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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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旋律の奏者と大地の杖

上空へ飛翔したシュタイナーの目線の先には既に敵のモンスターが取り囲んでいた。
ドラゴン型、昆虫型、ゴースト型など魑魅魍魎の類のモンスターなど種類は様々だった。

「まさしく百鬼夜行と言ったところかな。さて・・・」

シュタイナーは杖を突きだすと、

「聞こえるとは思わないがあえて言う、“あるべき場所へ帰れ”さもないと・・・“斬る”」

「ガァアアア!!!」

シュタイナー警告は当然のように無視され、モンスターたちは突進してきた。

「やっぱり無理か、仕方ない・・・」

シュタイナーは小さく詠唱を唱えると杖の先に光が点った。

「後悔するなよ・・・!」

シュタイナーの目付きが一瞬にして切り替わる。その姿はまさに修羅の道を潜り抜けてきた者の目だった。
光が徐々に強くなると、シュタイナーは目の前のモンスターに向けて杖を横殴りに振った。
すると目の前にいた複数のモンスターがエフェクトとなって爆散した。続けて自分の周りを囲むようにして振り近くのモンスターを一掃する。

「音の刃、《ソニックブーム》。本当は衝撃波なんだけどね~」

ソニックブーム。これは主に戦闘機などの超音速飛行により発生する衝撃波が生む、轟く様な大音響のことを言い、因みに隕石が落ちたときの衝撃波もこれにあたるとされている。
シュタイナーは次々と敵をなぎ倒していく。しかしそんな音の刃でも万能というわけではない。

「あのモンスター、ちょっと硬いな・・・」

このソニックブームは防御力が多少高くても大ダメージを与えることは可能だが、完全なディフェンス型だとそれをすることは難しい、つまり防御力が高いモンスターに対してはあまり有利な戦法ではないのだ。

「しょうがない、アレを使うか・・・」

そう言って杖をストレージに戻し拳を構える。そして自らモンスターの軍勢に飛び込む。

「ハァアアアッ!!」

懐に潜り込みモンスターの腹部に拳を叩き込む。すると拳を離した後、モンスターの体は急に破裂するように消えた。

震動破壊(ショックブレイカー)。音波操作の応用の一つだ!!」

震動破壊(ショックブレイカー)、これは拳から中に直接音波を叩き込む技でこれにより防御力が高いモンスターでも大ダメージを与えることが可能となる。
しかしこれは相手に直接、即ちゼロ距離で当てなければならないのだ。つまり、遠距離火力相手には不利なのだ。

「それにしても、キリがないな・・・」

シュタイナーが無数の敵を相手にする中、彼は内心自らの分の悪さを痛感していた。

「このままじゃキツいかな・・・」

「なら、手を貸そうか?」

「えっ?」

シュタイナーの耳にある人物の声が聞こえた直後、空から一閃の光がモンスターたちを飲み込んだ。
その光の正体は強力な高密度のエネルギー砲だった。

「随分と劣勢だな、カフェ経営で腕がなまったか?」

「シオン!」

「状況は?」

「見ての通り、数にして三千近くといったとこかな?」

「なるほど・・・」

シオンは周囲を取り囲むモンスターを確認して剣を構えた。

「随分と派手にやったな、奥の手のいくつかを使うとは・・・」

「まあ、この数だから多少は無理しないと・・・」

シュタイナーがそう言っていると、ユージーン、サクヤ、アリシャたちが合流した。

「シオン君、状況は?」

「相手の数は三千弱、向こうもまだ余力を残してるはずだ。拠点にはまだ千人以上いると思っていい」

「でも、その前ニ」

「コイツらを倒していく必要があるな」

三人とも、今すべきことを分かっているようだ。シオンは再び表情を引き締める。

「そういうことだ、ここから先は・・・」

「総力戦ってことだね・・・♪」

「いくぞクラウン、《リンク》!」

シオンがそう言うと、奏龍《ハルビオン》を纏った。リンクを終えたその姿は“道化師”のような姿を連想されるものだった。

「さあ、プーカのもうひとつの顔を魅せてやるよ!!」

シオンは仮面のしたに隠された面妖な表情を浮かべながら言った。

「さあ・・・」

「「第二ラウンドといこーか!!」」

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「報告します!我が軍の損失が50%を越えた模様!!現在も減少中です!!」

