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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第1章 動き出す日常と新たな仲間
  第12話 四面楚歌




「ほんとなんであの子はああなのかしら?」

 イッセーに覗きのお仕置きをした後、私たちは3人でマックに行って駄弁ってるにゃん。

「言ってくれれば私のいくらでも見せるのに。今夜裸でベッドに忍び込もうかしら?」

「黒歌姉様、抜け駆け禁止です」

「我も行く。全裸で」

「龍巳姉様もです。2人共はしたないです」

 とは言ってもにゃ~、そこまでしても手を出してくれる気がしないにゃ。だってイッセーは……

「ねえ、今日イッセーが覗いたのってやっぱり火織の着替えが目当てだったのかしら?」

 私の言葉に2人共目に見えて気落ちする。やっぱり考えることは同じにゃね。

「イッセー、我らのこと大事にしてくれる。でも……」

「はい。女の子として見てるのは火織姉様だけです」

 そうにゃんだよにゃ~。もうこの話何度目かしら?

「イッセーが火織を好きになったのってやっぱり小6の剣道大会の時?」

「はい、そうだと思います。表彰台に登った火織姉様を顔を赤くして見てましたし、そのすぐ後お兄ちゃんも剣道始めましたから」

「白音、イッセーの事良く見てるわね? 火織が表彰されてる時もイッセーを見てたの?」

「な!?」

 あらあら、白音顔真っ赤。かわいいにゃん。

「我も大会、出ればよかった」

「それはダメでしょ、龍巳。私達が出るのはあまりにも卑怯だし、一生懸命練習して出場してる子たちに失礼よ」

「……ん」

 まあそんなこと言われなくてもみんな分かってるにゃん。でもやっぱり考えちゃうにゃん。あの時表彰台に登ってたのが私にゃら、イッセーは私を好きになってくれたんじゃにゃいかって。

「ねえ、なんで2人はイッセーの事好きなの?」

 今更だけど今までなんでイッセーのことが好きになったのか話したことなかったにゃ。2人も今初めて気付いたみたい。

「我、初めて受け入れてくれたのイッセー」

「火織姉様じゃないんですか?」

「初めて会った時、火織お姉ちゃんどこか我のこと怖がってた。今思うと、我のこと、あの時もう知ってたのかも。で、その時一緒にいたイッセー、我のこと遊びに誘ってくれた。それで火織お姉ちゃんとも仲良くなった。我、火織お姉ちゃんも、娘にしてくれたお父さんお母さんも大好き。でも、最初はすべてイッセーのおかげ。イッセーいなかったら、多分我ここにいない」

「だからイッセーのことが好きなの? イッセーはあなたの怖さを知らなかっただけで、他の子も多分イッセーと同じような反応をしたと思うわよ?」

「ん。多分そう。でも実際受け入れてくれたのイッセー。だから我、イッセー好き」

「そっか」

 嬉しそうな顔しちゃって。よっぽど素敵な出会いだったのかにゃ?

「じゃあ、白音は?」

「……最初はほんとにお兄ちゃんが出来たと思っただけでした。あの頃はようやく普通に暮らせるようになって、黒歌姉様以外にもたくさんの優しい家族が出来て、もう他に何もいらないって思えるくらい幸せでした。……でもある時から気付いちゃったんです。お兄ちゃんが他の女の子と親しくするのを見ると嫌な気持ちになるんです。姉様たちにでさえそんな気持ちになるようになっちゃったんです」

