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I want BRAVERY

作者:清海深々
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17話 New face


17話 New face

 4月21日。

 放課後。

———ガラッ

「ちょっといいか。今日帰ったらラウンジに全員集合してくれ。説明はそのときにする。じゃ、伝えたぞ」

———ガラッ

「素早かったね。努力値をすべて早さにふったピジョット並みだよ」

 私の横にいる彩がそういう。

「そうね・・・ピジョットほどじゃないでしょ。たぶんあれは・・・」

 ポケモ○の話なんて、私でしかわからないだろう。

「まぁ・・・二人の話はよくわからないけど、私たちと違って忙しいんでしょう?あの人生徒会とかしてるしさ」

「あれ?ゆかりっちは桐条先輩のこと嫌い?」

 話に入ってきた順平。

「別に嫌いじゃないけど・・・そ、それより帰ろ、遥」

 ゆかりが気まずい雰囲気から抜け出すように、私に声をかける。 

「う、うん。わかった。じゃ、またね順平、彩君」

 本当は順平と話したかったけど、ここでゆかりを一人で帰らせるのはあまりにも可愛そうだろう。

「おーう、またな」

「お、おう!また明日な!」

 喜びの混じった顔で、そう返事する順平を見て、

(フフフ、コミュがなくとも、ここまで好感触!いい感じ、この調子いけば、コミュランクも一気にあがりそうな気がするわ!)

 私は笑顔のまま、手を振って教室を出て行った。





 駅前商店街。

「さっきの・・・本当に嫌いってわけじゃないだよ?」

「わかってるよ」

「そ、そっか・・・」

「そんなことよりもさ、順平っていらんことばっかり言うよね!」

(・・・む)

「しかも言うことなすことオヤジでしょ?歩くセクハラかっつの、マジで・・・」

(おいおい・・・このビッチ。ちょっと調子に乗ってるんじゃないの?ちょっと見直してたけど、順平を馬鹿にするとは・・・)

「去年さ〜」

「あ、そだ。ねぇねぇ」

「何?どうしたの?」

 話始めようとしたゆかりを止めてまで質問した私に、少し驚きながらゆかりは答える。

「順平って、モテるの?」

「えぇぇぇ!!??遥ってああいうのが好みなの!?ちょっと!えぇぇぇ!?!?」

「ちょ、ゆかり!そんなんじゃないよ!気になっただけ!」

「本当に?」

「そそ・・・その、さ。彩君って格好良いじゃん?」

「まぁ、ね。あいつはなんかカンペキに人間だから」

「そ、そうなんだ。・・・まぁ、とにかく、そんな彩君といるとさ、どんな人もちょっと見劣りしちゃうじゃん?」

(ただし、天城君、真田先輩、ガッキー、順平、テオドラは除く)

「まぁ、ね」

「そんな人と一緒にいる順平はどうなんだろう、って思って」

 ちょっと無理矢理すぎるかもしれない話の展開だが、ゆかりはちゃんと答えてくれるだろうか。

「う〜ん。モテはしてないと思うな。でも」

「でも?」

「人気がない、ってわけじゃないんだけど」

(なんですって!?!?)

 ゲーム内ではわからなかったが、今の情報は私の障害が増えるかもしれないというものだ。

「あぁ、別に男としてじゃないよ?」

「ぇ?」

「友達としては、ってことよ」

「あ、あぁ・・・なるほど。順平話しやすそうだもんね」

「まぁ、ただの変態としてしか見てない女子もいるけどね」

「へぇ〜」

(そっか、そっか。なら大丈夫なのかな?)


 今日、何が起こるのかわかっている私は、かなり上機嫌で寮へと帰った。

 私は、寮についた後、ドS女に言われた通りに4階の作戦室へと向かった。

「ふむ、来たか」

 ドS女の無駄に冷たい反応に、若干イラっとする。

(原作では『おかえり』とかほざいてたのによぉぉぉ!!)

