは素のイッセーの戦闘能力なんだから。でしょ、龍巳?」

「え?」

「そう、これ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使わないイッセーの強さ。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)使ったらこの数値が倍加する。30秒力溜めれば数値上はレイナーレと同等」

「な、なるほど、そうなのか。そういやレイナーレも数値は平均的下級悪魔よりかは結構高いんだな」

「まあ私は昔から光力だけは他の下級堕天使に比べたら強かったから……。でもこの表見せられたらあまり喜べないわよ」

「だよな。朱乃さんや木場は同じ下級悪魔とは思えないぜ」

「まあ僕たちは悪魔になって長いからこれまで幾つか実戦もこなしてるし、少しは修行とかもしてきたしね」

「そうですわね。それに私は……」

「? どうしたんですか朱乃さん?」

「い、いえ。なんでもありませんわ」

「?」

 朱乃さんが急に言葉を濁らせたわね。イッセーたちは朱乃さんの態度を不審がってるけど……大方父親のことを思い出させちゃったかな?

「あの、部長さん」

「何かしらアーシア」

「一番上に書いてあるグレイフィアさんって昨日部室にいたメイドさんなんですよね? あの方はこんなに強いんですか?」

「あ、それ俺も気になってました」

「ええ、昨日もライザーとの話の途中で言ったかもしれないけれど彼女は兄の、魔王ルシファー様の女王(クイーン)なの。加えて最強の女王(クイーン)と言われているわ。このくらいの数値は当然でしょうね」

 その言葉にイッセーたちは驚きとともに感心したような声を出した。まあ現段階では完全に雲の上の人だものね。

「で、現状の私達の強さは分かったわ。それで肝心のあなた達の強さ、そしてライザーの強さはどのくらいなの?」

「ん、こんな感じ」

 そして龍巳は私達とライザーの強さを表に書き込んだ。

―――――――――――――――――――――――――――
8000 グレイフィア・ルキフグス







3200 ライザー・フェニックス

2200 神裂龍巳
1900 神裂黒歌、火織、白音

1500 イージス艦





800 下位龍種(フレイムドラゴンなど)
650 リアス・グレモリー
500 平均的上級悪魔
450 姫島朱乃

350 木場祐斗
300 平均的中級悪魔
200 戦車
100 上位の下級悪魔

80 レイナーレ
50 平均的下級悪魔
10 兵藤一誠

2 平均的人間
1 アーシア・アルジェント
0.5 ネコ
―――――――――――――――――――――――――――

「「「「「「な!?」」」」」」

 その表を見た時皆は一斉に驚愕の表情で声を上げた。

「ちょ、ちょっと待て! あの焼き鳥、そんなに強かったのかよ! イージス艦二隻分ってどんだけだ!? あいつだってくくりとしては上級悪魔なんだろう!?」

「待ってくれイッセーくん! 確かに想定外の強さだけどフェニックスであることを考えればそのことにも納得はいく! むしろ今真に驚くべきは彼女たちの数値の方だよ!」

「ええそうね。龍巳、流石にあなた達のその数値は納得出来ないわ。確かにあなた達の強さは先日見て私達と同等かそれ以上だとは思ってたわ。でも流石にこれは納得出来ないわよ」

 ん~、まあ確かに今までちゃんと戦ってる姿は見せたことなかったし納得はできない……のかな? でも実際この数値は龍巳はかなり控えめに書いてるんだけどな。私や黒姉、白音は多分実際の数値の半分くらいに書かれてるし、龍巳の数値なんて本当のことを書こうとしたら遥か空のかなたの高さに書かなきゃいけないしね。

「ん、これ本当。信じれない気持ちも分からなくない……けどこれが真実」

「……」

 納得出来ないって顔ね。それは朱乃さんや祐斗も同様。このままじゃ話が進まないし、しょうがない、ここは……。

「分かりました。じゃあ後で模擬戦でもしましょう。その結果を見て私達の強さを判断して下さい」

「……分かったわ。ではそうすることにしましょう。この表が正しければ確かに鍛えるのは私達になりそうね。……では火織、仮にこの表が正しくて、あなた達が教師役をするとして、どういった修行を私達にさせるつもりだったのかしら?」