「……嫉妬、したのかな?」

「はい。少しして私はこの感情が嫉妬なんだって気付きました。それからはもうお兄ちゃんのことしか考えられなくなっちゃって……」

「それで好きになったと」

「……はい」

 お兄ちゃんを取られたくない感情がそのまま恋心ににゃったのか。白音らしい可愛い理由ね。

「黒歌姉様はなんでお兄ちゃんを好きになったんですか?」

「次、黒歌お姉ちゃんの番」

 う~ん、今更だけどちょっと困ったにゃ。

「言わなきゃダメ?」

「ダメ」「ダメです」

「…………れ」

「? 何ですか?」

「黒歌お姉ちゃん、聞こえない」

「……ひ」

「「ひ?」」

「……一目惚れ」

「「一目惚れ!?」」

「あ、あんま大きい声出さないでよ。恥ずかしいな~」

 だから言いたくなかったにゃ。

「ひ、一目惚れでお兄ちゃんのこと好きになったんですか!?」

「納得いく説明」

「説明……って言ってもほんと一目惚れとしか言えないのよ。……まあしいて理由を上げるなら笑顔が素敵だったから……かな? 笑顔の浮かべ方なんかもう忘れかけてた時にイッセーに会って、彼の笑顔を見てたらなんか幸せな気分になって、それで私もいつの間にか笑えるようになってて……。それで私も笑顔で人を幸せにできたらなって……。ああもうっ! おしまいおしまい! この話おしまい!」

 想像以上に恥ずかしいにゃん! こんな話題振るんじゃにゃかった!

「黒歌姉様がいつも笑顔でいる理由がわかりました」

「黒歌お姉ちゃん、かわいい」

 んにゃ~~~~~~~~~~!! 妹に可愛いって言われるとか! 私もうダメ! 恥ずかしくて死n……

「「「!?」」」

「何!? これって……結界!?」

「あっちの方角。光の気配。多分堕天使」

「そっちからお兄ちゃんの気配もします!」

「「「イッセー(お兄ちゃん)が危ない!」」」







   ☆







 天野さんが投げた槍が俺に迫る。駄目だ、速い。避けられそうにない。俺、死ぬのか? こんな訳のわからない状況で? まだ火織に気持ちを伝えてもいないのに? そんなの嫌だ! いやだイヤだ嫌だ! こんなの納得できるか!

そう思ったところで槍を避けられるはずもなく、そのまま俺の腹に突き刺さろうとして……



バッキャーーーーーーーーーーン!!!



光の槍が砕け散った。そして俺の目の前には見たこともないほど長大な一振りの鞘に収まった刀を携え、威風堂々と立つ俺のあこがれの姿が

「イッセー、無事? 怪我はない?」

神裂火織がそこにいた。

「な!? 私の槍を砕くなんてあなた何者!? 本当に人間!?」

 天野さんが驚愕した表情で火織のことを見ている。俺も驚いた。さっきまでいなかったのにいつの間にか刀を持って俺の目の前に現れて助けてくれたんだから。その刀一体どこから出したんだ?

「ええ、私は人間よ。さっきまで一緒にここにいたでしょう? 私は単なるこの子の幼馴染よ、堕ちた天使さん」

「くっ! 人間風情が私を舐めるな!」

 そう言うと天野さんは光り輝く槍を7本空中に取り出し、こちらに一斉に放ってきた! マズい! これはさすがに火織でも

七閃(ななせん)

 避けられないと思った瞬間火織の持つ鞘に収まった刀の柄と彼女の右手が一瞬ぶれ、天野さんが放ってきた光り輝く槍が一瞬で全て砕け散った。何をしたのか全く分からなかった。それは天野さんも同じらしく驚愕した表情で火織を見ている。

「私のこの七天七刀(しちてんしちとう)から放つ斬撃速度は人が一瞬と呼ぶ間に7回殺すレベルよ。あなたに勝ち目はないわ」

 おいおい、そんなこと人間にできるのか? って今目の前でやってのけたな。でもどういうことだ? こんな技今まで剣道してて一度も見たことないぞ?

「ふん! あなたが強いことは分かったわ。でもその足手まといを1人で守りながら私と戦えるかしらね?」

 そう、俺はこの場では完全に足手まといだ。第一まだ混乱していてまともに動けそうにねえ。

「あら? 誰が1人なのかしら?」

 そう言うと火織は天野さんの背後に視線を送る。そこには

「結界、感じた。お前、イッセーの敵?」

 いつも通りの無表情、でも昔から一緒にいる俺なら分かる、今までにないほどの怒気を纒った龍巳がそこにいた。そして彼女の両手にはどす黒いオーラのようなものが纏わりついていた。なんなのか分からないけど何やらとても肌寒い雰囲気を醸し出している。さらに

