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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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オリジナルストーリー 目覚める破壊者
StrikerSプロローグ エースとストライカー、それぞれの第一歩
  69話:A's to StrikerS(後編)

 
前書き
 
後編入りま~す。
  

 
 



それから数日が経ち……

「―――とまぁ、ざっとこんなもんだ」
「よくもこんな案が通りましたね」
「そりゃあ俺が有能だからな」
「自分で言いますか、それ?」

いいんだよ別に、とそっぽを向きながらアイク部隊長が言った。

今回決まったのは、フォワード陣の構成だ。
基本はスリーマンセルから五人組の分隊を作る。個々の能力や実力を考慮しつつ、人数を合わせていく。
そしてそれぞれの分隊に一人ずつリーダーを決め、それを分隊全てを含めて統括するのが、俺の仕事となる。

「これで、後は面子だけですが…」
「それなら二人程、候補を見つけたぞ?」
「本当ですか!?それを早く言ってくださいよ!」

その後ちょっと言い争いになったが、そこは割愛して……

「じゃあその候補っていう人のデータ、見せてください」
「え~」
「え~、じゃない!どうせ持ってるんでしょ!?早く見せてください!」

アイク部隊長が渋々差し出した紙を奪い取り、ざっと眺める。しかしすぐに俺は表情を曇らせることになった。

「アイクさん…なんですかこれは」
「ん?だからフォワード候補のプロフィール―――」
「なんで〝こいつら〟がそのフォワード候補に上がってるんですか!?俺は納得できません!」

バンッと持っていた紙を机に叩きつけながら立ち上がる。目の前で座るアイク部隊長は、何食わぬ顔で俺を見返してくる。

「お前が納得できなくても、この二人は候補に上がった。ただそれだけだろ?」
「ですが…!」
「二人にも直接話をして、納得もしてもらっている。しかも彼ら自身、部隊に入るのを強く希望している」
「そういう話をしている訳じゃなく…!」
「―――門寺一尉」

いきなり下がった声のトーンに驚きながら、それはできるだけ表情に出さないようにする。いつもおちゃらけている感じの人だが、このトーンの時――しかも、人を階級で呼ぶ時は、いつも決まって真面目に話をするときだ。

「お前がこの二人にどんな思い入れをしているか、俺には分からない。だが人手不足で悩んでいる今、個人の意見がそう易々と通ると思うな。
 これは俺が必要だと判断した結果で、二人は勝手に候補に上げた事を承諾してくれている。これ以上に必要な事はあるか?」
「………いえ…」
「ならいいだろ?彼らはあくまで候補だ。完全に決まった訳ではないから、そのことも考慮しておくようにな」
「…わかりました。俺の方からも、二人には伝えておきます」
「おう、そうしてくれ」

それだけ言うと、再びおちゃらけた雰囲気に戻り、座っているイスで回り始めた。まったく、ガキかあんたは。
するとそこへ、丁度タイミングよくチャイム音が響いた。

『アイク部隊長、イーナです』
「おう、入ってくれ」

扉が開きそこから入ってきたのは、長い金髪をなびかせるトレイルさんだった。
彼女は特別部隊ではアイク部隊長の副官を任される事になっている。まぁ簡単に言えば秘書だ。アイクさんとは長い付き合いらしく、前の部隊でも一緒に働いていたらしい。

「こちらが頼まれていた物です」
「おぉ、相変わらず仕事が早い!ありがとな」
「これぐらい、造作もないですよ」

何かの書類を渡すトレイルさん。自信気に小さく胸を張り、アイクさんの言葉に返す。
なんか一見すると正反対のような二人だが、何故かお似合いのコンビだ。長い付き合いだがらか、それとも別の何かなのかは、俺には分からないが……

