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妖精の義兄妹の絆

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真夜中の真実

ここは魔導士ギルド化猫の宿“ケットシェルター”

ドタタタタ

「みんなー、大変だァー!!!ニルヴァーナがここ向かってるぞ!!!」
一人の男が外の様子を伝えにギルドの中に入ってきた。
「何!?」
「連合軍の作戦は失敗か!?」
「あのジュラやエルザもいたというのに…。」
あちこちで不安や恐怖を露にし、動揺していた。ただ一人を除いて。
「マスター!!!」
「なぶら。」

コプコプ コプ コプ

マスターと呼ばれた老人の名はローバウル。ローバウルはコップに酒をつぐ。そして、

ごきゅごきゅ

「「えーーっ。」」
コップについだ酒には口をつけず、ビンをそのままラッパ飲みした。
「ラッパ飲みすんならつぐなよ!!」
「なぶら。」
「てか、ニルヴァーナが向かって…。」
「何!!?誠か!?」

ぐばーっ

「飲み干してからしゃべってくれ!!!」
まだ、口の中の酒を飲みきる前に口を開いてしまったため大量の酒が流れた。
「ニルヴァーナがここに向かって……、これは運命か偶然か。なぶら…。」
「タクヤたち、無事だといいんだが…。」
「あぁ、いざって時はオレらじゃ役に立たねぇし…。」
みんながタクヤたちの心配をする。こんなときにここで心配する事しか出来ない自分たちが情けないと思ってしまう。

ごきゅごきゅ

「なーに、心配することないさ!!あの子たちはやるときはやるよォ!!!」
そう言ってみんなを元気づけるのはナスカという豊満な体型をした女性だった。
「そうじゃ、安心せい。光の魔力は生きておる。なぶら、大きく輝いておる。」
「「オオッ。」」
ローバウルの一言でみんなに元気が戻りつつある。
「けど、これは偶然じゃないよな。」
「オレたちの正体を知ってる奴がいたんだ。」
「だから、ここを狙って。」
タクヤたちの無事が分かって尚、それでもみんなはほかの事に不安を感じた。
「なぶら…。」
「長ェ付き合いだが、未だに“なぶら”の意味がわからん。」

ざわ ざわ ざわ

「マスター、避難しようぜ。」
「ニルヴァーナは結界じゃ防ぎきれねぇ!!」
みんなはここから逃げることをローバウルに提案した、が、








「バカタレがァ!!!!!」

ビクッ

ローバウルの一喝でみんなは肩をすぼめ、強制的に黙らせた。
「アレを止めようとなぶら戦っている者たちがいる。勝利を信じる者は動く必要などない。」
ローバウルの言葉にみんなは返す言葉がなかった。
「なんてな…。」

コト

「マスター…。」
「時が来たのかもしれん。ワシらの罪を清算する時がな。」
ローバウルは目を細め、何かを悟った。正確には、何かではなく自分たちの最後を。

















ズシン ズシン
一方こちらはニルヴァーナ本体
タクヤたちは王の間までやって来たが、操縦席などはなくどうすれば止められるか悩んでいた。
「止めるっていってもどうやって止めたらいいのかわかんないんだよ。」
「壊すとか。」
「またそーゆー考え!?」
ルーシィはナツの提案につくづく呆れていた。
「こんなでけーものをどーやってだよ。」
「やっぱ、あのガングロに聞くのが早そうだな。」
「そうですね。」
タクヤはブレインに止め方を教えてもらうという提案を出した。
「簡単に教えてくれるかしら。」
確かに、仮にも六魔将軍のリーダーだ。そう簡単に教えてもらえるとは思わなかった。
「もしかして、ジェラールなら…。!」
「なんか言った?」
「ううん…、何でもない。私、ちょっと心当たりがあるから探してきます。」
そう言ってウェンディは王の間を後にした。
「ウェンディ!!待ちなさい!!!」
シャルルもウェンディの後を追って行った。
「おい!!!」
「どこいくんだよ!!!」
グレイとタクヤが声をかけた頃には二人の姿はなかった。
「どうしたんだろ?」
「うむ。」
「ちょっとウェンディを追っかけ、」
『みなさん、聞こえますか?』
「「!!」」
その時、頭の中に誰かの声がした。その声はタクヤ以外のみんなにも聞こえているようだ。
『私デス。ホットアイデス。』
「リチャード殿!?無事なのか!?」
ジュラはホットアイの身の無事を心配した。
「念話!?大勢に。」
「「誰だ!?」」
『残念ながら無事ではありませんデス。ミッドナイトにはやはりかなわなかった。
みなさんの力を合わせてミッドナイトを倒してください。
奴を倒せばニルヴァーナへと魔力供給が止まり…、この都市は停止するハズ。』
「生体リンク魔法で動いてやがったのか…。」
「だから操縦席がないんですね。」
「ふぇー。」