「クソッ!!あのガキ共ォ・・・!」

オベイロンは予想を上回る自軍の減少のペースに苛立ちを隠せずにいた。

「いかがなさいますか?」

部下のプレイヤーがオベイロンに指示をあおぐと、オベイロンは一言だけ言った。

「アレを撃て・・・」

「アレを、ですか!?」

「いいから放て!!」

「は、はい!!」

オベイロンの言葉にその部下は直ちに行動に移った。残されたのは玉座に座るオベイロンただ一人。

「クククッ。さあシオン、これで全て終わられてやろう・・・」

オベイロンは不敵な笑みを浮かべていた。既にその顔は勝利を確信していたかのように。

「この世界は僕のモノだ。システムも、プレイヤーも全て僕のモノだ!!貴様のような青臭いガキに壊させてたまるか!!僕はこの世界の王、神なんだ!!僕に逆らった者の末路を受けるがいい!!」

オベイロン、須郷にとってこの世界は自分のモノなのだ。誰のものでもない、自分だけのもの。ここにいるプレイヤーは所詮は自分の駒、楽しませる余興のための道化なのだ。かわりなど金を出せばいくらでもいる。要らなくなればすぐにポイッと捨ててしまえばいい、彼は人を“人”として見ず、“道具”として見ているのだ。















「まったく、まるで子供の戯言だな・・・」

ザクッ・・・

オベイロンの体が刃に貫かれたのはその言葉の後だった。オベイロンの背中から胸にかけて貫かれたのは一本の片手剣、そしてそれを貫いたのはかつて彼の掌の中で操られていた者の手によるものだった。

「シ、シルビア・・・!」

「違うな、今の私はシルビアではない、エリーシャだ!」

「グッ、貴様ァ・・・」

エリーシャの刃が刺さっている中、奥の方から更に別の声がした。

「お前はこのゲーム(闘い)の本質を見誤っている。このゲーム(闘い)のルールを理解しているはずだ」

「桐ヶ谷、和人・・・!」

「最初に言ったはずだ。このゲームの勝利条件は相手の全滅、もしくは相手の王を討ち取ること(・・・・・・・・・・・)だと」

「ッ!!まさか・・・!?」

「普通ならこの戦力比を考えてまず自分側の全滅はあり得ない。なら必然的に貴方を真っ先に狙うでしょう。しかし・・・」

奥からはキリト、アスナが現れ更にエリーシャが話を進める。

「貴方はシオンによってゲーム開始前からかなり精神的に追い込まれていた。そして予想を遥かに上回るペースで自分の軍の数が減っていき、予想外のアクションが積み重なっていったことにより、自分は落ち着いているように見えて本当はまともな考えが纏まらなくなっていった。結果、子供でも分かるような戦略に貴方はまんまとハマった・・・」

「その証拠として、周りの索敵が随分とお留守だった。周りを見る余裕もないと見てとれる」

「クッ・・・!」

「もう貴方の負けです。大人しく降伏しなさい」

アスナはオベイロンに対し、降伏(リザイン)を要求した。
しかし───。

「ク、クククッ・・・」

「?」

「クハハハハハハッ!!!!!」

「・・・何が可笑しい?」

キリトたちは高笑いをあげるオベイロンの心意が分からなかった。ここまで追い込まれていてもなお、狂った笑みを浮かべる彼の考えが───

「降伏?何を馬鹿なことをぬかしている!!」

「何ッ?」

「降伏などあり得ない!この闘いはどちらかが死ぬまで終わらないんだよ!!」

そう言い放った瞬間、オベイロンの体からはドス黒い霧のようなものが大量に溢れだした。

「ッ!!」

エリーシャはすぐさま危機感を感じとりその場から離れた。

「何だ、アレは!?」

『キリト、聞こえるか?』

「シオン!」

『お前たちのいる辺りから妙な霧が漏れ出しているのが見える!何があった?』

「それが・・・」

キリトはありのまま起こったことを全て伝えた。その報告にシオンは・・・。

『分かった、すぐにそこから離脱してこっちに合流してくれ!』

「了解!」

「分かった!」

「うん!」

三人はシオンの指示通りその場から離脱、合流することとなった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