「仲いいですね」
「「どこがだ(ですか)?」」
「そうやって二人そろって言い返してくるところとか、まさにそうじゃないですか」

ほんと、見るからに仲がいいんだから。
そう思って笑みを浮かべると、二人して顔を見合わせて首を傾げた。こんなんで、なんでそんな反応ができるかね。

「あぁそうだ、ちょっと小耳に挟んだんだが…」
「なんですか、アイクさん」
「あの有名な嬢ちゃん達が、近くまでやってくるそうだな」
「は…?」

だから、と手を頭の後ろに回し、アイク部隊長は背中をイスに預ける。

「あのエース・オブ・エース達が休暇をとってるそうじゃないか」
「だからなんでそんな事を、あんたが知ってるんだ?」
「俺の情報網をなめるなよ、フフフ…」
「実は八神一尉から連絡があったんですよ。門寺一尉をよこせ、と」

あ…あのバカ狸はああぁぁ!!何しとんじゃぁぁ!!
何だ、一体何だ!?なんであいつとアイクさんが連絡取り合ってるんだ!?訳がわからん!てか連絡内容可笑しくねぇ!?

「とまぁ、化け狸からの脅迫もあるから、お前は今日は帰っていいぞ」
「何ですかその軽い扱い!?いやあの、はやてから連絡あったからってそんな簡単に…!?」

何か言い返そうと思ったが、何故か無駄なような気がして、ため息をついて止めた。もうなんか、今のままじゃ勝てない気がする。

「わかりました。ですが本当に戻っていいんですか?まだ決まってない事だって…」
「あぁ、まぁ色々あるのは確かだが、お前は十分やってくれているさ。それの労いも兼ねての休暇だ」
「ですが忙しい事には変わりないので、明後日には戻ってきてもらいますが」
「一日休みあれば十分ですよ」

そう言って俺は席を立つ。
アイクさんはそれを見て笑みを浮かべ、肘をつく。

「まぁ楽しんで来い。昔馴染みなんだろ?」
「腐れ縁ですよ、あれはもう。六年も続いてるんですよ、この付き合い」
「いいじゃんよ、あんな可愛い娘達と六年とか。うらやましす」
「止めてくださいよその言い方、マジで」

再びため息を出して、扉に向かっていく。
その扉の直前で、一旦踵を返し二人に向かい合う。

「それじゃぁアイク部隊長、トレイルさん。勝手ながら、一日の休暇を取らせていただきます」
「おう。ゆっくりしていけよ」
「ごゆっくりしていって、それから忙しく働いてください」
「うわ、トレイルさん鬼畜発言…」

最後に一回敬礼して、俺は部屋を出た。
まぁ取りあえずはあいつらに連絡とって、それから一旦着替えを…いや、地球に帰るのも面倒だ。途中で服とか買えば、それでいいか。

自分のデスクのある場所へ向かいつつ、そんな事を考えていた。
しかしこの休暇が、結果的にあまり休暇とはならず―――そして、一人の少女の運命を大きく変える事となるとは、この時は思いもしなかった。
























「折角の休暇の筈が…誰だこんな事しやがったのは…!」

俺の目の前で轟々と燃え盛る炎を視界に入れながら、怒りを露わにする。
その炎が包むのは、ミッドチルダの北部にある空港『臨海第八空港』。多くの人が利用する空港だ。

「これ死者はまだ出てないよな!?」
〈今私が得た情報だと、負傷者はいますが死者はまだのようです。ただ情報が錯綜していて、これがたった今の情報なのかは、判断をつけにくいです〉
「ちっ、厄介な…」

だからといって、ただ見てる訳には……

「士君!」
「士!」
「っ…なのは、フェイト!」

その時後ろから声をかけられた。振り向くと普段着を着たなのはとフェイトの姿が。

「お前ら、休暇は!?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
「目の前でこんな事になってるんだから、見逃せる筈がないよ」

そうだな…まったくその通りだ。
するとそこに一台の大型車が。俺達の側に止まると、扉が開いた。そこから出てきたのは、制服姿のはやてだった。

「はやて!」
「三人共、大丈夫か!?」
「私達は火災前に出てこれたから、大丈夫だよ」
「よかった~。私は今回前線指揮をまかれてもうた。でも人手が足らへん。三人共―――」
「了解、手伝いだな!」
「任せて、はやてちゃん!」
「最初は何をすればいい?」