 ふむ、暫定的にではあるけれど一応納得してくれたみたいね。じゃあ考えてきたメニューを発表しましょうか。私は強さ表の書かれたホワイトボードを裏返し、そこに修行内容、教師、生徒を書き始めた。

―――――――――――――――――――――――――――

  
修行内容 基礎体力トレーニング
教師 白音
生徒 リアス、朱乃、祐斗、一誠、レイナーレ



修行内容 剣術稽古
教師 火織
生徒 祐斗、一誠



修行内容 魔力運用
教師 黒歌
生徒 一誠、アーシア



修行内容 実戦組手
教師 龍巳
生徒 リアス、朱乃、レイナーレ

―――――――――

その他特別メニュー

参加者 リアス







―――――――――――――――――――――――――――

「と、まあこんな感じです」

 私は書き終わるとそう言いつつ皆の方へ振り返った。皆の反応は……納得するものから眉をひそめるものまで様々ね。予想通りといえば予想通りだけど。

「火織、一つ一つ質問してもいいかしら」

「ええ、どうぞ」

「まず基礎体力トレーニングは……アーシア以外の全員が受けるのは納得するとして、アーシアが魔力運用のみとはどういうことかしら?」

「まずアーシアのこれまでの生活や性格を考えて戦闘はまず無理です」

「はぅぅ、すみません」

「いいのよアーシア。で、その代わりにアーシアには回復の一点のみを伸ばしてもらいます。具体的に言うと回復スピードにおいては既に一級品ですから今度は対象に触れず遠距離の相手も回復できるようにしてもらいます。この10日で出来るようになるかは分かりませんけど、今後のためにもここでしっかり魔力運用について学んでもらおうと思います」

「なるほど、確かにそうね。その点は私も賛成するわ。では次に祐斗と一誠があなたに剣術の稽古を見てもらうのはいいとして、実戦組手の方には参加しなくていいのかしら?」

「ああ、そこは問題ありません。教師が私か龍巳かの違いのみで実際は両方共実戦を想定した模擬戦を連続して行うだけですから。それと同時に私の方は剣の扱いを重点的にやる程度です。そもそも私の稽古の後龍巳の実戦組手までこなせるほど体力を残す気はありませんから」

 私が笑顔でその言葉を言った途端、一誠と祐斗は絶望したような表情を浮かべたわね。一方部長と朱乃さん、レイナーレは気の毒そうに2人を見つつ、そっちに行かなくて良かったとでも言いたそうな安心した表情を浮かべた。

「……言っておきますけど部長、それと朱乃さんにレイナーレも。龍巳のトレーニングは私とは比にならないくらい厳しいですからね」

「ん、我、全力で鍛える。気を抜いたら死ぬかもしれないから気を付ける」

 あ、その言葉を聞いた途端3人とも一気に落ち込んだ。特にレイナーレが酷いわね。

「ま、まあそれもあなた達がさっきの表通りの強さだった場合よね。絶対誇張しているでしょうし、問題無いわ」

 部長が何とか立ち直って言っているけど若干手が震えてますよ? うーん、ここでさらに追い打ちをかけないといけないとなるとちょっとかわいそうね。だってまだ部長にはもう1つメニューが残ってるんだもん。

「で、火織。一番気になってた私が受ける特別メニューって何かしら?」

「それについては今から説明します。物を持ってくるんでちょっと待ってて下さい」

 そう言うと私は自分のあてがわれていた部屋に戻り、既に運び込まれていたものを乗せてあった台車ごとリビングへと運び込んだ。

「火織、それって何だ? 何か変な金属プレートに見えるんだが」

 私が持ってきたものを見てイッセーは疑問な声を上げた。そしてそれにはこれが何なのかもちろん知っているであろう部長が答えた。

「イッセー、これは冥界の記録メディアよ。人間界で言うDVDみたいなもの。このプレートを火織が一緒に持ってきたあの映写機みたいなもので映すのよ。……でも随分とメディアの数が多いわね。それに映写機まで2台もあるし。火織、そのメディアには何が入っているの?」