さらにホットアイは続ける。
「奴は王の間の真下にいマス。気をつけてください…奴はとても、とても強いデス。 」
「リチャード殿…。」
「この真下!!?」
「おし!!!希望が見えてきたぞ。」
残りのミッドナイトを倒せばニルヴァーナは止まる。みんなの心の中はその事で支配されていた。
「強い奴か…、燃えてきたぞ。」
「アイツ、目的が変わってんぞ。」
「ナツ…止める為だよ。」
ナツだけ本来の目的を見失いかけていた。
「「行くぞ!!!」」
『六つの祈りは残り一つとなりマシタ。必ず勝って……ニルヴァーナを…、









止めるのデスヨ。』
そう言ってホットアイ、ではなくブレインは不気味に笑いながら念話を切った。
先程まで、ホットアイだと思って話していたのは実はブレインだったのだ。
最後の力を振り絞ってタクヤたちを罠にはめるために。
(「くくく…。ただではやられんぞ。」)

ドス

(「ただではな…。」)
そして、ブレインは意識を失った。














「オレとエマはウェンディとシャルルの後を追う!!!」
「ミッドナイトの事はまかせましたよ!!」
「おう!!!まかされた!!!」
そう言ってタクヤとエマは空からウェンディたちを探しに行った。

タッタッタッタッ

ナツたちは王の間の真下にいるミッドナイトを倒すため階段を下りていた。
「あそこか!!よーし!!」
ナツたちは王の間の真下にある扉を見つけた。

ガッ

「出て来い、居眠りヤロォ。」
ナツが扉を開けたその時だった。

カッ

突然、目の前がまぶしい光に包まれた。
「え?」
「罠だーーーー!!!!」
それは一瞬の出来事だった。





ドゴォン





辺りは凄まじい爆発に包まれたのだった。



















その様子を遠くから眺めていたのはエルザとジェラールだった。
「今の爆発は。」
「王の間の方だ。」






「父上も人が悪い…。ボクの楽しみを奪ってしまうんだからね。」
「「!」」

つかつか つか

「もう君たちが最後のエモノだ。楽しませてほしいな。」
エルザとジェラールの前に現れたのは六魔将軍最後の一人、ミッドナイトだった。
「下がっていてくれ、エルザ。」
「ジェラール。」
ジェラールはエルザを下げ、前に出る。ジェラールとミッドナイトの間に静かな緊張が走った。



















「くそっ!!ウェンディとシャルルの奴、どこに行ったんだ!!!」
「ウェンディの匂いはしないんですか?」
「それがいろんな匂いと混ざってわかんねぇんだよ。」
その時、

ビュッ

「!エマ!!!避けろ!!!」
「え!!?」
タクヤたちのしたから光の矢が襲ってきた。
「わっ!!?」
辛うじてタクヤたちは光の矢を避けた、が、

ビュッ ビュッビュッ

今度は無数の光の矢が襲ってきた。
「これじゃ当たるのも時間の問題だ!!一旦降りるぞ!!!」
「わかりました!!」
エマは光の矢をかわしながら地上へ降り立った。それでも無数の光の矢が襲いかかってくる。
「水竜の咆哮!!!!」
タクヤはブレスを放ち、光の矢を全て薙ぎ払った。
「誰だ!!!出てきやがれ!!!!」
タクヤは大声を上げ、ここにいるハズの敵に言った。
「…やれやれ。」
「!!」