はやてが言い切る前に俺達はそれぞれのデバイスを手に取り、準備をする。

「お、おーきに!まずなのはちゃんとフェイトちゃんは人命救助を優先や。奥の方にも取り残された人がいるそうやから、できるだけ迅速に!」
「「了解!」」
「士君、消火とかできる?」
「消火活動とかは初めてだが…何とかなるやつがある」
「ほんまか!?じゃあ消火しつつ、なのはちゃん達と同じように人命救助を!」
「了解した!」

そう言って俺はドライバーとなったトリスを腰に当て、カードを取り出す。

「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「「セット・アップ!」」

「変身!」
〈 FORM RIDE・WIZERD FLAME DRAGON 〉
〈ボー、ボー、ボーボーボー!!〉

なのは達二人の体は光に包まれ、バリアジャケットを纏う。俺の方は足元から上がってきた魔法陣が俺の姿を変え、赤いローブを纏う仮面ライダー『ウィザード・フレイムドラゴン』へと変身する。

「なのは達は上から、俺は正面から入る!上からの救助、頼むぞ!」
「「了解!」」

二人は返事と同時に空へ飛び出す。俺も空港へ向かって走り出す。

「それじゃあ、こいつで行こうか!」
〈 ATACK RIDE・DRAGOTIME 〉
〈ドラゴタイム〉

音声と同時に右に魔法陣が出現。右手をそこへ突っ込み、引き抜く。引き抜いた右手にはブレス型の装備『ドラゴタイマー』が装着されていた。
走りながら中央部にある『ドラゴダイアル』を回し、針付きの羅針盤を火のエレメントへ合わせる。

〈セットアップ〉
「さぁ、ショータイムだ…!」
〈スタート〉

そして手形状の意匠にある親指部分『サムズエンカウンター』を押し、タイマーを起動させる。
丁度壊れた入口のドアが視界に入る。少し火が飛び出してきているが…大丈夫だ、これぐらいなら突破できる。

前転気味に飛び出して、扉を突破。多少熱かったが問題はない。
そろそろだと思い、右手のサムズエンカウンターを再び押す。

〈ウォータードラゴン!〉
「はっ!」

するとすぐ側に青い魔法陣が現れ、青いローブを纏った『ウィザード・ウォータードラゴン』が出てくる。

〈 ATACK RIDE・BLIZZARD 〉
「はぁあっ!」

ウィザード・ウォータードラゴン(以後ウィザードW)はカードを使い、魔法を発動。目の前に展開した魔法陣から強力な冷気が放たれ、入口付近で燃えていた炎を消火していく。
それを見ながら、三度サムズエンカウンターを押す。

〈ハリケーンドラゴン!〉
「はぁ!」

少し上に展開された緑の魔法陣から、今度は緑のローブを纏う『ウィザード・ハリケーンドラゴン(以後ウィザードH)』が降り立つ。
降り立ったウィザードHは風を操り、燃え盛る炎の熱を吹き飛ばす。

「ラスト!」
〈ランドドラゴン!〉
「ふっ!」

再度サムズエンカウンターを押し、地面にできた黄色の魔法陣から『ウィザード・ランドドラゴン(以後ウィザードL)』が現れる。
四人のウィザードが立ち並び、そしてさらに奥へと進む。するとその先には防火服を着た人達が立ち往生していた。

「ダメだ、火の勢いが強すぎる!」
「しかし奥にはまだ取り残されている人が…!」
「奥の方には本局の魔導士が向かいました。皆さんは消火を続けてください」
「あ、あなたは…?」
「臨時協力の本局魔導士、門寺一尉です。消火と救助を任されました」
「門寺…あなたが…!」

俺の名前を聞いた瞬間、なんか消火隊の雰囲気が変わったような…気のせいか?

