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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
  第27話 来襲




「イッセー、私を抱きなさい」

「……いきなり現れて何言ってるんですか部長?」

 ってちょっと待て!? つい冷静に返してしまったけど今部長とんでもないこと言わなかったか!? と、とにかく落ち着け。毎度のことだけどとにかくまずは状況確認だ。

 まず今日一日はいつものように何も変わりなく過ごした。皆で学校行って授業受けて剣道部行った後オカ研行って一度飯食いに帰った後またオカ研行って悪魔の仕事して終わったら帰って来たんだ。ここまではいつも通り。いつもと違うとすれば今日ついにミルたんと会うんだと松田と元浜が息巻いていたことくらいだ。

 ……死ぬなよ、松田、元浜。

 で、帰ってきた後先にアーシアとレイナーレに風呂入らせたから上がるまで俺はベッドに横になって火織に借りたラノベを読んでたらいきなり魔法陣が現れて、部長が現れたと思ったらさっきの言葉だ。うん、落ち着いて考えてもなんでこんなことになったかさっぱり分からん。

「イッセー、これは冗談ではないわ。早急に私の処女を奪ってちょうだい」

 そう言って部長は俺をベッドに押し倒した。ってちょっと待って!?

「ほら、早く服を脱いで準備なさい。私も脱ぐから」

 と、部長は俺を急かしながら俺にまたがって服を脱ぎだした!? ちょっ!? 何これ!? 何なのこれ!? と、とりあえずここは黒歌姉たちに救援を……! そう思った俺は枕元においてあった携帯に手を伸ばすけど

「お願い、やめて! それだけは本当に!」

 その手は部長に止められた。っていうか涙目で必死に携帯を掴んできた。そんなに黒歌姉たちが怖いのか? って怖いよね。俺も怖い。っていつの間にか部長がもう下着姿に!? 早くないですか部長!?

「ぶ、部長! これは一体!?」

「イッセー、私じゃダメ?」

「ぶ、部長は素晴らしい女性です! ダメってことは! で、でも、それでも俺には!」

「さんざん考えたのだけれど、もうこうするしかないの。既成事実を作ってしまうしか。そうすればもう文句もないはずなのよ。身近で作れそうなのはあなたしかいないわ」

「み、身近には木場も!」

「……祐斗は無理よ。彼は心のそこからナイトなの。絶対に拒否するわ。あなたの気持ちは知ってる。でも、それでも私にはイッセーしかいないの。分かってちょうだい」

 って部長俺の気持ち知ってるの!? え、何!? もしかして俺の気持ちって周囲にだだ漏れですか!? 松田と元浜も知ってたし黒歌姉にも見破られてたし、もしかして龍巳や白音ちゃんにも知られてるんじゃないだろうな!?

「……まだ足りない部分もあるけれど、素質はあるものね。それに数分で既成事実を作ってくれるのなんてあなたぐらいだもの」

パチン

 そう言って部長はブラを取り払った。うあ、部長の生乳見るのは2度目だぜ。あ、相変わらず大きくて綺麗な生乳だ。前はゆっくり見る余裕がなかったけど……って今もゆっくり見れる状況じゃないだろ!

「イッセーは初めて? それとも黒歌たちと経験が?」

「は、初めてですよ!」

「そう、私も初めてだから難しいと思うけどお互い頑張りましょう。私のここにあなたのを入れるだけだから仕組みは簡単よ」

 そう言って部長は俺の手を取り自分の胸に触らせた。こ、これが本物の生乳の感触!!

ブバッ!

 や、やばい。初めて触るおっぱいの感触に鼻血が! これじゃあまた気絶……ってここは素直に気絶しておいたほうが正解か!?

「胸の鼓動が分かる? 私も緊張しているの」

 た、確かに今も揉み続けてる部長の胸からはドクンドクンと高鳴りが伝わってくるけど……って俺いつの間にか部長のおっぱいを揉みしだいてる!? か、完全に無意識だったぜ! っていうか止めようと思っても右手が勝手に動いて止まらない!? 見れば部長も顔を赤くして息を荒げてる! そんな部長はしびれを切らしたのか俺の服を胸を揉まれながら脱がせだした。

「で、ですけど! それでもやっぱり俺は……!」

 俺には火織が!