俺は合流したキリトたちから向こうの状況を全て聞いた。

『まったく、しぶとい奴だな・・・』

「ああ、まったくだ」

アルモニーと俺が思っていることは一緒だった。
須郷の奴、ここまで派手にやるとは相当追い込まれてるな・・・。

「それにしても、モンスターの動きが止まったかと思えば急に退避するとはな・・・」

「アルモニー、シュタイナー。アレをどう見る?」

「普通に考えたら体勢を立て直すってのがセオリーだけど・・・」

『私も同意見だ』

アルモニーもシュタイナーも、もっともな事を言ってきた。俺もはじめはそう思った、しかしモンスターの動きが止まって更に引き返し始めたのは、あの黒い霧がでてすぐの時。

「シオン・・・?」

エリーが尋ねてくる。俺は頭の中で全てを整理する。
須郷の言葉、黒い霧、モンスターの突然の退避・・・。
奴は言っていた、『どちらかが死ぬまで終わらない』と。奴の今の精神状態を考えて降伏はまず無い。ならなんだ?クソッ!もっと考えろ高嶺 雪羅!!頭のギアを全部回せ!!
アイツは何を考えている、体勢の立て直し?それともキリトが言っていた須郷が放とうとした何か?いや、それならもっと早く・・・ッ!

「まさか・・・!」

「シオン・・・?」

「キリト、向こうに何かデカイビニールで被せられたものはあったか・・・?」

「えっ?あ、ああ。おそらく、それらしきものモノなら・・・」

キリトは奇襲をかける前にオベイロンの城を周辺から調べていた際にビニールが被さっていた何かを発見していた。それもかなり大きな───

「それがどうかしたのか?」

「そこからエネルギー反応は?」

「いや、特には・・・」

「シオンくん!!」

アスナの明らかな焦りの声に皆が反応する。

「どうしたアスナ?」

「さっきからあの黒い霧の辺りから巨大な反応が出てる!!」

「識別は分かるか?」

「分からない!さっきからずっと《unknown》って出てる。それにどんどん反応の規模が強力になってきてる!!」

「ッ!やっぱり・・・!!」

これならモンスターが急に退避したのにも説明がつく!

「おい、どういうことだよ!?」

「あの霧は只の霧じゃない。モンスターを、いや、下手したら部下のプレイヤーも全て吸収しているんだ!」

「吸収!?」

「おそらくあそこの拠点にあるもの、そして自軍のエネルギーとなるもの全てな」

「どうしてそんなことを・・・」

「気が狂いまくった奴の考えなんか知れねぇ、だから恐ろしい。キリトがさっき言った巨大なビニールで被われたもの、アレはたぶん巨大粒子砲の類いだろう」

「そんなもの、どうして最初から撃たなかったんだ?」

ユージーンの疑問に対して俺は簡潔に答えた。

「撃たなかったんじゃない、撃てなかったんだ(・・・・・・・・)

「撃てなかった?」

「俺は確かにゲーム開始前に言った。“荷電粒子砲でも、高機動兵器でも作れる範囲なら何でも構わん”ってな。だがそれはあくまで作れる範囲(・・・・・)での話だ。彼はあの短時間で作った、そこは流石と言うべきだ。だが撃てるかどうかは別問題だ、撃てなきゃ、只の鉄屑の同じ。おそらく魔力を溜めるのに途方もない時間がいる。だから撃てなかった。」

「じゃあ、あの吸収は?」

「たぶん、肉体強化の延長・・・いや、そんなもんは生温いか・・・。強いて言うなら・・・」

俺は今もなお反応が強まっている黒い霧を睨みながら言った。

禁忌(・・・)・・・!!」

皆の体にゾクッという悪寒が走る。シオンは更に続ける。

「エネルギーとなるもの全てを吸収し、自分のモノとする。それがたとえ見方でも。まったく、ゲームじゃなければ人間捨ててるぜ、アイツ・・・。まっ、もうとっくに研究の内容事態が禁忌だがな・・・」

「そんな・・・」

「あんだけ吸収したら、いくら俺やキリトでも予想は出来ない」

「どうにか出来ないのか?」

サクヤさんの問いに視線だけ向けて答える。

「あるにはありますが、まだピースが足りない。今行っても倒せる確率は良くて30%」

「なん、だと・・・」

「ッ!ねぇ、あれ!」

エリーが指差した先には黒い霧の中で光る鋭い瞳らしきもの、霧が薄くなるにつれてその姿は露となった。その姿は“蛇”を彷彿とさせたがそんな生易しいものではなかった。
何もかもを食いちぎりそうな鋭い牙、一撃でターゲットを刈り取る刃のような尾、死角を許さない多数の眼、そして何者も寄せ付けない殺気と威圧感。