「私はこれから先に進みつつ、消火と救助をしていきます。皆さんは確実に火を消していってください」
「りょ、了解です!」

消火隊の全員の敬礼を背中で受け、俺達はさらに先へと進む。

「ランドとウォーターは一緒に消火を!ハリケーンは俺と一緒に奥に進んで救助だ!」
「「「わかってる!」」」

三人は一斉に返事を返し、二手に分かれる。
ウィザードWとウィザードRは二人一緒に別の方向へ向かう。俺の側にいるウィザードHは、ライドブッカーからカードを取り出す。

〈 ATACK RIDE・SPECIAL 〉
「はぁ!」

カードの効果で緑の魔法陣がウィザードHの後ろに現れ、そこから竜の姿をした緑の魔力が出現し、ウィザードHの背中へ。
緑の魔力はウィザードHの背中で形を形成し、ウィザードHの背中に大きな竜の翼を作り出した。

「行くぞ!」
「おう!」

ウィザードHが差し出してきた手を握る。ウィザードHは翼をはためかせ、一気に空港の奥へ飛翔する。
























ウィザードWとウィザードLはそれぞれ『スペシャル』の魔法を発動し、消火活動を行っていた。

ウィザードWは竜の尻尾『ドラゴテイル』を振るい、水を操り火を消していく。
火の勢いが強い場所では『ブリザード』を発動し、着実に火を消火して行っていた。

ウィザードLは両手に装備した竜の爪『ドラゴネイル』を使って地面のコンクリートを持ち上げ、爪で粉々にしてその砂で火を消していく。
時には壊しても大丈夫な部分をわざと破壊し、それを使って火を消していく。

二人のウィザードの行動は、武装隊の災害担当の局員をも刺激し、結果的に消火活動に大きく貢献したという。












「おわっ!まだ火の勢いが強い…!」

燃え盛る炎に一瞬たじろいでしまう。熱さには耐えられるが、人の時の感覚で思わず、だ。
その時、目の前にある炎が激しい突風で吹き飛んでいった。振り向くとそこにはウィザードHがいた。

「お待たせ!」
「救助した人は!?」
「ちゃんと救護隊に引き渡した!だがまだ取り残されている人が大勢いるらしい!」

これだけの大きな火災だ、何が起こっても可笑しくはない。もしかしたら何かの燃料に引火して、爆発する危険もある。
早めに逃げ遅れた人達を救出しないと、大変なことになりかねない。

「急ぐぞ、ハリケーン!」
「わかってるっての!」

再び翼を広げ、俺の手を掴んで飛翔する。
その間に俺はトリスを通じて生命反応を探す。魔法じゃないから簡易的になってしまうが、やらないよりかはマシだ。

〈マスター、この先500メートルに生命反応が一つ!周りは火に囲まれており、一部崩落の危険も…!〉
「っ、ハリケーン!」
「間に合わせる!」

一度翼で空を叩き、一気に加速する。少し振り払われそうになったが、なんとか踏ん張った。
目の前に迫る炎の壁を突き抜けると、そこには女の子と倒れ掛かった天使の像が。

「っ!」

即座に俺は手を離し、地面を削りつつ少女の元へ。速度を落としながらライドブッカーからカードを抜き取る。

〈 ATACK RIDE・BIND 〉
〈バインド・プリーズ〉

音声と共に手のひらを像に向け、魔法陣を展開。さらにそれと同時に地面に魔法陣がいくつか出現し、そこから鎖が現れ像の落下を止める。

「ハリケーン!」
「はぁあっ!」

俺が呼びかけると同時に飛んでいたウィザードHが像の前にやってきて、翼から貫通性のある弾のような風を起こす。
それを受けた像は粉々に粉砕され、倒れてきたのとは反対の方向に吹き飛んでいく。砕けなかった頭部も少し脇に落下して来ただけで、被害はない。

「君、大丈夫か!?怪我は!?」
「ふぇ!?え、え~っと…だ、大丈夫、だと思います…」

よかった…間に合ったようだ。
少し煤が顔に付いているが、火傷も見られない。泣き目になっているのは、不安だったからだろうか?

「もう大丈夫だ。これから安全な場所に―――」
「士君!」

ウィザードHに頼んで少女を届けてもらおうと思ったら、背後から声が聞こえてきた。
振り向くと、飛行魔法を使って浮いているなのはがいた。

「なのは!」
「その子は!?」
「今助けたところだ!今から外に…」
「なら士君は奥の人達を!この子は私が連れていくから!」
「お、おう!わかった、頼む!」

なのはの言葉に甘えて、少女をなのはに任せる。そして俺は再びウィザードHと共に、さらに奥へと進む。

しかしあの女の子……何処かで見たような…誰かに似ているような…?
