「ここまでして、私に恥をかかせるの?」

プツン

 あ、もう無理。もう我慢できない! ごめん火織! こんな泣きそうな、可愛い顔でこんな事言われたら俺……!

「部長!」

 そう叫んで俺は上半身を起こし下着一枚の部長に抱きついた。ここまで来たら俺だってもう! と、思った時再び部屋に魔法陣が輝きだした。それを見た部長は嘆息する。

「……あと一歩、遅かったわね」

 そして部長が俺と離れると同時に、魔法陣から一人の若い銀髪の美人なメイドさんが現れた。……ってメイドさん?

「こんなことをして破談にしようとしたのですか? 下賎な輩に操を捧げられては旦那様もサーゼクス様も悲しまれますよ?」

「こうでもしないと、お父様もお兄様も私の意見なんて聞きもしないでしょう? そして私の貞操は私のもの。私が認めた者に捧げるわ。あの男ではなくね。それに、私の可愛い下僕を下賎呼ばわりなんて、あなたでも怒るわよグレイフィア」

 部長は俺のために怒ってくれてるけど……冷静になって今までの会話を振り返るともしかして俺部長に利用されそうになってた?

 一方グレイフィアと呼ばれたメイドさんは脱ぎ散らかされた部長の服を拾い集め上着を部長の肩へかけた。

「何はともあれ、あなたはグレモリー家次期当主なのですから殿方へ肌を晒してはなりません」

 そしてメイドさんの視線が俺に移ると途端に頭を下げた。

「初めまして。私はグレイフィアと申します。グレモリー家に仕えています。以後、お見知りおきを」

「は、はあ」

「グレイフィア、あなたはあなたの意志でここに来たの? それとも家? それともお兄様かしら?」

「全てです」

「そう。兄の女王(クイーン)であるあなたが来たのだからそうよね。分かったわ」

 そう言って部長はベッドから降り服を着始めた。

「ごめんなさいイッセー。ここまでさせておいて悪いのだけれどお互い今日のことは忘れましょう。私も少し冷静ではなかったわ。……それからくれぐれも今日のことは黒歌たちには内緒よ」

 あ~、確かにこのこと黒歌姉たちに言ったらまた部長は追いかけられるだろうな。話の流れで俺の理性も一時的とはいえプッツンしちまったことがバレたら俺もどうなるか。……うん、絶対このことは黙っとこう。

「イッセー? まさかこの方が?」

 ん? グレイフィアさんが俺のこと驚愕した表情で見てきたんだけど。

「ええ、私の兵士(ポーン)であり赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の使い手、兵藤一誠よ」

「……赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)、この方が龍の帝王に憑かれた者。……ではこの方の守護者という方々も」

「ええ、隣の家にいるわ」

 な、何だ? 突然グレイフィアさんが俺を異質なものを見るような目で見たかと思うと今度はベランダの向こうに見える火織たちの家の方を睨むようにして見始めたぞ? それに守護者って……火織たちのことか?

「グレイフィア、とりあえず学校の部室へ行きましょう。話はそこで聞くわ。朱乃も一緒でいいわよね?」

「雷の巫女ですか? もちろん構いません。 上級悪魔であれば女王(クイーン)をそばに置くのは当然です」

「よろしい。イッセー」

 部長が俺を呼ぶ。おもむろに近づいてくると

チュッ

「!?!?」

 ほ、ほっぺに……キスされたあああああああああああ!?

「今夜はこれで許してもらえるかしら? 迷惑料よ。明日、また部室で会いましょう」

 そう言うと部長はグレイフィアさんと一緒に魔法陣でどこかへとジャンプしていった。い、一体何だったんだ? なんかよく分からないけどすっげー惜しいことしたような……って俺勢いで部長を抱きかけた!? お、俺は一体何をしてたんだ!? 俺には火織という心に決めた人がいて、さらに今まで黒歌姉や龍巳、白音の誘惑にも耐えてきたってのに! これじゃあ火織どころか黒歌姉たちにも顔向けできねえじゃねえか!!