「まさか、あれは・・・!」

俺はこのALOをプレイする少し前、文献でだが北欧神話についてチラリと調べていた際に見つけた怪物を思い出した。
その名は「大地の杖」を意味し、ロキが巨人アングルボザとの間にもうけた、またはその心臓を食べて産んだ3匹の魔物の内の一体とされている。

その怪物の名は───

「ヨルムン、ガンド・・・!!」

「ヨルムンガンドって、あの!?」

「北欧神話に登場する怪物。その強さは・・・」

「北欧神話の中でも最強クラス・・・!」

最強、その言葉に皆の顔が一気に青ざめる。

「まさか、こんなとんでもねぇ怪物を出してくるとはな・・・」

「そんな・・・」

アスナは思わず膝をつく、その目は絶望に染まっていた。あのデスゲームの始まりの時のような目を・・・。

「ギャアアアアアアアッ!!!!!」

ヨルムンガンドの咆哮はその存在感を醸し出し、威圧していた。
そして、すぐさま奴は攻撃体制に入った。

「ヨルムンガンド周辺に巨大なエネルギー反応あり!!これは!!」

「どうやら奴は一発目から消しに来るようだな!」

シオンは地龍《グラビオン》を呼び出す。

「グラビオン、《リンク》!!」

グラビオンとリンクした俺の姿は固い鎧に包まれた《重戦士》のような姿だった。
俺は上空に飛翔すると詠唱を唱えた。

大地の障壁(グラビティウォール)!!」

俺は目の前に無数の土の壁が出現させ、ヨルムンガンドの前に立ちはだかった。

大地の障壁(グラビティウォール)、重力魔法を最大限に活かした防御壁だ。こいつであのエネルギー砲を止める!!」

「そんな無茶だ!あれだけの威力をもつ砲撃を防げるはず無い!!」

「そうだな、確かにこの障壁は重力魔法で圧縮して更に強固なものにしている。だが、それでも防げるとは思えない」

俺は分かっていた、あれだけの威圧とエネルギーを感じていてまともに相手出来ないことくらい。
未だに外部からの干渉を封じられた今、強制的に終了するなんて出来ない。
そしてあのエネルギー砲、防げるかどうかも10%行けば良いところ。
だが───

「だが、やるしかない・・・」

『来るぞ!!』

アルモニーが言った直後ヨルムンガンドは咆哮と共に今までに溜めたエネルギーを全て吐き出した。そのエネルギーは予想を超えるもので、壁をいとも簡単に塵へと変えた。

「ウォオオオオッ!!!!!」

俺も力を込める。こんなパワー、SAOのスカル・リーパー以上だ・・・。

『だが、負けられねぇ!!』

「キリト!今すぐここから離脱しろ!!」

「お前はどうするんだ!」

「言ったろ、コイツを止めるって。止められなくても威力は抑えられるはずだ」

「でもお前が!!」

「さっさと行け!!このままじゃ全滅だぞ!!!」

俺の怒声にキリトは躊躇はしたが頷いて皆と共に退避した。しかし、そんな中でも最後まで叫び続ける声があった。

「シオン!シオーン!!」

『ごめんなエリー、また一人にしちまって・・・』

「コン、ノォオオオオ!!!!!」

障壁は次々と破られていく、魔力を強化した分だいぶ辛うじて守ってはいるがそれでも足りない。
そして、魔力を更に込めようとしたその時だった。

「クッ、ソォオオオ!!ッ・・・!」

俺の力から突然力が抜けた。そして視界のMPゲージが0になっているのに気がついたのはその直後の事だった。

『魔力が、尽きた・・・か。ハハッ、俺としたことが、らしくない凡ミスをしちまったな・・・』

俺は落下する感じがゆっくりに感じ、それと同時に壁が崩れさるのも見えた。
一枚、また一枚と、破壊されていきそして、

『俺は、死ぬんだな・・・ちくしょう・・・』

俺はエネルギー砲に包まれた───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「シオーン!!!」

私はシオンがあのビームに包まれる瞬間を見て絶叫した。
目の前で大切な人が消えそう、SAOでのあのときのように。

『イヤ・・・』

私はまたあの人を失うの・・・?

「イヤ・・・」

また、見ているだけなの・・・?

「イヤ・・・」

もう貴方を失いたくない!!