カチャカチャ カチャ

「まさか、相手がこんなガキだとはなぁ。ずいぶんとまぁなめられたもんだな。」
タクヤたちの前に現れたのは全身に甲冑を装着し、大きな槍を携えた男だった。
「てめぇ、誰だ!!!」
「今から死ぬ奴に名乗っても意味ないっつーの。」

シャキン シャキンシャキン

するとタクヤの周りには無数の光の槍が待ち構えていた。
「これは…!!?」
「じゃあな。」

スッ

男が手を振り下げるのと同時に光の槍がタクヤを襲った。

ビュッ ビュッビュッ ビュン ドゴォン

光の槍がタクヤを襲った。爆発音から読み取れるだけで凄まじいまでの破壊力が伺える。
「タクヤーー!!!!」
「ん?」

バッ

煙の中からタクヤが現れた。間一髪の所でかわしていたようだ。
「こんなんでオレをやれると思うなよ!!!」
「あぁ、だろうな。」
「!!!」
気付けばタクヤの背後に男がいた。
「なっ!!?」
男は不適に笑って見せた。








「鏡の槍“スクリーンオブランス”!!!!」
タクヤは男が放った魔方陣の中に閉じ込められた。次第に魔方陣は鏡へと姿を変えた。
「こんなのすぐに壊して、」

グサッ

「がっ。」
どこからか魔力で作られた槍がタクヤの背中を貫く。さらに鏡の中から同じ魔力の槍が無数に出現し、タクヤを襲う。
「ぐああああああァァっ!!!!」
「タクヤーー!!!!」
エマは泣き叫んだ。そして、鏡は姿を消し、閉じ込められていたタクヤが落ちてきた。

ドサッ

「タクヤー!!!!しっかりしてください!!!!」
だが、返事はない。
「無駄だよ。アレだけ食らってちゃじきに死ぬ。」
「タクヤ!!!!タクヤ!!!!」
それでも、返事はない。身体中から大量の血が流れてる。息も浅い。このままでは本当に死んでしまう。
「とりあえず仕事は敵の殲滅だからな。お前も死んでろ。」

カッ ドガァン

「きゃああああぁっ。」

ドサッ

エマは男の攻撃をくらい地面に叩きつけられた。
「じゃあな、ボウズ。また会えたら名乗ってやるよ。まっ、無理だろうがな。」
そう言って男は姿を消した。
「タ、…タクヤ……。」
エマは地面を這いつくばっても尚、タクヤを気遣い、タクヤに近づく。
「しな…ない…で…。タク、ヤ…。」
エマはタクヤの血にまみれた手を握ってそのまま意識を失った。











そして、ナツたちは、
「うう、痛え…。」
「生きてんのか、オレたち…。」
「あい。」
「どうなってるの…?あたしたち、あんな大爆発をくらって…。」
先程、王の間の真下にミッドナイトがいるという嘘の情報のせいで罠にはまってしまったナツたち。
だが、彼らは怪我をしているものの命はあるのだ。
あれほどの爆発の中、無傷といっていいぐらいの軽傷で済んだのはどうしてか。
みんなは
頭の中で思考を巡らす。

ゴツン

「痛。」
ルーシィが立ち上がろうとして天井に頭をぶつけた。
「オレたち、埋まっちまって…。」
「ち…違うわよ…コレ。」

ドコッ

「ぷはー。」
ナツの石頭で天井を突き破り外に出た。
そして、ナツは目にした。ジュラがナツたちを庇いボロボロになりながらも立ち尽くしている背中を。
「オッサン!!!」
「ジュラ…。」
「あたしたちを守って…。」
爆発が起こる寸前にジュラはナツたちを岩で覆い、ダメージを最小限にし、自分が身代わりになったのだ。
「おっちゃ~ん!!!!」
「元気がいいな、若い者は。無事、で、よか…った…。」