 俺は自分の理性の不甲斐なさに壁に頭を打ち当て続けた。

「イッセーさん、お風呂上り……って何やってるんですかイッセーさん!?」

「ちょっ!? 今すぐやめなさい! 血が出てるじゃない!」

 それはアーシアとレイナーレが俺を呼びに来るまで続いた。







   ☆







 ふう、どうやら部長とおそらくグレイフィアさんは帰ったわね。やっと私は安心して肩の力を抜き目の前に視線を送る。そこにはイライラした様子で座り込んでいる黒姉、龍巳、白音が。イッセーの部屋に部長の気配が現れた途端3人揃って突撃しようとしたもんだからなんとか言葉で言いくるめて3人を足止めした。ここで突撃してグレイフィアさんと鉢合わせになったら下手すると戦争になりそうだし。龍巳がいる時点で負けはないけど戦いになったらこの辺り消し飛びそうだしね。

「ね? だから言ったでしょう? 多分何も無いよって」

「……確かにそういうことをしてる気配はにゃかったけど」

「何があったか気になる」

「それは明日会って聞きましょう? 夜這いかけたというより多分面倒事だろうし」

「はい、途中で現れた大きな気配が気になります」

「龍巳、後から現れた悪魔、どのくらい強いにゃん?」

「多分お姉ちゃんたちより強い。3人でかかっても勝てるかどうか」

 その言葉に黒姉と白音は驚いていた。まあ流石に魔王級の悪魔にはまだまだ届かないよね。

「でも火織お姉ちゃん、全力全開なら勝てる……と思う」

「う~ん、でも私の場合全力全開の力使った時点で負けだと思うのよね。周りの被害が半端なくなるし」

「そうですね。火織姉様の全力全開を使われたらこの街が踏み潰されちゃいます」

「まあ考えるのは明日にして今日は寝ましょう。明日も早いし」

「ん、そうする。火織お姉ちゃん、今日一緒に寝ていい?」

「私は黒歌姉さまと寝たいです」

「もちろんいいにゃ」

「私もいいけど……あんた達もう高校生なんだから1人で寝れるようになりなさい?」

「……ダメ?」

 ああもうそんな目をうるうるさせないでよ。はあ、私もいつの間にか黒姉みたいにシスコンになっちゃったのかな? 私は観念して今日は龍巳と一緒の布団で寝た。







 次の日私たちはいつも通り兵藤家で朝ごはんを食べた後連れ立って学校へ向かった。昨日の夜のことについて皆イッセーに聞きたそうにしてたけど朝は時間がないということで放課後オカ研の部室で聞くことになった。部長もそこにいるしね。

 というわけで微妙にギスギスとした雰囲気のまま通学路を歩いてるんだけど……何か後ろから良くないものがとんでもない速さで近づいて来てるわね。私がなんだろうと思い後ろを振り向いた瞬間

「イッセェェェェェェェェェェェェ!!」

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ぶげぁ!?」

 松田と元浜がイッセーに後ろから殴りかかるところだった。あ~、そういえば昨日こいつらミルたんに会ってきたんだっけ?

「ふざけんなよこの野郎!!」

「イッセー! お前って奴は! お前って奴は!!」

 私血の涙って初めて見たわ。

「な、なんだよ一体!?」

「決まってんだろ! なんだよあれは!? どう見ても格闘漫画に出てきそうな漢じゃねえか! しかもなんでピッチピチのゴスロリ服着てんだ!? 最終兵器か!?」

「しかもお前! お友達とか言いながらミルたんと同じようなのが複数集まってきたんだぞ!? 死ぬほど怖かったよ!」

 あはは、災難だったわね2人共。……ってあれ? 複数? ……もしかして

「ねえ龍巳、あんたミルたんに今まで何匹蛇あげたの?」

「え? 確か……12匹? ……あ」

「つまりあんなのがダース単位でいると」

 それを聞いた瞬間龍巳は震えだして私に抱きついて胸に顔をうずめてきた。12人ものミルたんを思い浮かべた途端怖くなったんだろうね。最初の1回以降ミルたんは蛇を受け取ってもその場で飲まなかったって話に聞いた時から変だとは思ってたけどこんな真相があったとは。ダース単位のミルたんか。……考えただけで身の毛がよだつわね。

「っていうか火織嬢も酷ぇよ! 乙女って言ってたじゃねえか!」

「ええ、言ったじゃない、凄まじい漢女(おとめ)だったって」

 そう言って私は空中に指で二人に分かるように漢女(おとめ)と書いた。

「絶望した!」

「火織嬢、絶対分かってて言っただろう!」

「延々と魔法世界について語られんだぞ! なんだよ『魔法世界セラピニア』ってよ!? そんなの知って何になるんだよ!?」

「しかもあいつら『禍の団(カオス・ブリゲード)』とかいう悪の組織と戦ってるとか言ってその武勇伝ずっと語られたぞ!? あいつらこそが実は犯罪集団なんじゃねえだろうな!?」

 ……今なんか聞き捨てならないようなセリフを聞いたような気がしたんだけど……うん、私は何も聞かなかった!!