「お前、イッセーを殺しに来たのかにゃ?」

「そうであるなら許せません」

 天野さんの左右から彼女を挟むようにして黒歌姉と白音ちゃんが現れた。2人にはなんの冗談か猫耳と尻尾のようなものが生えてる。一体何だあれ? それに白音ちゃんは今までに見たことのないほど不快そうな顔をしているし、黒歌姉は口元は笑ってるけど目はまるで絶対零度ではないかと思うほど冷たい輝きを放っていた。

「何よ、何なのよあんたたち!?」

 天野さんも混乱してる。いきなり何やら恐ろしい雰囲気を醸し出す面々に囲まれれば当然だろうけれど。しかしそんな時、



パアァァァァァァァァァァァァ



 龍巳のさらに後ろの地面が紅色に輝きだした。あれは……魔法陣?

「まさか……転移魔法陣ですか!? こんな時に!?」

「それにこの紋章……グレモリーかにゃ!?」

「くっ!」

 あ! 天野さんが足元に今度は青く輝く魔法陣のようなものを展開すると姿を消した。

「逃した。我、追う」

「放っておきなさい龍巳! 今はこっちの対処が先よ!」

 天野さんを追おうとした龍巳を火織が止めると同時に紅色の魔法陣のようなものがいっそう輝きだした。もう、次から次へと一体何なんだ!? そして魔法陣らしきものの光が消えると同時にそこには3つの何か……いや三人の人影が存在していた。

「結界の反応があったから見に来てみたんだけど……」

「あらあらうふふ」

「どういうことか説明してもらえるかしら?」

 そこには木場、それから駒王学園の三大お姉さまの2人、リアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩がいた! え!? どういうこと!? どこから出てきたんだ!? それになんかこっちのことかなり警戒してないか? なんかこっちも火織以外険悪なムード出してるし、もしかして今一触即発!? そんな中龍巳が急に先輩たちに向けて駆けだした!? そのままオーラを纏った手で彼女たちに掴みかかろうと

「ストップ! 龍巳!」

 したところを火織が止めた。向こうも何やら手に赤や金色のオーラを纏わせてる!? っていうか木場はいつその剣取り出した!? 火織にしろ木場にしろ完全に銃刀法違反だよ!

「下がりなさい龍巳。あなたはイッセーを」

「……分かった」

 そう言うと龍巳はまるで瞬間移動をしたかのように俺の前に現れた。い、今のはなんだ? 速過ぎるだろ。先輩たちも今の龍巳の動きに驚いていた。

「え~と、初めましてかな、先輩? 2年の神裂火織です。とりあえず敵対する気はありませんから構えを解いてくれませんか?」

「……ええ、分かったわ。あなたからは殺気も感じないし。でも事情は説明してもらうわよ?」

「はい、それはいいんですけど……明日でもいいですか? こっちには今でも絶賛大混乱中の子もいますし。この子はこちら側の事情は全く知らないんです。まずは彼に今の状況を話さないと……」

「……そうね、分かったわ。明日あなたのクラスに使いを出すから全員集まって待っていてちょうだい」

 そう言うと先輩たちはまたしても魔法陣のようなものを展開し何処かへ消えていった。なんなんだ一体。

「火織、良かったのかにゃ?」

「まだ早いかもしれないけどいい機会かもしれないわ。そろそろイッセーにも話しましょ。それに、堕天使と悪魔に見つかった以上、もうこれまでのようにはいかないわ」

「……分かったにゃ」

「分かった」

「分かりました」

 何やら火織たちは自分たちだけで納得してるみたいだけど……

「なあ火織、俺には何がなんだか……」

「ええそうね。とりあえず今は家に帰りましょう。いつも通り一緒に御飯食べて、おばさん達が寝たらウチにいらっしゃい。この世界のことについて説明してあげる」

 そういやおじさんこの間から出張でおばさんも付いて行ったから今火織の家には姉妹しかいないんだっけ?







今日はいろいろあった。その上まだ何かあるらしい。







長い夜になりそうだぜ。


 
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