「イヤァアアアアアアアアアア!!!」

私が苦しみに叫んだその時だった。

「ッ!!!」

巨大なビームは何かによって弾かれ、四方に分散したのだ。

「何ッ、あれ・・・」

よく見てみるとそれは大きな紅い十字架のような形をとり、でもあの形は何処かで見たことがある。
紅の十字架、私はその十字架に見覚えがあった。

「あれって・・・」

「まさか・・・」

「うそ、だろ・・・!?」

キリトたちも揃って驚愕する。そう私たちはあの十字架を知っている、それもかなり身近に。

「アイツが何で・・・」

そうその姿は白い鎧、白いマント、そしてそこに刻まれた紅の十字架。かつては英雄と詠われたその男、その男の名は───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

俺は目を覚ますと、目の前には紅の十字架、そして白いマントが霞んで見えた。

「まさか・・・」

俺はその十字架を見て思わず薄笑いが浮かんだ。確証は無かった、確率もほぼ0%だった、でもそれでも何処かで思っていた。
コイツは、この男は来るってことを(・・・・・・・・・・・)───

「大丈夫かね?シオン君(・・・・)

そのイラつく声の主はいつも通り、俺に声をかけた。そして俺が言った一言は、いつも以上に皮肉っていた。

「遅ぇーんだよ、ったく何処で油売ってやがった・・・!!

















茅場。いや、ヒースクリフ!!」

「すまないな、少し邪魔者がいてね」

そう、SAOの中でも最強のプレイヤー、そして俺たちを最後まで苦しめた張本人。茅場明彦、もといヒースクリフがそこにいた。

「まあいい、ここに来たってことはアイツを須郷をぶちのめしに来たってことでいいんだよな?」

「ああ、彼にはもう少し教育が必要だからな・・・」

「おーおー、怖ぇー怖ぇー」

「団長!!」

「お前、どうしてここに!?」

ここで避難していたエリーたちが合流した。やはり何故今、ヒースクリフがいるのかをを疑っているようだ。

「エリー、キリト、アスナ。茅場、ヒースクリフは味方だ。俺たちと同じアイツを、須郷を倒すためにここに来た」

「須郷を倒しに・・・?」

「シオン君、外部との連絡を解除しておいた。これで外部との連絡はとれるようになるはずだ」

「そうか、なら・・・ユイ!!」

「やっと繋がりました!にぃに!!」

俺がユイを呼び出すと空間からエフェクトと共にナビゲーションピクシーとしてのユイが出現した。

「ユイ、喜んでいる暇はない。今すぐにアイツの情報は割り出せるか?」

「こちらの状況は見えていたので大体なら」

「それを皆に転送してくれ」

「了解です!」

ユイはすぐさま皆にヨルムンガンドのデータを送った。

「よし、これで役者は全て揃った」

「役者?」

「ああ、ヤツを倒す最強の布陣がな・・・」

シュタイナーは見渡しながら言う。

最速の剣(アスナ)最速の反応速度(キリト)最多の武器(エリー)最高のアシスト(ユイ、アルモニー)最強の盾(ヒースクリフ)、そして最強の矛(シオン)。なるほどこれは確かに“最高の役者”だね」

「何言ってんだよシュタイナー。お前は最恐の騙し屋(トリックスター)だろ?」

「ふふっ、よく言うね」

「不思議だよ、今冗談が言えるなんて」

俺は皆を見て言う。

「皆、ここまでよくやってくれた、感謝している。皆がいなければここまでこれなかった。これが最終決戦だ!」

「「「「「オオオオッ!!!」」」」」

「これが最後の指示だ、心して聞いてくれ」

俺が決戦前に言った最後の指示、それは単純、シンプルなものだった。

勝つぞ(・・・)!!」

「「「「「オオオオオオオオッ!!!!!!!」」」」」

俺は振り返り、ヨルムンガンドとなり、人を捨ててしまったオベイロンを睨む。
そして───言いはなった。

「覚悟しておけオベイロン。これが、白の剣士の、シオンの、
















俺たちの戦いだ!!」

神と妖精の最終決戦、開戦─── 
 

 
後書き
気がついたら8356文字・・・。
なっが・・・!!

見方として登場したヒースクリフ、これがどう活きていくのか。
そして最終決戦の行方は・・・

ALO篇、間もなく佳境を迎えようとしています!!
ドキドキの展開をお見逃しなく!!

コメント待ってます!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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