   ☆







 今私と龍巳姉様は漫研の部活が終わった後剣道部にお兄ちゃんを迎えに行ってそのままオカ研の部室に向かってます。本当は一緒に火織姉様も誘ったんですけど火織姉様は差し入れを買ってくるから先に行くよう言われました。火織姉様はよく部活にいろんなお菓子なんかを差し入れで買ってきてくれます。買ってきてくれるものはみんな美味しいのでオカ研メンバー全員に好評です。

 そして3人で旧校舎まで来た時に気付きました。昨日お兄ちゃんの部屋に現れた悪魔が部室にいます。龍巳姉様も気付いているようです。お兄ちゃんは……気付いていませんね。当然ですけど。

 そして私達が部室に入ると私達と火織姉様以外のメンバーはもう集まっていました。そして強い気配の正体は……メイドさん? すごい美人なメイドさんがいました。なんかこのメイドさん昔やってたゲームのキャラに似ていますね。

 部屋の中の雰囲気はかなり悪かったです。部長と朱乃先輩、祐斗先輩は厳しい表情をしていて、アーシア先輩はオロオロしています。レイナーレ先輩はそんなアーシア先輩の肩を抱いてメイドさんを睨んでます。なんというかレイナーレ先輩ってアーシア先輩に対して過保護ですよね。ってあれ? 黒歌姉様は? ……いました。1人我関せずといった感じで日の当たるソファーの上で寝っ転がっています。これでは日向ぼっこをする猫みたいですね……って私達猫でした。

「あら? イッセー、火織はどうしたの?」

「火織なら今日も差し入れを買いに行きました」

「そう、それは連絡をしなかった私のミスね。全員揃ってないけど、先に始めましょうか。今日は皆に話があるの」

「お嬢様、私からお話しましょうか?」

 今の言葉から察するにこのメイドさんは部長の家のメイドさんですか? ……メイドさんに(かしず)かれるって憧れるものがありますよね。隣を見れば龍巳姉様も部長を羨ましそうに見ています。

「いえ、私から話すわ。これは私の問題だもの。皆、実はね」

 と部長が話し始めた瞬間床の魔法陣が光り始めました。描かれた紋章は……グレモリー家のものではない?

「……フェニックス」

 祐斗先輩がそう漏らしました。フェニックスってことはどこかの貴族様でも来るのでしょうか? そして魔法陣から人影が現れ、炎が巻き起こりました。……この転移してくる人は何を考えているんでしょう? 私は黒歌姉さまと一緒に仙術で私達オカ研メンバーとついでにメイドさんの周りだけ薄い霧を発生させ熱がこちらに伝わって来ないようにしました。メイドさんが驚いたような表情でこっちを見てますけど今は無視です。そして炎が消えるとそこには一人の男が立っていました。

「ふぅ、人間界に来るのも久しぶりだな」

 何ですか? この出来損ないのホストみたいなのは? 赤いスーツに胸までシャツを開けています。顔は……イケメンの部類なんでしょうけどどう見ても小悪党ですね。キモいです。

「愛しのリアス、会いに来てやったぜ」

 ? この人、部長の恋人? 言っては悪いですが部長も趣味が悪いですね。……ってそうではなさそうですね。部長が半眼で睨んでます。嫌悪感丸出しですし……ストーカー? この人貴族でしょうし……貴族がストーカーですか。世も末ですね。

「さて、リアス。早速式の会場を見に行こうか。日取りは決まってるし、こういったことは早めがいい」

 ストーカーのくせにもうそこまで脳内で話が進んでるんですか。本格的に気持ち悪いです。あ、ストーカーが部長の腕を掴みました。

「……離しなさい、ライザー」

 部長はストーカーの名前でもちゃんと呼んであげるんですね。グレモリーは情愛が深くて有名らしいですけど情愛をかける所間違ってませんか?