『―――門寺一尉、今救出した方で奥の方にいる要救助者は全員です!』
「了解、これからは消火活動に切り替えます!」
『お願いします!現在八神一尉も消火活動に加わってくれています!』
「はやてが…!それは心強い!」

救出した人を届けて戻ってきたウィザードHと合流し移動、待っていた間に念話で連絡しておいたウィザードWとウィザードLとも合流する。

「よし、全員揃ったな」

俺の言葉に三人のウィザードが頷き、一様にドラゴタイマーを見に付けている右手を差し出してくる。
それに倣い俺も右手を差し出す。四人分の右手が上下に重なり、装着されていた四つのドラゴタイマーが光り始める。

すると四つのドラゴタイマーは右手から離れ、一つの光となる。そしてその光は俺の元へ降りてくる。
光はカードとなって、俺はそのカードを手に取る。

「行くぞ!」
「「「おう!」」」
〈 FORM RIDE・WIZERD ALL DRAGON ! 〉
〈ファイナルタイム!オールドラゴン!〉

音声と同時に俺も含めたウィザード全員が浮かび、俺以外のウィザードはそれぞれの色の竜の形をした魔力へと変わる。
そしてそれらが俺の背後にある魔法陣を通して融合し、ウィザードドラゴンの全能力や全エレメントを得たウィザードの超強化形態『ウィザード・オールドラゴン』へと変わる。

「はぁ!」

背中にできた翼『オールドラゴウィング』をはためかせ、空港の外へと飛び出す。
外には空を飛び回る空戦魔導士と、騎士服姿のはやてがいた。

「はやて!」
「士君か!?その姿は…?」
「いつもの事だ。それより俺も消火の方を手伝う、何処からやればいい!?」
「りょ、了解や!誰か、この人にも氷結可能ブロックを教えたってください!」

二人程の魔導士が先導してくれて、ある場所を示された。

「あそこのエリアをお願いします!」
「わかりました!」

指示された場所を一瞥した後、右手を振り上げる。すると青いウィザードの魔法陣が展開される。ブリザードを発動する為の魔法陣だ。

だが、これだけではない。

「トリス、ミッド魔法陣を四重展開!」
〈 All right 〉

最初に展開した魔法陣の周りに、さらにミッド式の魔法陣を四つ展開。左手を振り魔法陣を操り、ウィザードの魔法陣と重ね合わせる。
するとミッド式の魔法陣がウィザードの魔法陣と融合し、一つの青い魔法陣として展開される。

「実戦で使うのは初だが…行くぞ、トリス!」
〈 All right ! 〉

そして胸部にある『オールドラゴスカル』に魔力を込める。そしてオールドラゴスカルの口を開き、内包していた魔力を魔力砲として解き放つ。

〈 Blizzard wall ! 〉
「はぁああっ!」

放たれた魔力は青い魔法陣を通し、ウィザードの本来のブリザードとは段違いの猛吹雪を発生させる。
吹雪は空港で燃える炎を消し去るだけでなく、空港のコンクリートを凍らせた。

「よし!」
〈お見事です、マスター〉
「あぁ、なんとか成功したな…!」

この世界の魔法と、仮面ライダーの力の融合。今回は元が魔力を主体とするウィザードとの融合だったが、うまくいって本当によかった。

「よし、次だ!」
「は、はい!こちらです!」

側にいた局員に呼びかけ、次の消火場所に案内される。
























「ふぁ、あぁ~あ!……ねむ…」

あの空港火災から一夜明け、俺は大きなあくびをしながら頭を掻く。
休暇をもらった身なので、一応側のホテルの一室を取り、一夜を明かした。正直オールドラゴンの使用やミッド式との融合などで、結構疲労が溜まってしまった。

「―――んで、そんな疲れの溜まっている俺に、何か用ですか、お三方?」
「疲れが溜まってるのは、私らとて同じやで?」
「男の子なんだから、それぐらい我慢しないとね」
「え、え~っと…お疲れ様、かな?」

フェイト、お前は相変わらず優しい言葉を…ありがとな、涙が出そうだ。
俺が泊まっているホテルの部屋に、現在三人の来客が来ていた。同じホテルに泊まっていたなのは達だ。