ふらっ

ジュラは限界を達したらしく足の力が抜け、バランスを崩す。
「オッサン!!!」

ドサッ

そして、倒れた。
「しっかりしてー!!!」
「ジュラー!!!」
ナツたちはジュラの元に駆け寄り、生死を確認する。幸い生きてはいるがこれ以上の戦闘は無理なようだ。
それどころかもう立つことすらできないだろう。
「くそーーー!!!!」













ズシン ズシン ズシン

「やっぱり化猫の宿に向かってる!!」
ウェンディとシャルルはタクヤたちと離れ、ジェラールを空から探していた。
その際にニルヴァーナの進行状況も確認していた。
「ウェンディ、…悪いけどこれ以上は飛べないわ。」
「うん!!ごめんね、シャルル。歩いて探そう、ジェラールを。」
「あんた鼻いいもんね。」
そう言ってシャルルはウェンディを降ろし、翼を消した。
「でも、あのジェラールは私の知ってるのとは少し違うニオイがする。」
「と…とにかく、ジェラールを探すのよ!!そいつなら止められるかもしれないんでしょ?」
「うん!!!」
ウェンディとシャルルは少しの休憩をとり、再びジェラールを探すためニルヴァーナを走った。
(「無事でいてね、ジェラール。あなたは私の事忘れちゃったみたいだけど、
私はあなたの事、忘れた日なんて一日だってないんだよ。」)










一方こちらではジェラールとミッドナイトが戦っていた。
いや、戦いと言うには一方的すぎた。エルザは目の前で起きている真実を受け止められないでいた。

ドッ

立っているのは無傷のミッドナイト、倒れているのはボロボロのジェラールだった。
「哀れな道化師。記憶と一緒に魔法の使い方までわすれちゃったのかな。ジェラールくん。」
「うぅ…。」
(「あのジェラールがこうもあっさり…。」)
「くぅ…。」
ジェラールは体に激痛が走っても尚立ち上がろうとする。
「ふぅん。まだ生きてるの?」
(「いや、自らにかけた自律崩壊魔方陣で予想以上に魔力を消耗している。」)
「ボクはね…、君のもっと怯えた顔が見たいんだ。」
ミッドナイトが地に這いつくっ張っているジェラールに話し掛けていたその時、
「!」

ギュオ

ミッドナイトの僅かなスキをつき、エルザが目の前まで距離を詰めていた。
そして、剣を握り、ミッドナイトに振り下ろす、が、

カクン

たしかにミッドナイトに振り下ろしたハズだがミッドナイトは依然無傷のままだ。
「もうメインディッシュの時間かい?エルザ・スカーレット。」
(「剣閃が曲がった!!?」)
「エルザ離れろ!!そいつはマズイ!!!」
ジェラールは声を振り絞ってエルザを止めようとするがエルザは止まらなかった。
「くっ。」
エルザはまた新たな剣を換装し、ミッドナイトに斬りかかった。

ブオッ

だがしかし、

カクン

(「また!!?」)
何度やってもエルザの剣はミッドナイトには届かなかった。
「フン。」

ドッ

ミッドナイトはエルザに反撃を仕掛けた。エルザはそれを食らい後退させられた。
だが、エルザにはダメージなど無い。ただの衝撃波かと思ったその時、

メキメキ メキメキ メキ

突然、鎧が不愉快な音をたてながら形状が変化していった。
「何…!!?」

メキメキ メキメキ

エルザは鎧が形状を変えたため、がんじがらめになり力が入らない。
「ぐあぁ。」
鎧は次第にエルザの体を締め上げ、身体中から骨が軋む音がする。
「エルザ…。」
このままでは鎧に絞め殺されてしまう。
「はァ!!!!」

ドッ

エルザが咄嗟の判断で鎧を脱ぎ捨て一時を凌いだ。そして、すぐさま新たな鎧に換装する。
「なるほど。そういう魔法か。」
「そう…ボクの屈折“リフレクター”は全ての物をねじ曲げて歪ませる。
魔法をはね返す事もできるし、光の屈折を利用して幻だってつくれるんだ。」
「なんという魔法だ…。」
ジェラールは倒れながらもミッドナイトの魔法の恐ろしさを知った。
「行くぞ。」
だが、エルザはそんな事に躊躇わず、ミッドナイトに突撃をかけた。
「聞こえてなかったのかい?ボクに魔法は当たらないんだよ?」
ミッドナイトは余裕の笑みを見せてエルザに言った。
