「おい、あんた。部長に対して無礼じゃねえか? っていうかその前に女の子に対してその態度はどうかと思うぞ?」

 あ、お兄ちゃんがストーカーに突っかかっていきました。もっと言ってあげて下さい。

「あ? お前誰?」

「俺はリアス・グレモリー様の兵士(ポーン)、兵藤一誠だ!」

「ふーん、あっそ」

 あ、この人お兄ちゃんの名乗りをどうでも良さ気に流しました。私この人嫌いです。まあストーカーなんてもともと好きくないですけど。

「つーか、お前誰だよ?」

「……あ? リアス、俺のこと下僕に話してないのかよ? っていうか、転生悪魔だとしても俺を知らない奴なんてのがいるのか?」

「話しているはずないでしょう? 必要性がないわ」

「あらら、相も変わらず手厳しいねぇ」

 ストーカーが苦笑いしています。ストーカーのことなんてわざわざ眷属に話さないのは当然でしょう? それとも有名なストーカーなんでしょうか? ……自分で言っててなんですけど有名なストーカーってなんですか? そんな人は牢に入ってるべきです。

「兵藤一誠様」

 あ、メイドさんが話し始めました。美人な人はあまりお兄ちゃんに近付いてほしくないです。

「は、はい」

「この方の名はライザー・フェニックス様。古い純血の上級悪魔であるフェニックス家のご三男であり、グレモリー家次期当主の婿殿であらせられます」

 ……え? それって

「リアスお嬢様の婚約者様です」

「な!? こ、婚y「ストーカーじゃなかったのかにゃ!?」「ストーカーじゃない!?」「ストーカーじゃなかったんですか!?」……え? ストーカー?」

「って誰がストーカーだゴラ!?」

 なんか婚約者さんが炎吹き出して怒ってますけどそうとしか見えませんでしたもん。周りを見てみると私達姉妹とお兄ちゃん以外のオカ研メンバー、それにさっきまで無表情だったメイドさんまで吹き出して肩を震わせていました。やっぱり私達の認識のほうが正しいみたいです。







「……リアスの女王(クイーン)の入れるお茶は美味いな」

「ありがとうございます」

 いつもと違い朱乃先輩が無表情ですけどアレ絶対不機嫌だからじゃなくて笑いこらえてるからですよね? さっきから肩が微妙に震えてますし。一方婚約者さんも一見余裕ぶってますけど怒ってるの丸分かりですね。さっきから手元が怒りで震えてます。そんな婚約者さんの隣には部長が座らされています。嫌々といった感じで顔を背けてますけど、あれも絶対笑いをこらえてるからですよね。たぶん婚約者さんの顔を見たらまた吹き出すと思います。

「いい加減にしてちょ……ぶふっ」

 あ、部長が急に激昂して立ち上がったと思ったら吹き出しました。どうやら婚約者さんが部長にセクハラしてたみたいです。でも立ち上がって婚約者さんの顔を見たら別のことに我慢できなかったみたいですね。それでも少しして落ち着いてきたのかゆっくり話し始めました。立ったまま、相変わらず顔を微妙に背けてますけど。

「ライザー、以前にも言った通りあなたと結婚する気はないわ」

 部長、まだ微妙に声が震えています。落ち着いて下さい。

「……ああ、確かに言っていたな。だがなリアス、君のところのお家事情は切羽詰まっているはずだ。そういうわけにはいかないだろう?」

「それこそ余計なお世話よ。ストーカーに心配されるいわれはないわ」

ピキッ

 あ、婚約者さんの持つカップの取っ手が欠けました。なんかいろいろと言いたそうな顔してますけど怒りで頭が回ってないみたいです。

「家を潰さないためにも婿養子は迎え入れるつもりよ。でもライザー、あなたと結婚する気はないわ。私は結婚したいと思った者と結婚する。旧家にもそのくらいの権利はあるはずだもの」

 確かにそうですね。結婚は自分の好きな人とするべきです。私は部長を応援します。その相手がお兄ちゃんでなければですけど。

「……俺もなリアス。フェニックス家の看板背負ってるだ。この名前に泥を掛けられて引き下がる訳にはいかないんだよ。俺はたとえ君の下僕を燃やし尽くしたとしても君を冥界に連れ帰るぞ」

 そう言って婚約者さんはまた炎を吹き出しながら部長とにらみ合いを始めました。……素でストーカーと間違われるような態度とってる婚約者さんのほうが家の名前に泥をかけているような気がするのは気のせいでしょうか?

