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『自分:第1章』

作者:零那
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『恋心』

中卒学級は作業メイン。
でも、毎朝のドリル、行事、和太鼓、音楽、華道...
あと、児童の処遇を決めたり方針を決めたり、定期的に職員会議がある。その時はビデオ鑑賞、感想文...
そんな時間は皆が一緒になる。

職員会議中も勿論ちゃんと監視職員は居る。


透と目が合って反らしてしまった。
意識してしまう。
視線を感じる。
妙に恥ずかしいような、変な感じになる。
ふと見ると目が合う。
あ、いやぁ、目が合うからって恋愛に結びつけるのはヤメよう。
そんな、小学生じゃあるまいし。
単純に何か聞きたいこととか言いたいことがあるだけかもしれんし。
職員が邪魔で思うように私語できんから。


職員が離れてる隙に聞いてみた。

『何か言いたいことあるん?』

『いやいや何言いよんすか?ないないない!ないっす!こわっ!』

『いやいやそぉゆうつもりや無いけど...』

すぐ他の職員が来て会話終了。


毎朝の裸足マラソンはタイムも計るようになって、向上心や達成感もでてきてた。
目標タイムも決めて意外と真剣にしてた。
自分との闘い。
走るのは好き。
無心になれる。
きもちいぃ。
嫌な事も一瞬だけは忘れれる。
冬は頭がスッキリする。
夏は好きじゃないけど。



ふと透に抜かれた。
ムカつく。
抜き返したろ思た。
必死に走ったけど抜けれず。
勝手にゴールして階段上がってった。
足洗い場でやっと追いついた。

『なんでシラーっと抜いていくん!マジはがいんやけど!』

『えっ!なんで!』

『なんかムカつく!次は絶対抜いたるけんっ!!』

『がんばってっ!!』

にっこり笑顔。
いじわるな感じ。

『うーわぁっ!ムッカつくわぁ!』

職員はすぐそこに居る。
でもこんな会話なら注意もされんかった。

この時はマダじゃれよるとか好きとか、そんなつもりは無かった。

寮長に呼び出された。

『最近、透と話すこと多いように見えるけど楽しそうやな?』

『一切話したらあかんのですか?』

『好きなんか?』

『さぁ...』

『男女交際は一切禁止。ルール違反は連帯責任。解っとるよな?』

『はい。』

『...いけ。』

部屋から出ろと手で合図しながら言われた。

もしかしたらホンマに好きなん?

まさか...
乙女かよっ!!

同室の子が話してきた。

『手紙渡したげよか?』

中学生同士。
クラスは隣。
隙狙って渡すのは可能。
バレたらどうなるか古株なんやし解ってる筈。
ルール違反の反省作業は辛いって聞いた。



流れは忘れたけど付き合うことに。
てか、付き合ったところで何も変化は無い。
ただ、精神的に強さに変わるんじゃないかと思う。
こんな処やからこそ。
理解し合ってるよって。
頑張って、頑張るよって。
一緒に頑張ろぉって。
励まし合える。
仲間として。
心の恋人として。
悪くない関係やと思った。
自分こんなキャラやっけ!??
みたいな一面に自身が戸惑う。


この頃、大体の児童が手話にハマッてた。
職員の目を盗み、離れてても手話で会話をしてた。


作業中、夏場はキツい。
まさに肉体労働。
校舎から見える場所やったら透は『ガンバれ―っ!』って叫んでくれた。
周りも言ってくれた。

職員は怒るに怒れん。
勘の鋭い数人の職員は疑ってた。
でも証拠は無い。

くっつかんようにされてた。
必ず真横に職員が居た。
慣れた。

何気ない会話でも、認めて貰ってるような、安心するような...強さに変わってるのを感じた。

そもそも、更正施設で男女交際禁止ってのは当然だろうけど...

極端に言えば妊娠や脱走しかねんからとか、責任問題もあるから?

そんなものにウツツを抜かさず自分自身を正せとか?

要は、お互いプラスになるなら問題なし?


まぁ、男女交際どうぞ好きにしてってのもおかしい。
秩序も大事やし。
付き合ったところで触れ合うことは許されんし。

それでもルール違反で付き合って、好きで好きで、触れたい欲望が嫉妬や脱走に繋がって、マイナスに向かう。
其れを避けな此処に居る意味が無い。

過去に、そんなカップルが脱走計画を立てた。
要はヤル為に。
出来る限り全力疾走。
で、単車窃盗したり。
その時点で家裁行き。
此処に戻ることはなく、鑑別とか。
職員は其れを避ける義務がある。

お互いに好きな気持ちがあって付き合えば、そのうち触れたくなって、そんな馬鹿なことになる確率もあがる。
恋愛にハマったら我を見失う。
ドツボにハマる。
馬鹿を見る。


脱走とか、そんな大袈裟じゃなくても生活に支障をきたす。
単なる嫉妬にしても面倒。
バレたらあかんのにバレる。
馬鹿な子供じみた嫉妬が、自分や周りを狂わす。
揉める原因になる。

結局、単純に、此処での生活に恋愛は悪影響しか無い。

でも...
お互いに解り合って、認め合って、支え合って、励まし合って...
其れって、そんなに難しい?

こんな処やからこそ、逆に、尚更解り合える部分は在るやろうし、日々の苦しみも分け合える。
綺麗事?






零那は、逆にまともな恋愛感情が解らん...

相手を理解したい、して欲しい。
相手の為に、自分の為に、マイナスになるのは嫌。
足を引っ張り合うなら意味が無い。

正直、プラスになれる関係なら、恋愛じゃなくても良いと思う。

でも、此処の場合、許されてない関係やからこそ、強さになるって零那は感じた。
自分は自分で在り続ければ良いだけ。
流されん。

 
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