「どうしよう…。ひどいケガ。」
「死ぬんじゃねぇぞ、オッサン。」
「うう…、罠だったんだ。」
ここは王の間の真下にあたる場所
ブレインの策略によってナツたちは罠にはまってしまい、ジュラを失ってしまったのだ。
「やれやれ。」
「「!」」
「ブレインめ…、最後の力をふりしぼってたった一人しかしとめられんとは…。」
「誰だ!!?」
どこからか誰かの声がするものの辺りに人はいない。
「あそこ!!!」
ハッピーが頭上にあるものを見つけた。
「!?」
「情けない…、六魔の恥さらしめ。」
「え?」
ナツたちが頭上を見上げるとそこにはあるはずのないものが浮いていた。
「まぁ…ミッドナイトがいるかぎり我らに敗北はないが、貴様等くらいは私が片付けておこうか。」
そこに浮いていたのはブレインが持っていた不気味な杖だった。
「杖が、しゃべったーっ!!!!」
「あれはブレインが持っいた杖だ。」
「どうなってんのよー!!?」
杖が喋っている事に困惑しているハッピーたち。だが、

がしっ

「!?」
「オラオラオラオラオラオラ!!!!」

ボコボコボコ ボコボコボコ ボコボコボコ

「ぐぽぽぽぽぽっ。」
「!!!!」
ナツが杖を捕まえ、地面に何度も叩きつけていたのだ。その光景を見ていたルーシィたちはただ驚いた。
「このでけぇ街止めろ!!!棒切れ!!!」
「ちょっと!!何者かもわかんないのよ。」
「私は七人目の六魔将軍。貴様等を片付ける為に眠りから覚め、」
「と~め~ろォ~よ~!!!!」

ゴンゴンゴン ゴンゴンゴン

杖が喋り終わるのを待たずして地面に叩き続けた。
「ぐぽぽぽぽ。」
「六魔将軍なのに七人目?」
「てか、杖がしゃべってる事はもうおいといていいのか?」
「つっこむポイントが難しいね。」
ルーシィたちは杖を見ながら話していた。
「ぬぇいっ。」

スポッ

「!!」
杖は我慢しきれずナツの手からなんとか抜け出した。
「凶暴な小僧め…。そろそろ奴等のギルドが見えてくる。早めにゴミを始末しとかんとな。」
「それって化猫の宿!?」
「その通り。まずはそこを潰さん事には始まらん。」
杖が不敵な笑みを浮かべながらそう言った。















「舞え!!!剣たちよ!!!!」

ズガガガガガ

エルザは天輪の鎧に換装し、無数の剣をミッドナイトに放った、が、

キィィン

「数打てば当たると思った?」

キキキキキキキ

全ての剣がミッドナイトを避け、終いにはエルザに剣たちは返ってきた。
「!!」
「言ったろ?はね返す事もできるって。」
「エルザ!!!」

カカ カキン カキキン カイ

エルザははね返ってきた剣を二本の剣で打ち落としていった。
地面に無数の剣が突き刺さっていく。その姿は見事の一言に尽きた。
だが、ミッドナイトはそれを予期していたかのように次の一手を打つ。
「フフ。」

ばっ



ミシィ ミシ

「くっ。」
またもや鎧が耳障りな音を立てながら形状を変化させていった。
「ぐはっ。」

バキバキバキ バキバキ

「もっと…、もっと苦しそうな顔をしてくれよ。」
「あぁあああ。」

バキ バキバキバキ

鎧がエルザをきつく絞め、苦しめる。
「その顔が最高なんだ。」
ミッドナイトが不気味な笑みを浮かべ、エルザの苦しむ姿を見ていた。
だが、エルザは痛みに耐えながらミッドナイトに一本の剣を投げた。
「つあっ。」