 まあこの疑問は後回しにして再度仙術で霧を発生させます。服が焦げて変色したらどうしてくれるんですか。髪も痛んじゃいます。部長と婚約者さんの間まで霧を発生させましたので私達はまったく熱気を感じません。それに気付いた婚約者さんはさらに炎を大きくしましたけど……私達より先に部室が燃え始めましたね。霧を展開していないところのみですけど。そろそろ止めないと旧校舎が火事になっちゃいます。と、そんな時

「お嬢様、ライザー様。落ち着いて下さい。これ以上続けられるようでしたら私も黙っている訳にもいきません。私はサーゼクス様の名誉のためにも遠慮などしないつもりです」

 メイドさんが部長と婚約者さんの間に入って止めました。霧から出てあの熱気を直に浴びてもまったく動じないのは流石ですね。服も燃える気配がありませんし魔力で覆っているんでしょうか? 流石、仕事の出来るメイドさんは違いますね。

 迫力のあるメイドさんの言葉で婚約者さんは炎を収めました。

「……最強の女王(クイーン)と称されるあなたとはことを構えたくないな。バケモノ揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対相対したくない」

 ……この人もなかなか肝が座ってますね。本人を目の前にしてバケモノ呼ばわりですか。こんなに美人なのに。

「こうなることは、旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も分かっていました。これが最後の話し合いの場だったのですが、これで決着がつかない場合のことを皆様方は考慮し、最終手段を取り入れることとしました」

「最終手段? 何かしら、グレイフィア?」

「お嬢様、ご自分の意志を貫くのであれば、レーティングゲームに勝利なさって下さい」

「!?」

 これは驚きです。当分先だと思ってた初ゲームにこんなに早く参加することになるなんて。

「お嬢様もご存じの通り、公式戦は成熟した悪魔しか参加できませんが非公式ならば……」

「身内、もしくはお家同士なら出来ると。まったく、そこまでして私の人生を好き勝手したいのかしら? ……いいわ、ゲームで決着を付けてあげる、ライザー」

 ……まあ当然ですよね。龍巳姉様がいる時点で婚約者さんは勝機がありません。部長はそんなことは知らないでしょうけど、ここで部長が拒否するようなら私達で説得して部長にゲームを受けさせます。こんな絶好なチャンス、見逃す手はありませんから。部長が誰と結婚しようと気にしませんけどさすがにこの人とはないです。部長が不憫すぎます。……グレモリー家の人々はどういう基準でこの人を選んだのでしょう? もし家柄だけなら女として選んだ人を張り倒します。

「へー、受けるのか。俺は構わないぜ? ただ、俺はもちろん既に公式戦に参加してる。今のところ戦績も勝ち星が多い。それでもやるのか?」

「やるわ。ライザー、跡形もなく消し飛ばしてあげる!」

「いいぜ。そちらが勝てば好きにしろ。ただし俺が勝てば即結婚してもらうがな」

 おお、両者睨み合ってます。婚約者さんも結婚したいとは思えないくらいガン飛ばしてます。

「承知致しました。お二人のご意思は確認しました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を取らせて頂きます。よろしいですね?」

「ええ」

「ああ」

「分かりました。ご両家には私からお伝えします」

 メイドさんはそう言うとペコリと頭を下げました。これでゲームが決まったわけですね。修行以外では初めて本気の戦闘が出来そうです。レイナーレ先輩には悪いですが弱すぎてほとんど力を使いませんでしたし。この人さっきレーティングゲームで勝ち星のほうが多いって言ってましたし自分の力量を周りと比べるいい機会です。……ってなんでしょう? 婚約者さんがこっち見て嘲笑を浮かべてます。気持ち悪いです。