「待ってたぞ」

「あ、はい」

 真田先輩のその一言で私のテンションはマイナスからプラスへと戻る。

「紹介しておこう」

「え?」

 私と一緒に作戦室へ来たゆかりが、その言葉に反応する。

 この後、誰が来るのか分かっているはずの彩君は、何かいいことでもあったのか、ボーっとしているがその上機嫌さは隠せていない。

 時折、ニヤッとする顔に若干引きながら、私は扉の方を注目する。

「おい、まだか?」

「ちっと待って、重っ!」

———ガラガラ

「テヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ」

「え!?順平!?・・・なんであんたがここに!?」

「こいつは今日からここに住む」

「今日から?住む?嘘、マジですか!?」

「この前の晩偶然見かけたんだ」

「真田先輩そういうの得意ですもんね〜」

 心なしか、先輩を責める気配を込めた声が真田先輩に掛かる。

「彩。あれは、ある意味運命的な出会いだった」

「きめぇ」

「まぁ、とにかくこいつには『適正』がある。それに協力もしてくれるそうだ」

「『適正』って・・・本当なんですか!?」

 何故そんなに驚くよゆかり。

「オレ、夜中に棺おけだらけのコンビニで・・・」

 なんだか語り始めた順平を横に私はふと思う。

 主人公なのに空気過ぎる。

 なんていうんだろうか。

 『修正力』とでもいうのだろうか。

 普段は明るい私は、今とても暗い、いや静かな子になっている。

 なんだか、やる気がでない。

 というか、話に混ざろうと思わない。

 これが『無気力症候群』だろうか。

 あぁ、なるようになれと思う。

 私がいなくても世界は回っている。

「記憶の混乱とかアリガチらしいんだよね。君達そういうの知ってた?」

 私の逸れて行った思考回路は、順平の一言で現実へと引き戻される。

「私は平気だったよ?」

「まーた、強がっちゃって」

 なぜか得意げな顔をする順平。

「ま、これペルソナ使いの常識だから」

 なんか、決まった、とでも言いたげな顔している。

「けどさ正直驚いたぜ・・・遥たちも『そうだ』って聞かされた時はさ」

 いきなりしんみり、いや真面目な雰囲気になる順平。

(あ・・・なんかカッコイイ)

 私の頭の上で♪×2発生。

「でも知ってる顔がいてよかった・・・というかいすぎじゃないか?彩もなんだろ?」

「ん?おう」

 ぼーっとしていた彩君は一瞬順平の存在を不思議に思ったようだが、すぐに反応した。

「まぁ、彩がいるなら大丈夫かな、って思ったけど、真田先輩曰く遥はまだ初心者らしいじゃん?」

「う、うん」

「流石に一人だけ初心者ってのは不安だろ?」

「うん」

「ははっ、だよな。まぁ、これからヨロシク」

「うん!よろしくね、順平!」

「おう!」

 私はできるだけの笑顔をする。

>特別課外活動部に順平が加わった。

 今、頭の中で変なテロップが流れた気がする。

———ガチャリ

「よし、これで全員揃ったみたいだね」

 若干幾月が語り始める。

 はじめは二人だったけど、増えたね、いっぱい。
 ていう話だった。

「というわけで、本格的にタルタロスを攻略しに行こうと思う!」

「いやいや、今までも十分に本格的でしたけど」

 熱くなる真田先輩と、それにツッコミを入れる彩君。

(てか、もうタルタロス入ったの!?!?)

「それじゃ、行くか!」

 やたらリーダーシップを発揮する真田先輩。

 私達はそんな先輩に連れられ、学校へと向かった。

「あれ?ここ学校ッスよね?」

「あぁ、そうだ」

「ここがタルタルソー巣?」

「まぁ見てろ」

 時計の針は12時を刺す。

「・・・眠い」

 0:00

———ゴゴゴゴゴ

「・・・」

———ゴゴゴゴゴ

「長くない?」

 私は誰にも聞こえていないだろうが、そう呟く。

 そして、しばらくして学校がタルタロスへと変わった。
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