「これは過去のレーティングゲームの記録映像です。その中でも特に名勝負と呼ばれる勝負、戦略で格下が格上を下した勝負を中心にグレイフィアさんに昨日頼んで用意してもらいました。部長にはこれ全部に目を通してもらい、最終日に幾つかピックアップしてプレゼン発表してもらいます」

 そう、昨日ライザーが帰った後私はこれを合宿先へ持ってきてもらうよう頼んでおいたのよ。これだけの数を一晩で用意するってさすがよね。魔王の女王(クイーン)っていうのは伊達じゃないみたい。

「こ、これを全部!? さ、さすがにこの数は……。こ、これ一体何時間分あるの?」

「えーと、グレイフィアさんの残してくれたメモによると全部で96試合、合計331時間あるそうです」

「331時間!? そ、それを10日で見るのはいささか無理がないかしら?」

「大丈夫ですよ。そのために映写機を2つ用意してもらったんじゃないですか。同時に2試合見ればかかる時間は半分です。それに見るのは個々の戦術ではなくチーム全体の戦略ですからね。等速で見る必要はないですし、すべての試合を倍速で見ればかかる時間はさらに半分です。そうすれば……1日8時間くらいで全てに目を通せますよ」

 私は笑顔で以上のことを言うと……なんか部長は魂が抜けそうな顔をしてるわね。周りの皆も顔がひきつってるわ。でもこれも部長が勝つためだし頑張ってもらいましょうか。

「えぇと、火織ちゃん? これで説明は終わりかしら?」

 部長はまだ放心したままなので朱乃さんが聞いてきた。

「実はあと1つ、皆にやってほしいことがあります」

 そう言って私はつま先を上げると、トンッと床を軽く叩いた。すると私の影が少し広がり、ズズズズ……と同じ拵の大太刀が5本現れた。

「火織ちゃん、この刀は?」

「この刀は私の創れる氷結系の能力を付与したものの中でも最強の魔剣、名を氷輪丸です」

 そう言って私は創りだした氷輪丸の一本を手に取る。

「今回の敵のライザー・フェニックスは炎使い、おそらく眷属にも炎の加護を受けた炎使いがいるでしょう。ですからみなさんには敵の弱点となるこの刀の能力使用を練習してもらいます。まあでも自分の戦闘スタイルを捨ててまで使用するものでもないんで、戦闘時の補助程度に考えてください」

「でも火織さん、氷系の能力を付与した魔剣なら僕も創れるんだけど」

「ええ、そうですわね。それに私は普段魔力を用いて戦いますが、相手が炎使いなら魔力を氷に変えて攻撃することもできますわよ? まだ上手に魔力を練れないイッセーくんやアーシアちゃんならともかく、私達には必要ないのでは?」

「いやまあそうなんですけど……あの、気を悪くしないで聞いてくださいね?」

 一応そう前置きする。だって今から言うことって事実だけど言われた方はあまりいい気はしないだろうし。なんか今更な気はするんだけどね。

「まず祐斗の方なんだけど、祐斗が同じ氷結系の魔剣を創ったとしても多分この氷輪丸の方が圧倒的に性能が上なのよ。で、朱乃さんの方なんですけど、この氷輪丸は魔力を込めることで能力が発動するんですけど、同じ大きさの魔力なら朱乃さんが自ら攻撃するより氷輪丸に込めて攻撃したほうが攻撃力は多分上です」

 そう私が言うと……ああ、やっぱり2人共不機嫌に。気持ちは分かるけど事実なんだからそんなに睨まないで。

「さすがにそこまで言われると……」

「ええ、そうですわね」

 うあ~、2人の目がやばい。すると復活した部長が提案してきた。

「火織、そこまで言うならその刀で模擬戦をしてみてちょうだい。朱乃と祐斗の2人相手に。そこまで言い切ったのだから出来るでしょう?」

「……はい、分かりました」

 うぅ、皆のため思って言ってるのにこれじゃあ私が悪者……。

 そういったわけで私と朱乃さん、祐斗の模擬戦が決まった。


 
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