「なあリアス。こいつらが君の下僕か?」

「まだ1人来ていないけれどそうよ。それがどうかしたのかしら?」

「これじゃあ話にならないぜ? 君の女王(クイーン)である雷の巫女ぐらいじゃないか? 俺の可愛い下僕とまともにやりあえそうなのは」

 ……私はこの言葉に茫然自失になりました。他の皆はともかく黒歌姉様に私、加えて龍巳姉様なんていう冥界全土を敵に回すこともできそうな戦力相手に本気でそんなことを思ったのでしょうか? いくら気配を誤魔化してるとしてもこれはないです。それにアーシア先輩のような戦闘はできなくても無制限に回復させることが出来る人もいるというのに。おまけにここにいない火織姉様を見もせず評価ですか。こんな相手の戦力を分析できないような状態で今まで勝ててきたというのが信じられないです。それともこの人の眷属はそんなに強いのでしょうか? ってそんな訳ありませんね。私達が相手にならないのであればその人達は皆魔王級になってしまいます。そんなの相手に朱乃先輩だけが対抗できるなんてありえないです。……もしかしてレーティンゲームに参加しているのは皆こんなのなのでしょうか? だとしたらチョロすぎます。

 そんなことを思っていると再度魔法陣が光り始め続々と人影が現れました。

「紹介しよう、これが俺の可愛い下僕達だ」

 ……婚約者さん合わせて15人ですか。こちらと同じくフルメンバーですね。まあこちらの僧侶(ビショップ)の1人は今回も参加しないんでしょうけど。

 しかしこうしてたくさんの他の悪魔と相対してみて龍巳姉さまの言っていることがよく分かりました。龍巳姉様は私たちのことを上級悪魔と相対しても遅れは取らない、むしろ最上級悪魔とも渡り合えると言ってくれていましたが、正直これまでは半信半疑でした。でもこうしてゲームに参加しているプロの方々と相対してみてよく分かりました。婚約者さん以外はまったく脅威に感じません。その婚約者さんだって苦労させられそうという評価です。これを考えるとここまで強くなるまで鍛えてくれた龍巳姉様に感謝ですね。それに……祐斗先輩だってこれなら十分戦えると思いますし兵士(ポーン)相手ならお兄ちゃんでもすぐに戦えるようになりそうです。

 ……それにしても眷属は全員女性ですか。不潔です。でもこういうのお兄ちゃんは羨ましがるのでしょうか? 私はお兄ちゃんの顔を覗き見ます。その顔は……とてもイライラしているように見えました。

「何だ下僕くんその顔は? もしかして羨ましいのか? くく、そうだろうな。お前ではこんなこと一生できまい」

 そう言うと婚約者さんは眷属の一人を抱き寄せキスを始めました。……何をやっているのでしょうかこの人は? そしてその眷属とのキスを終えると今度は別の眷属を抱き寄せキスを始めました。……この人なかなかいい具合に腐ってますね。周りを見ても皆不快そうな顔をしています。でもアーシア先輩だけはレイナーレ先輩に目を手で覆われて見てませんね。

「ぷはっ、どうだ羨ましいだろう」

「……お前、最低だな」

「……何?」

「お前、部長と結婚したいとか言っておきながら部長の目の前で平然と他の女の子にも手を出すとか頭おかしいんじゃねえか?」

「はっ! 醜い嫉妬だな! これが貴族のたしなみというものだ」

「お前が貴族? 笑わせんな。貴族ってのは部長みたいな誇り高く毅然とした人のこと言うんだよ。お前みたいなのはただの種まき鳥、いやフェニックスだから焼き鳥で十分だ」

 その言葉を聞いて婚約者改め焼き鳥さんは今までで一番の憤怒の表情を見せました。

「焼き鳥!? こ、この下級悪魔がァァァァ! 調子こきやがって! 上級悪魔に対しての態度がなってないんじゃないか!? ミラ! やれ!」

 な!? いきなり実力行使ですか!? しかも狙いはお兄ちゃん! ……コロス

 見てみると黒歌姉様も龍巳姉様も今にも飛び出そうとしています。でもそれに反応してメイドさんも飛び出そうとしていますね。さすがにあれは厄介……と思ったら龍巳姉様が標的をメイドさんに変えてくれましたね。じゃあ私と黒歌姉様は遠慮なくお兄ちゃんに危害を加えようとしている棍を持ったミラとかいう命知らずを仕留めましょう。


 
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