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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第四章 炎
  第2話 真意

一方「チッ……逃げ足の早い野郎だ……」

佐天「結局逃げられてしまいましたね……」

一方通行と佐天は琴里が『(メギド)』を撃った後、狂三が逃げに徹したので彼女を追いかけていた。

しかし、影を使って、壁を通り抜けたりしたので見失ってしまったのだ。

そんなわけでトボトボ帰ってきたのだ。

すると、廊下の奥の方から士道の声がした。

士道「令音さん、琴里は……」

令音「……あぁ、大丈夫だよ。今のところはね」

士道「今のところって……」

佐天と一方通行は姿がバレないように物陰に隠れて会話を聞くことにした。

よーく見ると、士道が四糸乃と一緒にいるようだ。

令音「……2日後だ」

士道「え?」

令音「……6月22日。きみには琴里とデートをしてもらう」

士道「なんで2日後なんですか?」

令音「その日しかないのさ。恐らくあと2日しか、琴里は自身の霊力に耐えられない」

士道「っ!?」

佐天「……!?」

一方「……!」

これに、士道と佐天ばかりか、一方通行まで驚いてしまった。

佐天と一方通行は琴里に事前に教えてもらっていたのだ。

自分が精霊になったことを。

詳しいことは教えてもらってないが、士道に霊力を封印していたとも聞いていた。

だから、琴里は人間に戻った。

それをあの時、士道から霊力を返してもらい、再び精霊になった。

ということしか佐天は知らない。

一方通行は既に大体のことは聞いていた。

狂三に敗北したあの日に、壁越しに話した琴里との会話で。

令音「段々と発作の間隔が短くなっている。今は精神安定剤と鎮痛剤で抑えている状態だが……多分あと2日が限界だろう。その日を過ぎれば、琴里はもう、君の知っている琴里ではなくなってしまう可能性がある」

声すら出なかった。

士道も、佐天も、一方通行も。

何の前触れもなく突きつけられた最悪の事態。

士道「じゃあ、今すぐにでも……!」

令音「……本当は、その方がいいのだろうけれどね」

士道「え?」

令音「……いや。それはできないんだ。言ったろう?今は薬で症状を抑えていると。状態が安定するまで待たなければならない」

士道「で、でも2日後には……」

令音「……だから、2つの条件が唯一合致するのがその日なのさ。明後日を逃せば、もうチャンスはないと思いたまえ」

士道「く……」

士道が歯噛みすると、令音は小さく息を吐いてコンソールに向かった。

令音「とりあえず、私に任せてくれ。シンは上条くんの様子でも見てきてやってくれ。今ならまだ病院の面会時間にも間に合うだろう」

士道「で、でも……」

令音「……お願いだ。今は言うとおりにしてくれ」

士道「……分かりました」

令音のただならぬものを感じ取って四糸乃とともに部屋を出た。

そのまま地上へと転送ゲートがある場所へと歩いていく。

士道はそのことに気をとられて気づかなかったが、四糸乃は気づいた。

四糸乃「涙子……さん?」

士道「え?」

士道はさっきまで考えていたことが嘘のように吹っ飛んだ。

四糸乃が見ている方を見ると、確かに物陰に隠れて下を向いて三角座りしている佐天がいた。

そしてその反対側をよしのんが見ると、

よしのん『あれ?あーくんも一緒に盗み聞きしてたの?』

一方通行が壁にもたれ掛かるように座り、左足をだらんと伸ばし、右足を90度に曲げて、右手をそれに置いてる。

佐天とは反対に上を向いてボケっとしていた。

士道「……2人とも聞いていたのか」

一方「あァ……」

佐天も無言でこくっと頷いた。

士道「一方通行。あの時は助かったよ。琴里の炎の軌道を変えてくれなかったら俺、死んでたかもしれないし……ありがとう」

一方「ギリギリだったけどなァ……」

その後は会話はなかった。

一方通行が佐天に士道と一緒に帰れという言葉以外は。

一方通行はそのまま村雨令音がいる場所へと向かった。






一方「……」

コツ、コツっと杖をつく音を立てて一方通行は村雨令音のところにやってきた。音で分かったのか、村雨令音は作業中だったが、振り向かずにその名を呼んだ。

令音「どうしたのかね?一方通行……」

パソコンをカタカタと操作しながから聞いてきた。

一方通行は気にせずに言う。

一方「さっきの話を全部聞かせてもらった」

その言葉に、令音はパソコンを操作する手をやめて、一方通行の方を振り向いた。

令音「……何か聞きたいことがあるのだろう?」

一方「あァ……さっきのテメェの言葉に疑問を覚えてなァ」

令音「何かね?」



一方「どォしてデートを2日後に引き伸ばしたンだ?」



令音「……それは琴里のデートのことかね?」

一方「他に何がある」

令音「……さっき説明してなかったかい?彼女は薬を使って症状を抑えて……」

令音が説明したのだが、一方通行の目を見ると、そんなことは聞いていないと言わんばかりの目をしていた。

どうやらバレているのだろう。

令音「……いつから気づいたのかね?」

一方「……確信したのは、本当はその方がいい、と言ったところだ」

令音「……あれが聞こえたのか。素晴らしい聴覚だな……」

令音は少し、ほんの少しだけ笑った気がした。そして少し間を開けて口を開いた。

令音「そうだ。霊力は今すぐにでも封印できる。琴里のシンに対する好感度はずっとMAXだったからね。……でも琴里は楽しみにしていたのだよ。シンとのデートをね……」

一方「……」

令音「だから今回だけは見逃してくれないか?これは私からの願いでもある」

令音がまるで自分の娘のことのように琴里のことを話す。

一方通行は少し黙った。

そして重い沈黙を破るように口を開いた。

一方「くだらねェ……」

一方通行は来た道の方を振り返り、コツ、コツっと杖を付く音を響かせながら、転送ゲートへと向かった。

令音は一方通行の反応をどう受け取ったかは分からない。

令音は最後に1語だけ、誰にも聞こえないような声で一方通行に、でも確かにそう言った。



″ありがとう″……と。






 
 

 
後書き
佐天さんの手番が少ない気がする……いや、これから活躍してくれるはず!…………多分。 
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