ブオッ



さっ

「さすがだね。」
エルザの投げた剣はミッドナイトに当たる事なく、軽々避けられた。
「スパイラルペイン!!!!」

ズガガガガガ

辺りを屈折させながらミッドナイトは竜巻を発生させ、エルザを襲う。
「ぐぁあぁぁあつ!!!!あぁああぁあ。」

ドサッ

竜巻から出てきたエルザの姿は鎧は跡形もなく、身体中傷だらけになり、その場に倒れた。
「そんな…。」
「もう終わり?」
「強い…。」
ジェラールはすぐさま立ち上がろうとするが、まだダメージが残っているようだ。
「まだ死なないでよ、エルザ。化猫の宿に着くまでは遊ばせてほしいな。」
「化猫の宿?」
「僕たちの最初の目的地さ。」
「なぜ…そこを狙う……。」
ジェラールはミッドナイトに理由を訊ねた。
「その昔、戦争を止める為にニルヴァーナをつくった一族がいた。ニルビット族。
しかし、彼等の想像以上にニルヴァーナは危険な魔法だった。だから自分たちのつくった魔法を自らの手で封印した。
悪用されるのを怖れ、彼等は何十年も何百年も封印を見守り続けた。











そのニルビット族の末裔のみで形成されたギルドこそが化猫の宿さ。」










場所は変わって王の間の最下層
「奴等は再びニルヴァーナを封じる力を持っている。だから、滅ぼさねばならん。」









「この素晴らしい力を再び眠らすなんておしいだろ?この力があれば世界は混沌へといざなえるのに。」
そう言うミッドナイトに敵意むき出しでジェラールは睨む。
「そして、これは見せしめでもある。中立を好んだニルビット族に戦争をさせる。
ニルヴァーナの力で奴等の心を闇に染め、殺し合いをさせてやるんだ!!!!ゾクゾクするだろう!!?」
ミッドナイトは高らかに笑いながら自分の思い描く地獄絵図を語った。
「下劣な…。」
ジェラールはその言葉を絞り出した。ミッドナイトにはこの言葉しか当てはまらないからだ。
だが、ミッドナイトに怒りはない。むしろ、ほくそ笑みを浮かべていた。
「正しい事を言うフリはやめなよ、ジェラール。」
ジェラールの心は硬直した。何かが自分の中で締め付けられたような感じを覚える。
「君こそが闇の塊なんだよ。汚くて、禍々しい、邪悪な男さ。」
「ち…違う…。」
ジェラールは必死に否定しようとするが、心がそれを躊躇してしまう。
「違わないよ。君は子供たちを強制的に働かせ、仲間を殺し、エルザまでも殺そうとしていた。」
ジェラールの心が揺らぐ。記憶を無くす前の自分がしてきた罪が重くのし掛かってくる。
「君が不幸にした人間の数はどれだけいると思う?君に怯え、恐怖し、涙を流した人間はどれだけいると思う?」
ミッドナイトの言っていることは全て真実だ。ジェラールは直感で思った。
「こっちに来なよ、ジェラール。君なら新たな六魔にふさわしい。」
ミッドナイトはジェラールに手を差しのべる。まるで悪魔に誘われているかのように。

ユラ…

「私は…。」












「ジェラールの中の光を知っている。」
そこには新たな装束を身に纏い、凛とした姿でエルザは立っていた。
(「エルザ…。」)
ミッドナイトは静かにエルザにを見る。


生きてこの先の未来を確かめろ


(「君の言葉こそ、オレに勇気をくれる光だよ…。」)
ジェラールの目にはエルザが輝いて見えた。自分の中の闇を優しく浄化してくれるような光に。
「へぇ…まだ立てるのか。噂通りだね、エルザ。








壊しがいがある。」
「貴様等のくだらん目的は私が止めてやる。必ずな!!!!」



 
 

 
後書き
ということで19話かんりょー。遅くなってしまって申し訳ございません(泣)これからも頑張りたいので皆さんよろしくお願いいたしますね。もうすぐ夏休みも終わりですね。課題やらバイトやらで夏休みらしいこと何一つしてないです。
残念すぎです。ということで、感想とかあったら待ってまーす! 
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