「士さん酷いです!私をお忘れですか!?」
「あぁそうだった。悪いなリイン、ついいつもの癖で」
「いつもの癖ってなんですかも~!」

ふよふよとやってきたプンスカと頬を膨らませて怒る水色の髪の妖精――もといユニゾンデバイスのリインフォースⅡ。
リインは基本職場も行動もはやてと一緒だから、居て当然なんだが……ついうっかり忘れていた。

「それではやて、話ってなんだよ」
「うん、それなんやけどな―――」

はやての口から話されたのは、はやて自身が思い描く『自分の部隊』の事。
今回のような災害救助だけでなく、犯罪対策にロストロギアの対策も全部一挙に引き受ける―――とまではいかないが、それぐらいやれる少数精鋭のエキスパート部隊。今の管理局の体勢では、夢のような部隊だ。

そしてそんな部隊をもし自分が持つことになったら―――

「協力、してくれへんかな?」
「……俺がか?」

自分の顔を指差しながら返すと、はやては首を縦に振って肯定の意を表した。

「士君がいれば、かなり心強いし…今も副部隊長として部隊を作っている訳やから…」
「しかし、なのはやフェイトはもう誘ってるんだろ?二人はどう思うんだ?」
「はやてちゃんの頼みだし、そんな面白そうな部隊があったら、是非入ってみたいしね」
「うん。私達は協力していくつもり」

やっぱりか。だったらさ~…

「俺なんかいらなくね?なのはやフェイト、それにはやてやヴォルケンズも入れるつもりなんだろ?そうなりゃあ、俺の入る余地なんかねぇんじゃねぇか?」
「い、いやでも…ロストロギアと関わっていく場合、怪人達がそれを狙ってくる可能性も…!」
「ふむ、確かに…それは一理ある」

顎に手を当てて、頭の中で考える。
ロストロギアの多くは、とてつもなく大きな力を秘めている物ばかりだ。ジュエルシードしかり、闇の書もしかり、奴らが狙っていたのはかなり大きな力を持つ物だ。

向こうが魔法やロストロギアの事に詳しいとは限らない訳だし、狙ってやってくるとは限らない。そうなればこういう部隊との兼ね合いも想定するべきか……

「―――うん、確かに面白いな」
「え?じゃあ…!」
「あぁ、俺も協力させてくれ。はやての言う可能性も捨てきれない以上、ほっとく訳にはいかないしな。それに――はやての数少ない頼みだからな」
「ほ、ほんまか!?おおきに!」

よっぽど嬉しいのか、はやては俺の手を取りブンブンと上下に振り始めた。止めて、マジ止めて痛い。二の腕とか怠いんだから止めて。

「わかった、わかったから落ち着け!」
「そうと決まったら頑張るで~!絶対自分の部隊を持つんや!エイエイ、オー!」
「「「エイエイ、オー!」」」

はやてが拳を振り上げるのに続き、リインも含めたなのは達が一斉に拳を振り上げた。笑顔のなのは達を見て、俺も笑みを浮かべる。
嬉しそうだな、おい。四人揃って拳を振り上げるとか、なんかやる気凄いな。

「それじゃあその時はよろしくな、八神部隊長?」
「ふぇ、部隊長!?私が!?士君やのうて!?」
「提案はお前がしたんだ。はやてがやるべきじゃないか?」

そもそもなのはやフェイトを部隊長にするのは論外だし、俺がやってもいいかもしれないが…まぁ面倒くさいし。

「にゃはは、そうだね!ご協力しますよ、八神部隊長!」
「よろしくお願いします、部隊長」
「ふぇ~!?二人まで、そんなぁ…!?」

なのはもフェイトも一緒にはやてに敬礼する。それにはやては涙目になって両手を振っていた。
俺はそれを見ながら、コーヒーを飲みつつ和んでいた。



―――この時、この部隊がいずれミッドを震撼させる〝二つ〟の事件に大きく関わってくること等、俺達には知る由もなかった。




  
 

 
後書き
 
この後はストライカー達と、オリキャラのプロローグみたいな物を三話程。
StrikerSまでもう少し掛かります(笑)
  
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